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第5話 タンポポと狼

 ギルドにパーティ登録するとようやく禿オヤジのギルド職員が仕事について説明を始めた。


「パーティは実績に応じてクラス分けされ、そのクラスに応じて請けられる仕事のランクも異なる。今日のところウィルチームの仕事は……これだな」


 ウィルに読めるようにカウンターに一枚の依頼書を置いた。他の3人は覗きこんだ。

禿オヤジは続けた


「ここから西に歩いて4時間のところにコルン村がある。畑の他に羊も飼っていてそこの羊毛は引き合いも多い。ところが最近、その羊が何頭か食い殺されたそうだ。オオカミの群れが村の近くにある森にいるらしい。そこでお優しい冒険者様の出番……というわけだ」


 彼がウィル達を一瞥したところにマチルダが控えめな口調で疑問をはさんだ。


「牧場犬はいないのですか? 」


 禿オヤジはちょっと感心した表情を浮かべてから彼女の問いには答えずに依頼の説明を再開した。


「オオカミは雄のリーダと雌のつがいを中心に群れをつくる。このつがいを倒せば群れは霧散しあとは牧場犬だけで追い払えるだろう。つがいの二頭を倒せば依頼は達成される。報酬は40レアル、お前らは4人チームだから一人10レアルだな。オプション報酬はオオカミ一頭殺すごとに50セント。依頼未了でも村長にオオカミのトロフィーを渡せばその場でその数だけ支払われる」


「加えて戦利品の扱いだがオオカミの皮は引き取り相場の倍でギルドで買い取る。並みの物は20セント、上物は50セント。特上は100セントつまり1レアルだ。軍団兵あがりなら生存教練は受けたよな?教練通りに皮は丁寧に剥ぎ取れよ。それ以外の物品については通常通りの相場で引き取る。報酬以外に支度品として一人につき食料3日分をギルドから支給する」


ハゲオヤジは錫のコップで一口タンポポ茶を飲んだ。


「どうだ?やってみないか? 」


 是非もない。仕事は選んでいられない。ウィルは仲間たちの顔を見まわした。


「困っている村人を助けるのです。迷うことはございません。偉大なる我が至高神もお喜びになるでしょう」


 即座にシルフィールが力強く賛同した。彼女が口を開いた時に熱狂的な至高神賛美が始まったらどうしようとウィルは少したじろいだが幸いにも杞憂に終わった。


「一匹50セントね。いっぱい倒して呪文書代の足しにするわ。古代文明とは関係なさそうだけどやっとモダンマジックを試せるわね」


 マチルダはウィルの目をしっかりと見てから軽くうなずいた。肩できっちりカットされた黒髪が少し首元に動く。隙なく知性を湛えさせいるのは頼もしい。その一方で強がっているがちょっと緊張しているのかもしれないとウィルは考えた。



「OK。俺も賛成だ。野外の狼の追跡はまかせろ。もっとも屋内の方が得意だけどな」


トラップは軽くウィルの肩をたたいた。


「では早速オオカミ狩りに出立します。アドバイスが欲しいのですが? 」


ウィルが言うとギルドのおっさんは軽く咳払いをして話を続けた。



「村に着いたらまずは村長に会って事情を聴きな。ギルドから来たと言えば村に宿泊できる。村人、特に羊飼いの話は聞いておけ。この依頼に限らずどんな仕事でも情報収集を惜しむな。必ず裏をとれ。もちろん礼儀正しく振舞えよ。まずは背筋を伸ばしてハキハキと挨拶!踵は合わせろ!ちゃんと被り物は脱げ!挨拶ができないやつには仕事をまわさん。ギルド全体の信用にかかわるからな。森やダンジョンに入るならば迷わないように注意しろ。木や壁に目印をつけたり、地図を作っとくのは基本だ」


 それからハゲオヤジは一呼吸おいてからギロっとウィル達をにらんでから強い口調で言った。


「それと俺の名前はトールマンだ。言っておくが俺はハゲじゃなくて剃っているんだからな。陰口叩いたら絞め殺すぞ」

タンポポ茶は体に良いということで州都ブラビルの中高年の間では流行っているそうです。タンポポの音を乾燥・裁断・焙煎したものを粉末にしてコーヒーのように淹れるのが一般的とされます。ブラビルの若者の間では年寄の飲み物と思われていてお洒落からかけ離れた飲み物と認識されています。我々の世界では抽出液の色からタンポポコーヒーとも言われます。また乾燥したタンポポの根は漢方では蒲公英根と呼び生薬として各種方剤の材料となっています。


作中で「トロフィー」とありますが要するに頭部です。



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