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第8話 アレスVSゴブリンキング

 時は少し遡り、行方不明のニクソンを探しに来たライツは次第に焦りを募らせていた。


(やばいな……このままじゃ……)


 迷宮というのは入り組んでおり、1度離れてしまうと合流というのは極めて困難となる。

 今のままでは見つからない、と判断したライツは5階層に戻ることに決めた。


 ニクソンもそれなりの力を持っており、初戦闘では広範囲の火魔法で味方ごと燃やそうとした。

 本人にそんなつもりはないのだろうが、自らの力を見せつける意味で使用した。


 見切りをつけ、戻ろうと足を動かした時、悲鳴がライツの耳に届いた。


「ぎゃあああああああああ!!」


「……ニクソンか」


 可能性としては十分に有り得るので、悲鳴のする方向へ急ぐライツ。

 曲がり角を曲がり、通路へ躍り出たライツは、絶句した。


「……っ! ニクソン、無事か!」


 ニクソンは痛みで顔を歪め、地面には血溜まりが出来ている。

 ニクソンの血であることは明らかだ。


 ニクソンの元へ駆け寄り、腰に下げた剣を抜く。

 ライツの眼前にいる男だ。


「お前がやったのか……?」

「あぁ! 俺だけどよー、最初はこいつがいきなり襲ってきやがったんだ。だから斬った」


(どうやら、そうらしいな……)


 ニクソンがコクコクと、必死に頷いている。


「で、どうするんだ? あんたがやるのか?」

「俺たちが引けば、引いてくれるのか……?」

「いやーどうすっかなあ……」

「くっ……」


 ライツに戦う意思などない。直感で自分よりはるかに強いと、感じていたから。


「やっぱり、殺すわ。そこまで斬ったなら、最後まで――」


 態度を変え、猛烈な殺気を放つ男。剣を握り直し、一歩を踏み出した時、


 がっ、と男の肩が掴まれた。男が後ろに目を向けると、そこにはもう1人男がいた。


「ザック、そこまでだ。もうここに用はない、帰るぞ」


 互いに睨みを利かせながら、無言の時が流れる。折れたのは、ザックと呼ばれた男だった。


「わーったよ、お前の言うこと聞くから。とにかく肩から、手離せよ」


 すっと腕を引っ込める男。それから、二人して一歩下がり、姿を消した。

 ライツは男二人がいた場所まで行くと、そこには人一人が通れる程の穴が空いていた。


 どこまで続いているのかは分からない。ただ(くら)かった。


 ◇◆◇◆◇◆


「ゲギャギャギャギャ」


 天井まで届きそうな程の巨体――――ゴブリンキングがアレス達の前に立ちはだかった。


 アレスはじっと観察していた。ゴブリンキングの足元に人間の肉片と思われるものが散乱している。


(殺された人達が連れて来たのか……? 逃げ場はなさそうだな……。やるしかないか)


 辺りを見ても、逃げ場はない。


「なあ、お前……遠距離用の魔法は撃てるのか?」

「きゅ、急になんなんだよ……!」

「いいから、答えろ」

「………火球(ファイアーボール)でいいなら」


火球(ファイアーボール)か……。いけるな)


「ここからでいいから化け物の下半身、特に足を狙って攻撃してくれ」

「……は? 何言ってんだよ。そんなん意味ないだろ! お前は何するんだよ!」


「俺か? 俺はあいつを………ぶった斬る」


 ということで、アレスがゴブリンキングをぶった斬ることに決まった。

 少年は無理だと思いながらも、渋々首を縦に振った。


「俺が走り出したら、始めてくれ」

「わ、分かった」


 アレスは魔力剣を握る。今回の魔力剣の刃の長さは、かなり長い。長剣の部類に入るだろう。


 覚悟を決めアレスは走り出した。真っ直ぐゴブリンキングに向けて突貫する。


「馬鹿だろ、あいつ……。火魔法・火球(ファイアーボール)!!」


 アレスがゴブリンキングに気付かれるより先に、火球が炸裂。

 地面にも当たりつつ、アレスの指示通り足にも当たる。


 煙に隠れてアレスは、接近する。ゴブリンキングの足元まで行くと、股下をスライディングでくぐり抜け、裏へ回る。

 壁を踏み台にして、ゴブリンキングの背を狙う。


(図体が大きい分、動きは遅い。捕まることはない……いける!)


 横に振り抜き、肉を断とうとするが――――ズブッ


「――――!!」


 体が大きすぎるため、刃が食いこんだだけだった。ゴブリンキングの意識がアレスへと移る。


「くそっ」


 アレスは魔力剣を抜き、地面に着地する。ゴブリンキングは平静を保っており、まだまだ余裕だ。

 アレスの方へ体を向け、声を上げる。


「ゲギャ、ゲギャギャギャ」


 棍棒を持ってない方の腕を、前方に突き出すゴブリンキング。

 アレスは眉をひそめ、様子を伺う。

 その時、少年の叫び声がアレスへと届く。


「アレス! 魔法だ! キング系以上の魔物は、魔法を撃てるんだ!」


 少年の言う通り、突き出された腕から極大の炎が放たれる。

 ゴブリンキングに時間を与えすぎたアレスのミスだ。


「まじかよ! 魔力展開」


 アレスの全身から放出された魔力が壁を作り、アレスを守る。

 炎と魔力がぶつかり合い、激しくせめぎ合う。

 互いに譲ることはなかったが、ゴブリンキングの炎が徐々に消失していく。


(魔法を使えるのか……厄介だな……)


 すぐさま、魔力を足場に変え空中に固定する。足場を使って、接近していくアレス。

 対するゴブリンキングは、巨大な棍棒を振り下ろしてくる。


(くっ……速度はないのに。攻撃範囲が広すぎるな)


 タイミングをずらしたりしながら、足場を上手く使い当たらないようにしているが、少しでも判断を間違えば即死は免れないだろう。


 棍棒自体も巨大なので、その分攻撃範囲が広いのだ。


 ゴブリンキングの数メートル前まで近づいたアレスは、勢いよく跳躍し、ゴブリンキングの肩に乗ることに成功した。

 そして、腕の付け根部分を斬りつけていく。


 さらに――――――


「デュランダルッ!」


 魔力が剣を形作り、意思を持ったように動きながら、攻撃していく。

 アレスは、指でこのデュランダルを操作している。つまり、最大で操作できるのは指の数である10まで。

 現在は片手が魔力剣であるため、操作できるのは5本まで。


「……ゲギャ、ギ……ギャギャギャ」


 一撃一撃は重くないにしろ、何十何百と攻撃を食らえば、大きなダメージになる。


(これくらいで、いけるか)


 アレスはゴブリンキングの体を蹴り、一旦その場を離脱する。

 地面に着地し、魔力剣の刃を変形させていく。

 今回は斬れ味を重視した形で薄い。その分耐久力は落ちる。


(あいつの体を斬るには、薄くないとダメだ……)


 魔力も薄く広げ、ゴブリンキングの目元向けて放つ。

 ビタリと張り付いた魔力は、ゴブリンキングの視覚を奪う。

 それを見計らって、アレスは突撃する。


 魔力剣を上段に構え、棍棒を持つ腕の付け根に視線を送り――――一閃。


 力一杯振り下ろした。


「ギャギャギャ、ギャゲギャ―――――!!」


 片腕を斬り落とされ、絶叫するゴブリンキング。


「ふぅーー。あとは……()()を使用して終わりだ」


 アレスは切り札を使用すべく、魔力剣の刃を消した。


切り札とは――――――魔力回路切断である。



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