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女神の愛し子  作者: 春爛漫
2/19

人生

 山本愛子は生まれつき心臓が少し弱い。


 医者には身体に負担をかけずに生活すれば普通の人と同じ生活が出来ると言われている。


 だが、小さな頃から負担を強いられた心臓は時々息が出来ないほどの発作がくることがある。そんなに頻繁ではないが。


 そんな愛子の身体はふくよかだ。

 身長148cmの体重58kg。体型は遺伝だ。

 肌はもちもちで赤ちゃんの肌みたいなのが少し自慢。


 愛子が小さい頃、祖父母に引き取られた時はげっそりと痩せていたいたらしいが、今の自分は勤め先の後輩に後ろから抱きしめられてお腹の肉をぷるぷる触られる毎日だ。

 後輩いわく「癒される」らしい。


 ある日、趣味で購入してしていた宝くじが当たった。


 一等10億円だ。


 飛び上がるくらい驚いた!


 愛子には夢があった。

 いつか、自分の家、一戸建てが欲しかった。


 愛子の暮らしはいつも貸家でマンションかアパート暮らしだった。

 小学校や中学校では友達の家に遊びに行くたびに一軒家が羨ましかった。


 隣家を気にしなくてもいい家の作り、庭があって車を止めるスペースもある。そして、どこか個性的でおしゃれだ。


 それと自分を育ててくれた祖父と祖母に終の住処をプレゼントしたい気持ちがあって、宝くじを買える年齢になったらコツコツと購入していた。2人が死ぬまでに間に合わなかったが。

 だって絶対に自分の仕事の儲けだけで家が買えると思えなかった。


 愛子、37歳。家を購入します。注文住宅一括払いです。夢でした。


 結婚願望が無かったわけではない。こんな体型の私を可愛いといってくれるデブ専の男性とお付き合いしたこともある。

 結婚も考えた。だが、相手の家族。しょせん姑と小姑との相性が良くなく、相手は私を見下していた。そんな家にお嫁に行きたく無かった。


 彼とは彼の家族に嫌われてからも少しお付き合いしたが、未来がないと別れた。


 悲しくない訳じゃない。人並みに情はある方だ。

 彼は優しかった。でも優しいだけじゃ生きていけないんだよ?私の為に家族と別居する選択をしてほしかった。


 まあ、私の過去はあまり楽しくないからおいといて。


 注文住宅だ!


 銀行口座に当選金が入金された時はドキドキした。高額当選者に渡される冊子も貰った。都市伝説じゃなかった。


 注文住宅を設計・建築してくれる会社を探して、仕事の休日毎に訪ねてまわり、私の理想のお家を作ってくれる所を探した。


 10億!だって10億!!


 2億を土地代と家の建設費に回した。


 それでも8億残る。私は自分が何をしたいか探した。


 寂しがり屋だから人との繋がりが欲しくて仕事は辞めていない。身体に負担をかけないぶん、給料も安かったけど、今はそんな事気にしなくてもいい。

 狭い世界で生きてきたぶん旅行とかにも行ってみたいかも。ここは奮発してお肉でも回らないお寿司でも食べに行っちゃう?それとも、この身体に合う洋服でもオーダーメイドで作ってもらおうか?


 もう、考えるだけで楽しくてたまらない。


 家の建設が始まった。


 今時の建築基準法ギリギリの30年でガタがくる家にしていない。ちゃんと昔ながらの職人さんに設計士さんと決めた100年経っても大丈夫なお家を建ててもらう。


 仕事の休日になったら毎週、差し入れを持っていった。

 差し入れのドリンクやお菓子と「お仕事ありがとうございます」の一言で嬉しがってくれるのが私も嬉しかった。それに、目の前で夢が形になっていく家を見るのも楽しかった。



 そして、月日が過ぎて、家の完成・受け渡しの日になった。


 見せてもらったお家は綺麗で広くて感激して少し泣いてしまった。

 庭もあるし駐車場もある。玄関は両開きの広い扉でカードキー。中に入ると開放感と新築の家の木の匂いがする。

 キッチンは開放感があるし、リビングダイニングも広々としている。トイレは小さくなく、ゆったりとした落ち着いた空間になっているし、お風呂も脱衣所も広くて最新式だ。


 私はノートを持ちながら、家具と家電製品も全て新しくすることにして、配置にサイズを測っていった。

 部屋の一室だけはお父さんと祖父母の仏壇と思い出の品を入れる空間にした。


 それから納得のいく買い物を吟味して、どんどん購入した家具家電を設置していく。引越しもした。


 私の寝室。夢の大きなベッド!飛び込んでゴロゴロする。ああ、至福……!


 いつしか私は疲れて眠ってしまった。



 まさか、私の全てが見られているだなんて。この隙に女神様が家ごと神界に私を移動していたなんて。大きなベッドに一緒になって愛おしそうに寝顔を見られていたなんて。


 起きるまで私には全て知らないことだらけだった。



 

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