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食事処


 最下層にある祭壇への経路は既に頭の中に入っている。じっくり情報を収集してから経路を見繕っただけあって、その経路はかなり最適化されているだろう。単純に祭壇へと向かうためだけの最短の経路として決めたわけではない。

 その道には様々な細工がされている。


 その一つがこれだ。

 俺は鼻孔をくすぐる幸せな香りに酔いしれていた。


「流石は謎の秘密組織だな。いい匂いで腹が鳴りそうだ」


 ここは食事処である。

 謎の組織エイリアンには中核の構成員とみられる魔族が最低でも二人は存在する。ダンジョンで出会った男と、もう一人はオーランドだ。オーランドに関してはまだ魔族と確定したわけではないが、魔族の男の口ぶりからして魔族なのは合ってると思う。

 他にもこの組織には構成員がいるはずだ。

 そして、そいつらは飯を食うらしい。俺は魔族の生態を良く知るわけではないが、食事処があるというのはそういうことだろう。

 有難く利用させてもらおうか。


 とはいえ、俺はエイリアンの構成員ではない。こういう施設は決まって施設の正規のメンバーじゃないと使えないものだろう。人形が持っていたナンバーは持っているが、それは構成員が持っているであろうナンバーとは別物だ。俺が正規の構成員になったわけじゃない。


 俺は取り敢えず厨房の前にあった椅子に座った。食事処は大人数で使用することを想定していないのか、路地裏でひっそりと営業している小さなバーのような閉鎖感がある。だが、掃除は行き届いていて、地下だと言うのに地上の飲食店よりもかなり上品な衛生管理が成されている。これも人形たちが施設の管理をしてくれているたまものだろう。


「さてと、どうしようかな」


 俺は厨房に目を向ける。


 厨房には人形が立っていた。コックがよく被っているような帽子をかぶっている。白くて長いあれだと言えば伝わるだろう。

 如何にも料理人と言わんばかりだ。立ち姿も両手を前で重ねていて中々それっぽい。この人形がここの厨房担当をしているのが一目でわかった。


「頼めば作ってくれるかなぁ。でも、今の俺はナンバーを持ってるから人形からは認識されていないんだよな」


 困ったものだ。俺はここに飯を食いに来たというのに、ここの料理長は俺の姿を認識できないときた。まあ、俺の姿が人形に認識されないのはナンバーのせいだから、俺がナンバーを手放せば良いんだけど、そうなるとオーランドに報告が飛んでしまう。

 人形の記録から逃れるために人形の振りをしているのが不利に働くとは思ってなかった。でも諦めるのはノーだ。今の俺は腹が空いていて、この後にオーランドとの戦闘が残っている。腹が減っては何とやら。飯は最優先事項だ。だから俺もこのくそ忙しくて時間がない中、ここに立ち寄ったわけだしな。


「厄介だなぁ」


 俺はテーブルに肘を立てて手の甲に顎を置いた。久しぶりの休憩タイムに酔いしれつつ、この状況を何とかしようと溜息を付く。


 意志と状況は比例しない。如何に俺が強い食欲を持っていたとしても、ポンと目の前に飯が現れることはないだろう。世の中はそんな簡単に作られてない。現実というのは敵みたいなものだ。常に人間を苦しめるためにあの手この手を打ってくる辺りが凄くいやらしい。


 ……などと非情な現実に嫌味を吐いていた俺は手のひらをドリルの如くひっくり返した。


 カチャ。カチャ。


 俺の前に立っている人形が何やら動き始めたのだ。厨房でしゃがんで物を漁っているようだ。


「……まさか」


 厨房となればあるのは調理器具だろう。武器を仕込んでいるなんてのは考え難い。期待を胸に俺はぐっと身を乗り出して何をしているのかを覗き込んだ。


 べしっ。っと頭を叩かれた。


「いってぇ。何だよ。敵か?」


 そんな気配はなかったけどな……と、見上げるとコックの人形が俺をじとーっとした眼で見ていた。驚くべきことだ。俺は咄嗟にナンバーを持っていることを確認した。……ポケットにしっかり入っている。


「俺の姿を認識してる? いや、そんなことはないはず」


 ナンバーを持つ者は人形の記録から除外される。そうじゃないと人形は自分たちの行動を常に記録しなければならず、そうなると情報量が膨大過ぎてパンクしてしまうからだ。同じくナンバーを持っている俺は人形たちから一切の記録の対象にはならなず、俺への対応は人形への対応同様に簡素なものとなる。

 人形たちが互いにしている対応というと、道をすれ違う時にぶつからないよう避ける程度だ。それ以上の関係の対応はしない。


 俺は銃へと手を伸ばすも、直後に人形の視線に気付いた。俺を見ているように感じたが、若干ズレている。目を合わせようとしても俺と人形の視線ががっちりと合うことがないのだ。

 俺がよーく確認すると、人形の視線は厨房の作業台に向けられていた。それに合わせて俺もそっちを見る。

 綺麗な厨房だ。地下にある厨房だというのに難癖が付けられない。しかし、いや、だからこそと言うべきか、厨房にあったゴミの存在が目についた。

 黒く細い棒状の何かが一本、丁寧に磨かれた作業台にはらりと落ちている。


 ……これは、俺の髪の毛だな。ああ、俺が身を乗り出した時に落ちたのか。ちょっと悪いことしたな。


 すぐさま掃除がされる。

 俺は人形相手に何とも申し訳ない気持ちになりながら再び頬杖をついた。


 カチャ。カチャ。


 再び音が鳴る。金属同士が触れる時に鳴る音だ。人形が何やらしゃがんで作業をしている。今度は俺は覗き込むことなく待った。

 しばらくして作業台にいっきに器具が置かれる。調理器具一通りと食材が少し……大体一人分程度だ。

 シュッと包丁が構えられた。まな板には肉が乗っている。俺は気持ち少しだけ身を引かせたが、俺が警戒したような事にはならなかった。


 ザッ、ザッ。ぐちゃ、ぐちゃ。


 みるみるうちに肉が加工されていく。恐ろしい速度と信じられない程丁寧な出来栄えだった。俺がダンジョンでオーク肉を焼いたときとは大違いだ。碌に肉も切れず、焼くのは大雑把で、食べ方も死に物狂いだった。というか半分死にながら食べてた。

 そんな無様に肉を扱っていた俺なんかとはレベルが違う。比べることすらできない。そもそも全く別ジャンルなんじゃないかと思うほどだ。俺と同じ料理のカテゴリに組み込むべきじゃない。なんかこう、芸術とかそっちのカテゴリに組み込んだ方が料理業界のためだ。


 そして、あっという間に俺の前に料理が出てきた。


 肉とパンとサラダだ。簡素だが時間がない状況では最適そうなメニューである。栄養面にも配慮されていてサラダには色とりどりの野菜や果物が詰め込まれている。俺が肉ばかりを食っていたのを記録していたのだろう、全体的に野菜と果物が半分程を占めていた。


 目の前に料理を出された俺は顔を上げた。人形は既に料理の後片付けをしている。俺がまだ料理を食べていないのにバシャバシャと水洗の音を立てて器具を洗っている。俺のことは一切お構いなしだ。


 眼前には香ばしい匂いを発するタンパク質と程よい炭水化物、その他ビタミンミネラルがある。

 俺はキリッと賢そうな顔をした。何か重大なことを考えているといった風に顎に手を当てる。意味ありげに強く頷いた。


「よし、計算通りだ」


 俺はフォークを掴んで肉を口に含む。とてもジューシーだった。今まで俺が食べてきたものが全部残飯なんじゃないかと思うぐらい美味かった。パンを千切って口に運ぶ。パンもまた美味かった。いつ焼いたのか分からないが、温かくて肉にあった良いパンだ。

 手が止まらない。口も止まらない。飲み込むよりも先に口の中に放り込まれていく。俺は幸せだった。ここが噂に聞くエデンだろう。そうに違いない。俺は神なんて生き物に興味は無いが、エデンにだけは興味を持つことができた。なるほど、こんなものを毎日食べれるのなら神を信奉したくなる気持ちもわかる。


 俺が毎日孤児院で貧しい食事をしていたときに、オーランドはこんな良いものを食べていたのだ。これが神の恵という奴だろう。オーランドが信奉する神は気に入らないが、これは良いものだ。

 ……ゲンや他の子どもたちにも食べさせてあげたい。


 ギィ。


 その時の俺の警戒心はかなり落ちていた。だから、扉が開いたときに直ぐに銃を構えることができなかった。

 ワンテンポ遅れて銃を構える。フォークが床に落ちたがそんなのはどうでも良い。

 扉の位置は覚えている。銃口は扉から顔を出したばかりのそいつに向いていた。カランカランとフォークが床に落ちた音が響く。


「……ッ、なんだ。人形か……」


 両手で箱を抱えている人形だった。安堵した俺は出した銃をテーブルに置いた。人形は扉を閉めて厨房まで入っていく。作業台に箱を置いて、中から食材らしきものを取り出している。

 その間、俺には少したりとも視線を向けなかった。


「やっぱ、俺の存在は記録されてない……よな?」


 料理を出されてからは考えるだけの脳みそが無かったが、やはりおかしい。俺は皿を平らげて席を立った。即座に皿が回収される。計算されつくされた速度だ。俺が銃を抜く速度よりも速いかもしれない。人形だからこそできる見事に最適化された動きだ。

 っと、そんなことはどうでも良い。俺はぐるりとテーブルを回って厨房の入り口に向かった。仕切りをどかして中に入る。コックの人形は何の反応も示さなかった。雑菌を多量に含む俺が神聖なる厨房に入るのは料理人からすると殺したくなるものだろうに。食器を洗っているばかりで俺には全く関心を示さない。


 俺はそんな人形の肩に手を置いた。回して俺の方に顔をむかせる。食器を水の中に落としたが木材でできていたおかげで割れたりはしなかった。

 ぐっと顔を近づけて、人形と目を合わせる。


 白い髪に白い瞳はどちらも珍しい。特に白い瞳の方は他に見たことがない。まあ、人形の義眼と人間の眼球を比べるのは変な話だが。

 俺は少女の姿をした人形の整った顔を至近距離でじっと見つめた。可愛いらしい顔立ちである。整った顔は決まって非現実感があって不気味さが残るものだが、ここの人形たちにはそういった印象を受けない。普通に愛嬌のある整った顔立ちだ。製作者のセンスが良いのだろう。センスよりも技術的な問題かもしれない。


 まあ、彼女たちの顔立ちは今は関係ない。

 俺は人形の額に手を置いた。熱を測るときのようにピタッと貼り付ける。人形は魔道具だから俺の技能があれば中身を見ることができる。魔力炉にあった記録の魔道具に使ったような感じだ。

 人形の記録を盗み見る。


「……俺についての記録は残って無いな。料理した記録も消えてる。消えてるってよりは最初から記録されてないのか?」


 料理を作ったのは俺に気付いたからだと思ったが。いや、俺がナンバーを持っているから記録がされていないのは分かっていた。そうなると俺が来たから料理を作ったからではなく、また別の要因で料理を作り始めた……って考えるのが普通か。あと考えられるのは、記録に残らない動作がある。

 うーん……わからんな。


 俺は人形の額から手を離して再びその綺麗な顔を眺めた。作りものでありながらも愛嬌のある顔だ。製作者の天才的なセンスが伺える。俺と好みが合うのかもしれない。

 などと失礼にもじっと眺めていると、パチパチと瞼が動いた。珍しい挙動だ。まばたきの機能は眼球が乾かないようにする役割がある。しかし、人形の義眼にはパッと見た感じだと水分があるようには見られない。

 まばたきの機能からして考えるなら、人形にまばたきは必要ないはずだ。だが、悪くない。人間っぽさのない愛嬌のある顔立ちで、まばたきという本来なら必要のない動作を敢えてやってる辺りが愛くるしさを上げている。

 俺はぼそっと言った。


「かわいい……」


 ……勘違いしないでほしいが俺はアガルマトフィリアではない。アガルマトフィリアとは偶像性愛のことで、要するに人形が性癖の変態のことを指す。人間の身体ではなく、人形の作り物の身体に興奮して致すような奴だ。

 誓って言うが俺はアガルマトフィリアではない。この人形があまりにも可愛いから変態みたいに見つめているだけで、この人形以外ならそんなことはない。ただ、この人形が変態的に素晴らしい魔道具なのが悪い。

 誓って言うが俺は悪くない。


 などと誰に聞かせるでもない言い訳をしながら人形の顔を見ているとふと気付いた。


「……なんかこんなにピンク色だったか? もっと白かったような気がするけど……。髪色と同じぐらいは白かった、よな?」


 人形の顔が僅かに、ほんの僅かにだが白色から薄っすらと桃色になっていた。でも俺は知っている。人形の肌が勝手に色を変えることは無い。人間みたいに気持ち悪く顔色が変化するようなことは無いのだ。


「気のせいか」


 俺は無視した。別の人形の調査に移る。食事中に食材の補給のために入ってきた人形だ。そろそろ食材の補給を終えるころだろう。

 人形が持ってきた箱が空になった頃合いを見計らって、顔を俺の方に向けさせる。人形なだけあって寸分の狂いのない同じ顔をしていた。少し気味悪くも感じるが、やはり愛嬌がある。俺は女に強い興味を持つような年頃ではないが、彼女たちの顔は俺の好みに近いのかもしれない。

 ……そういえば、ゲンがロンガスの娘を可愛いとか言ってたっけ。……早く助けてやらないとな。


 額に手を当てて先程のように記録を覗いた。魔力炉にあった大本の記録の魔道具とは異なり、彼女たち一人一人が抱えている記録の量は少ない。すぐに全ての情報を洗うことができるだろう。


「俺に関しての記録は、残ってないか。他の記録は……なんだこれ」


 ここの近くに俺の知識に無い部屋の情報がある。それもピンポイントにその部屋の情報だけが掲げられるように。それ以外の情報は必要最低限しかない。まるで俺が人形の記録を覗くのを予め知っていたかのように情報が綺麗に整えられていた。凄く見やすい。どの情報が何処にあるのかが一目でわかるように整理されている。

 そして、整えられている情報の中でひときわ情報量の多い記録が一つだけある。部屋の記録だ。俺はその部屋について人形の記録を漁った。


「魔道具の管理室。こんな情報は魔力炉にはなかったけど、俺が気付けなかっただけか? 一応この辺の部屋は全部調べたはずなんだけど」


 魔力炉にあった記録の魔道具は膨大な情報を持っていた。そのせいで俺は全ての情報を得ることができなかった。とはいえ、祭壇への道筋に関してはかなり正確に情報を精査したつもりだ。

 だが、この人形が持っていた魔道具の管理室に関しては俺は全く知らない。俺が見つけられなかっただけの可能性もあるが、そうじゃない可能性もある。


「罠……か?」


 俺が人形の頭の中を覗くことを知っていれば、その者は俺に意図的に特定の情報を与えることができる。今の場合だと魔道具の管理室の情報がそうだ。もし、この情報が誰かによって人形に仕込まれたものであったなら、この情報が物凄く危険な情報なのは俺が言うまでもないだろう。


 記録の魔道具に無かった情報を何故かこの人形が持ち歩いている。しかも、この人形の頭の中は不自然なまでに整えられていて、俺が魔道具の管理室の情報を確実に入手できるようにされていた。


 これは選択の時だ。


「魔道具の管理室に行けば確実に戦力強化に繋がる。オーランドと戦うなら強い武器は必須だしな。でも、これが罠だったら、多分オーランドが待ち構えてる。オーランドだけならいいが……いや良くないけど……他の魔族も一緒だった場合は詰みだ。この情報を使うかどうかは、かなりの賭けになる」


 さーて、どうするか……待てよ……。罠があるかどうかを事前に確認できれば儲けものだよな? リスクなしで魔道具を漁れるわけだし。罠があるかを確認するのにわざわざ自分の身を使う必要はない。……特に俺の技能は魔道具だ。確認できる魔道具を使えば良いし、確認するための魔道具ならある。


 ここに。


 俺は人形の肩を掴んだ。白い眼を物凄い形相で睨みつける。自分で言うのも何だが、今の俺の眼は蛇がカエルを睨みつけるような鋭い眼をしていると思う。相手が人形だったからよかったが、生の女子にやってたら確実に俺はお縄につく自信がある。この少女が人形で良かった。

 ……などと余裕こいていたら目を逸らされた。ついでに顔まで逸らされる。人形は俺を認識できないはずだ。俺から謎の嫌なオーラでも感じたのかもしれない。


「……そんなに俺の顔が見たくないかよ。人形にまで怯えられるような怖い顔してたかなぁ」


 俺は人形に顔を逸らされたのが何とも気に入らなかった。子供じみたことを言うならこれは意地と言う奴だ。追うように人形の顔を覗き込む。


「あ、やっぱ顔赤くなってる? 気のせいか?」


 再び顔が逸らされたが、俺は顔色を確認したくて再び追った。二度も俺が顔色を見間違うとは思えない。人形の顔色が変わってるのはほんとに変わっているはずだ。

 確認したく思う。


 が、ドンッ。と、正面から人形に押された。

 勢いで後ろに数歩下がる。


「……?」


 人形に押されるとは思ってなかった。瞼がパチパチと開閉する。人形は俺を認識できないはずで、俺に対する認識は精々道端を歩いているどうでも良い他人程度だ。道を歩くときにぶつからないよう避けるぐらいはするが、それ以外は一切記憶に残らない。道をすれ違ったらもう忘れている。

 俺への認識なんてその程度しかない。

 なのに、押された?


 賢い俺はすぐにわかった。


「ああ、進行方向に居たのが邪魔だったから退かしたって感じか。それぐらいなら有り得るな」


 これも人形の性質なのだろう。やはり道具は説明書だけ見ただけで使える気になるのは危険だ。自分で使ってみないことには詳細な部分はわからない。魔道具技師(無免許)として教訓にすることにしよう。


「とにかく、お前の力を借りるぞ。悪いけど頭をいじらせてもらう」


 先程俺が考えた名案である。魔道具の管理室に罠があるのかを確認する作戦として人形を使うのはどうかと思ったのだ。


 罠は大きく分けて二種類あると考えられる。一つは人間などの生物を使った罠だ。これは視覚や聴覚を使って相手を発見し、奇襲を掛けるタイプの罠だ。この罠の対策は視覚や聴覚で負けなければ良いぐらいしか思いつかない。

 だから俺が意識する罠はもう一つのタイプの罠になる。魔道具を使った非生物的な罠だ。これは魔道具を使って相手を判定し、特定の相手に対してだけ罠が発動するタイプの罠だ。このタイプの罠なら俺にも対策できる。


 そのキーになるのが人形だ。


 俺は人形に詰め寄って額に手を当てた。やっぱり、ほんのり顔色が赤くなっているようで、心なしか瞼もパチパチしている。


「少しだけ、俺に協力してくれ。……最悪、悪いようになるかもしれないけど善処するから」


 俺は誰に聞かせるでもない言い訳をして人形の機能を改造した。こいつに先に魔道具の管理室に入ってもらって罠の確認をしてもらう。

 罠によっては俺の代わりに破壊されるだろうが、俺には手段を選んでられる時間が無かった。


「俺を恨んでくれて構わない」


 誰に聞かせるでもない言い訳を言って、俺は人形を先に行かせた。


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