最高神とは
マリーナが落ち着いたところでお寿司を食べよう。
通販の事は「そういう能力があるんです」で通したよ。
「生の魚って食べれるんですか?」
生真面目っぽいマリーナは真剣に聞いてくる。
「この世界の魚が生で食べれるか知らないけど、私が出した日本のお寿司は生で食べれるよ。ていうか、もう私1つ食べちゃったし。ぷりっとして美味しいから食いねぇ食いねぇ。あ!はしが使えなかったら手で掴んで食べたらいいからね」
私は美味しくいただきま〜す!
マリーナは私が食べたのと同じのを食べるみたいだ。
はしを使おうとして断念したみたい。手で掴んで寿司をひっくり返したらネタがポロリと醤油皿に落ちた。初心者はやるよねー。私ははしで掴んで助けてあげる。
目をつむって食べた!もぐもぐしてる。あ、こわばった表情が緩んできた。気に入ったかな?
「これは、なかなか、味わい深いですね」
「美味しいでしょー?」
「新しい味です。教皇様にも食べてほしいです」
「マリーナは家族はいないの?」
「教会の者が家族です。同じ孤児院出身者もいますしね。今日で家族が減りましたが」
ちろっとマリーナの顔を伺う。真面目そうなんだよなー。思い詰めなければいいけど。
「恨んでる?」
「いいえ。神を信仰する同志だと思っておりましたのでショックではあります」
目をつむってお寿司を味わってる。こう見ると美人さんがお寿司に悶えてるから、かわいく見えるね。
私も味わおう。
ーーーーーーーーーー
お寿司を食べていっぷく。ふぅー、満足です。
あ、食器は食べたら消えた。便利ー。
「それで、最高神様はアイコ様に何と言って、この世界に連れてきたんですか?」
「無断で?寝ている間に?」
「アイコ様は不幸だったのですか?」
不幸だったかと聞かれると私より不幸な人はいっぱいいたはず。祖父母もいたし、だったらーー
「私は不幸じゃなかったよ。普通の人より恵まれてなかったけど、精一杯生きてきた。家族はみんないなくなちゃったけど、ここまで生きてこれたから」
それに新しい家族がいる。ステータスの称号が消えない限り、愛されてるって信じられる。これって幸せだよね?
「そうですか……。ところで、神様のお姿はお目見えされましたか?」
「ミタヨ」
「どうでしたか?」
マリーナは少し興奮しているようだ。
正直に話すかな。
「最高神様は水色の瞳に金髪の長いウェーブがかかった髪に優しげな眉毛と長いまつ毛に小鼻でちょうどいい大きさの唇で、この世の美を集めたようなお方だよ。身長も高いし胸は大きいし、女性の理想像だね」
「ほぅ、それはーー」
目をつむって想像してるんだろうな。頬がほんのり上気してる。
いや、カッと見開いた。
「最高神様、は?
もしかして、他の神もご覧になられたのですか?」
え?マリーナさん?怖いよ?なんか、こっちを見通そうとしないで?私、嘘が苦手なんだから。
「ご覧になられたの、ですね?」
「も、もう、寝ようかなー。ツカレタナー」
ソファから立ち上がって部屋の奥に行こうとすると、マリーナに回り込まれた。
いや、いや、目が、怖いって。
「覚えて、ますね?」
いや、毎日見てたら覚えるよ。記憶力、悪くないもん。
「明日、絵師を、呼びます。アイコ様は、国が落ち着くまで、しばらく、予定は無いはず、なので」
いや、言葉を切って話さなくていいって。怖いって。
「ゆ、夕食はいらないからね。お寿司食べたし、お腹いっぱいだから。ちょっと早いけど今から寝るからね。また明日」
「お体を拭くお湯をお持ちしましょうか?」
あ、普通に戻った。よかった。
「ううん。いらないよ。ありがとうね」
「それでは、ごゆっくりお休みなさいませ」
お辞儀して見送ってくれる。
マリーナは神様に対する時だけ暴走しちゃうんだね。
よし、続き部屋に行こう。
うわぁ!ここも歴史がありそうな高級そうな家具がいっぱいある。ベッドも大きい。
掃除はきちんとしてくれてるみたいだけど、魔法のクリーンをかけておこう。
靴を脱いでベッドに横になってみる。
う〜ん、日本のベッドの方がいいかも。寝るのは家で寝ようかな?
ベッドから降りて家に繋がる扉を出して中に入る。
ふー。ずっとこの家で暮らしてたから帰ってきたって感じがする。お風呂に入ろう。
浴槽に40℃の温泉の湯をためて、シャワーで髪から洗っていく。
なんか、半神になった頃から髪も肌艶も調子が良いんだよね。ありがたいことに。
湯船に浸かると力がぬける。
お風呂と睡眠で1日の疲れが取れるね。
そういえば、この家、天界に置いてあったんだけど今は別の空間なのかな?玄関から外に出てみるか。
外に出ると一面の草原が広がっていた。空気も気持ちいい。ママが新しい世界でも作ったのかな?
でも、凄く違和感を感じる真っ白な扉があるんだよね。
勇気を出して開けてみる。
「はーん!おかえりー!ママ寂しかったー」
ママが扉の前に居た。両手を広げて抱きしめる体勢だ。
「愛子!ママの胸に飛び込んでいらっしゃい!」
残念な最高神様だ。
「ママ、何やってるの?」
「家があるそっちは愛子の為に作った小世界なの。だから扉をくぐってこちらにいらっしゃい」
「ママはこっちに来れないの?」
「私が行ったら私の力で小世界が砕けてしまうの。だから家を壊されたくなかったら、ママの腕の中に来なさい」
脅したよ。最高神様が。仕方ない抱っこされに行くか。




