今日はバレンタイン。三年連続で婚姻届が入っていた。
読んでいただきありがとうございます。
え?チョコ?聞くな!悟れ!
「やっぱりあるのか」
今日は二月十四日。
男子はソワソワし、女子は運命の選択を迫られる日、『バレンタイン』。
そしてこの俺・三浦竜美の十八歳の誕生日でもある。
そんな一大イベントが二つも重なっためでたい日にどうして俺が朝から困惑しているのかというと……。
「まったく。毎年毎年。一体誰が入れてるんだ?」
俺は靴箱に入ったチョコではなく一枚の紙切れを取り出す。
その紙には『婚姻届』とデカデカと書いてある。
もう今年で三年連続だ。
高校一年生から三年間。毎年バレンタインの日に俺の靴箱には婚姻届が入っている。
それも送り主は未だにわかっていない。
チョコなら扱いには困らないんだけどな………。
「はぁ」
俺は婚姻届をポケットにしまうと教室へと向かった。
◇◇◇
「おっ!その顔は今日も入ってたんだな。婚姻届」
「うるさいぞ。心志」
俺が憂鬱な気分で教室に入るとThe・陽キャって感じのやつが俺に話しかけてきた。
この空気が読めないアホ面は西村心志。保育園の頃からの腐れ縁だ。
「本当に誰が入れてるんだろうなソレ」
「さぁな」
俺は心志の前の席に座ると一時限目の準備を始める。
俺は今尚ソワソワしているクラスの男子とは違ってチョコを貰う予定がある。
心の余裕がある状態で眺めるのは最高だな。
「悪い顔になってるぞ。お前」
「そうか?」
それから心志と雑談をしていると―――勢い良く教室後方のドアが開いた。
「おっはよぉ〜!心ちゃん。それからタッちゃんも」
「おう。おはよう紡」
「おはよう」
「いやぁ〜疲れた疲れた。朝からハードすぎだよまったく」
「バスケ部全国に行くもんな」
この明るい活発な少女は新見紡。こいつも心志と同じで保育園からの腐れ縁。
容姿端麗で全国大会出場を決めたバスケ部のエースでもある彼女は、この学校一番の人気を誇る美少女だ。
「それじゃあお待ちかね。バレンタインタイム〜」
「イエ〜イ!」
「タッちゃんは?」
「いっ、いえ〜い」
「よろしい」
そんな馬鹿っぽいやり取りをすると紡はバッグからゴソゴソと箱を取り出す。
「はいっ。じゃあこれは心ちゃんの分ね」
「毎年ありがとうございます。紡様」
「うむ。苦しゅうないぞ」
学校一の美少女から隠さずバレンタインチョコを貰えるのだ。
当然ながら周りの視線がヒドい。
クラスの男子はもはや殺気を放っている。
「よしそれじゃあ次タッちゃんの分ね」
「ブホォッ!!紡。ソレは……」
「どうした心志?」
周りに視線を移していた俺だが心志の吹き出した音で紡達の方に視線を戻した。
「竜美。私と結婚してください」
「…………………why?」
「「「「「は?」」」」」
紡の手にはチョコではなく一枚の紙切れが握られている。
もちろんそこには『婚姻届』と書かれているわけで。
「「「「「おい三浦。ちょっとこっちに来い」」」」」
気づくと心志以外のクラスの男子全員が集まって俺に手招きをしている。
きっとあっちに行くと二度と帰ってこれないだろう。
俺は助けを求めて心志の方を見る。
しかし、その姿はどこにも見当たらない。
「あいつ……逃げやがった」
まさか!
こいつらグルか。
俺は恐る恐る紡の顔を見る。
その顔は確信に足りる太陽のような満面の笑みだった。
俺は今朝ポケットにしまった婚姻届を取り出して紡に見せた。
「(コクリ)」
「去年も?」
「(コクリ)」
「一昨年も?」
「(コクリ)」
「そうか」
随分と待たせてしまったみたいだ。
紡はこんなにも自分の思いを伝えていたのに。
俺は紡の手から婚姻届を取ると自分の名前を記入した。
「これからもよろしくな。紡」
「うん!よろしく!竜美」
「うおっ!」
「「「「「はっ、はぁあぁああああああああああああああ!?」」」」」
そのキスはチョコよりも甘いものだった。
【完】
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型月とモンスト最高だね!