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女神の愛し子  作者: 春爛漫
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愛子の絵

「こんなにたくさんの肖像画をありがとうございました。何とお礼を形にしたらいいのか……」


「大した事してないですから。神々も自分の姿を知ってもらって嬉しいと思いますよ」


 なんかアイテムボックスが熱いんだよね。嫌な予感。


 アイテムボックスに手を突っ込むと手に連絡本がぴたっと引っ付いてきた。ママ〜。


 出してぱらりと開くと『ママと愛子が一緒の肖像画がない!』とご立腹である。


 ペンを出して『ママとのポスターは家の寝室に飾ります』と書いたら『ママにも頂戴ね』と返ってきた。

 今夜も神界か。ママ自分で作ったらいいのに。


 そんなやり取りをしていたら、教皇様が申し訳なさそうに見てきた。


「アイコ様に使っていただいた部屋が肖像画でいっぱいになってしまったので、部屋替えをお願いしたいのですがよろしいでしょうか?」


 そんな事いいのに。


「いいですよ。新しい部屋で」


「ありがとうございます」


 そういうことで部屋を移動することになった。



 部屋から出ると聖騎士が大勢いて、驚いていたら教皇様が指示を出していた。


「聖騎士はこの部屋を常時5人体制で警備するように。隊長に連絡して今から調整しなさい」


「「「はっ!」」」


 足早に聖騎士が1人去って行った。隊長に報告するんだろうな。


「アイコ様、隣の部屋になります。行きましょう」


「はい」


 隣の部屋ね。近い移動だこと。

 と、言っても客間が大きかったわ。


 あ、マリーナが歩いてきた。髪が乱れてるけど何かあったのかな?服もヨレてるし。


「マリーナ、大丈夫?何かあったの?」


 マリーナがヨレて疲れる何かをしたのは愛子なのだが、それは口に出さずに「ご心配ありがとうございます」と言うに留めたマリーナだった。

 そして、愛子に付き添う。マリーナの愛子への忠誠心が上がった。だが、同時に涙を流した愛子への親しみも湧いている。

 小さい子供が(勘違い)異なる世界に来て、最高神様をママと慕い、心に寂しさを抱えている姿は健気で愛おしさを感じる。


 教皇様と愛子、マリーナにお付きの聖騎士4人で愛子の部屋になる客間に向かった。ついでに絵師も。帰れと言われていないし、まだ絵画も完成していない為だ。


 マリーナが先に部屋に入り、部屋の状態を確認してくれている。


 ひょこっと部屋の扉を開き、中に招き入れてくれる。

 私達は部屋に入った。そして応接セットのソファに座る。私の向かいには教皇様が座った。


「アイコ様。まずは改めてお礼を申し上げます。神々の肖像画のおかげでこの地はますます参拝者が訪れて城下町が活気付くでしょう。

 今まで見た事のない細密画。各地の絵師達がこぞって描きにくるでしょう。

 対価は滞在費と伺いましたが、それ以上の対価をご用意させていただきます。

 それと、お願いなのですが、アイコ様の肖像画を描かせていただけないでしょうか?教会関係者だけで鑑賞させて頂きますので」


 教皇は大々的に愛子の功績を広めるつもりだった。でも、愛子の肖像画は教会で代々受け継いでいくつもりで、見せびらかすつもりはなかった。


 愛子は目立ちたい訳では無い。だが、自分の肖像画と聞いて書いてもらいたいという気持ちも湧いてきた。この世界の絵画に興味もあったのだ。


「いいですよ。でも広めないでくださいね」


「承知いたしました。絵師殿、アイコ様を書いてくださいますか?」


 静かに控えていた絵師が返事をした。本人が目の前にいるのなら、有名絵師にとって描く事は朝飯前である。


 教皇様は「失礼して」と部屋を出ていき、愛子はポーズの指示を受けていた。

 化粧も何もしてないけどいいのかなー?と思いつつ。


 周囲の人は、教皇様もマリーナも絵師たちも誰もが愛子は10歳〜12歳くらいだと思っているので気にしていないが。とてつもない勘違いをしている。愛子は38歳だ。


 身長が低いのは愛子のせいではない。遺伝のせいだ。若く見られるのは日本人の民族性だ。


 こうして愛子は子供だと思われて可愛く(えが)かれてしまうのだった。



 有名絵師は愛子が少しくらい動いても経験で調整して書いている。彼はこの神聖王国の中でも3指に入るほどの人気絵師なのだ。教会では若干空気のように扱われていたが。いわば大先生である。

 愛子がお茶を飲んでいたって、果物を食べていたってちょっとの調整で書いている。天才は頭から指の先まで天才なのだ。


 結局、夕方まで愛子はくつろいだままソファに座り、絵師たちは帰って行った。


 今はマリーナが夕食を取りに行ってくれている。


 絵の完成は10日後程だそうだ。楽しみである。


 沈みゆく太陽を窓から眺めて飽きずに外を見る。


 今は初春だろうか?日が暮れると少し寒いが、日中は過ごしやすい。

 愛子は窓の前で風を感じる。心地よい風だ。


 この国は変わるだろうか?いや、愛子が変えなければいけない。


「万ちゃん。王城はどうなってる?」


【混乱している。教皇が手紙を出したようで愛子の希望は伝えられている】


「そう。落ち着くかな?」


【現時点では何も言えない】


「そっか。ありがとう。引き続き監視をお願いね」


 ママとの約束達成まで時間がかかりそうだ。


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