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女神の愛し子  作者: 春爛漫
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教会の不神信者

 そういえば、乙女の魔石を作ってみないと。もう、瘴気も身体に溜まっているだろう。


 朝起きた愛子はベッドの上で胡座をかいて、手をお椀型にして目をつむった。


 聞いてはいたけども初めての試みなので、集中する。


 身体の中にある瘴気を感じて、手から放出する。


 すると、不思議に、お椀型にしてある手の中に力が渦巻く。

 身体の中の瘴気が何か別物のようになって身体から抜けていく。


 愛子が手に重みを感じると、拳ほどのピンク色の魔石が手の中にあった。

 持ち上げて目の前で見てみると、ほのかに光って見える。

 不思議に思いながら鑑定してみると『乙女の魔石・神気付き。大星貨3枚』と出た。


 あれ?と思い、再度、詳細鑑定してみる。



【乙女の魔石・神気付き】

 半神アイコが作った乙女の魔石。神気を含んでいるので通常よりも効果が高い。価値は大星貨3枚。


 駄目だ!これは市場に出せない!


 愛子は今度は神気を注入しないようにして魔石を作った。


【乙女の魔石】

 浄化の乙女が作った魔石。価値金貨5枚。


 愛子はホッとした。聞いていたよりも価値が高いが、愛子の名前は出ていない。てか、半神アイコって出たらアウトだっつーの!


 でも、無事に作れたのでヨシとする。


 持ち上げて眺めてみると、宝石のようにキラキラして綺麗な魔石だった。


『この魔石でアクセサリーが作れるんじゃない?』


 とアイコは思った。アクセサリーには無縁のアイコだったが、憧れがないわけでもない。


 魔石をアイテムボックスにしまうと、愛子は朝の準備をして自宅から教会の客室に出た。


 少し早い時間だから、白湯を飲みながらソファに座ってマリーナが来るのを待つ。

 朝一杯の白湯は体にいいと聞いて続けている習慣だ。

 半神になった今、効果が有るのかは謎だが。



 そう、時間がかからずにマリーナが朝食を持って現れた。


「おはよう、マリーナ」


「おはようございます、アイコ様。すぐに朝食の用意をいたします」


「うん、お願いね」


 昨日とあまり変わらない料理だが、作ってくれるだけでありがたい。

 準備ができたら、朝食をいただく。


「アイコ様、今、教会の神官たちを祈りの間に集結させております。朝食がおわりましたら、ご案内いたしますので、アイコ様に不神信者の選別をお願いいたします」


「わかったよ。案内よろしく」


 もぐもぐと食べながら返事した。


 愛子が自分で食事を用意してもいいのだが、愛子はこの世界の食事に興味があった。


『うん、素朴な味』


 嫌いな味ではない、ホッとするような味なので、自分で作る料理より他人が作ってくれた料理の方がありがたい。

 自分で作る料理は美味しくてもそれを食べてくれる人がいないと味気ない。だから愛子は相当不味い料理でないかぎりありがたく頂戴する。


 それは幼少期に餓死しかけた記憶が身体に身についているのかもしれない。



 朝食を食べ終えた愛子はマリーナと廊下にいた聖騎士2人に付き添われて神官達が集まっている『祈りの間』に行くところである。


 階段を降りて通路を進んでいくと人々のざわめきが聞こえてきた。


 マリーナに一段高い場所、教皇様が立っている場所に案内される。


 高い場所から見下ろしてみると、この広い教会に勤めている神官と思わしき服装をした者達であふれている。


 教皇様が愛子を見て、聖騎士に合図するとその聖騎士が大声を上げた。


「静粛に!教皇様からのお言葉がある!」


 何度か聖騎士が大声を出すと、だんだんとざわめきが小さくなった。

 そして、教皇様が話し出す。


「皆さん、おはようございます。今日、緊急に集まっていただいたのは『浄化の乙女』である愛子様からのご要望である。心して聞きなさい」


 教皇様は愛子に黙礼して場所を譲った。


 愛子がもう一段高い場所から見下ろしてみると、とても大勢の神官と聖騎士が全員こちらを向いていた。


 愛子はこんな大勢の人の前に出て話すのは初めてである。一度神殿で話した時は各国と種族の代表の前だった為、人数が少なかったのである。


 愛子はゴクリと唾を飲みつつ、自分の声が1番後ろの人まで聞こえないだろうと、通販から魔道具化したマイクとスピーカーを買って取り出した。

 マイクをonにして話し出す。


「はじめまして。浄化の乙女の愛子です」


 愛子の声が大きく祈りの間に響いた事でざわめきが大きくなったので、少し待つ。


「静かにしてください。……あなた達に問いかけます。あなたは神を信じますか?浄化の乙女をどう思っていますか?」


 愛子は声に神力を乗せて話した。


『万ちゃん、不神信者・もしくは浄化の乙女に対して悪い感情を持っている人の額に紋様を刻んで』


【了解した】


 愛子は紋様が不神信者に刻まれた事を確認してから、騒ぎになる前にマイクとスピーカーをアイテムボックスにしまって段上から降りて、マリーナを促して聖騎士と4人で部屋へと戻った。


 見守っていた教皇は、神官達が『罪人』と額に出た者を見て騒ぎになった祈りの間を見ていた。


 打ち合わせどおりに聖騎士達が神官を仕分けて紋様が出た者達を分けていく。


 見た限り、神殿の二の舞にはならず約1割の罪人達を見て『これなら大事になるまい』とホッとした。

 しかし、神官や聖騎士となる者に約1割の不神信者を出した事には内心苦いものがある。


 責任者にはあとで紋様の出た者達をリストアップして持ってくるように通達している。

 なぜなら、額に『罪人(つみびと)』と出た者をそのままの地位に置くことが出来ない為、神官見習いか下働きとして神を敬う心を養っていかなければならない。

 教会が『罪人』の神官達を放逐するのは簡単だが、それでは神聖王国で生きていけずに野垂れ死ぬしかないだろう。なので、今までの功績をもって最下層からやり直す機会を与えてもいいだろう、そして簡単に放逐しないのは教会の慈悲深さの宣伝にもなる。


 こうして、教会の選別は終わったのだった。

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