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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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エルフとわたし#19

村のなかへ入ると家がたくさん並んでいた。きょろきょろしていたら

「ここはウィゼンベルク村のおよそ倍ほどあるでしょうか」とピュイトが教えてくれる。初めての違う村。

でも建っているお家はミアの村とそんなに変わらない。もう暗いけど赤い屋根に白い壁なのが、グリフェルダさんの手のひらに浮かんだ光の玉のおかげで見えている。

遠くまで明るくなるように、腕をまっすぐ伸ばしてくれている。

白くて丸い光の玉がバレーボールみたい。

「それも魔法なの?」

「基本的な灯りの魔法ですね。人によって大きさや光の色が違いますが、ほとんどのエルフが使える魔法です。ミア様はまだ魔法を習ったことがないのですね?」

「うん、まだ教えてもらったことはないよ。でも“クリーン”は使える!得意なの!」

えっへんと胸を張れば「ふふ、それは大変便利な魔法ですよね。では他の魔法は道中でお教えいたしましょう」と嬉しい約束をしてくれた。

「本当っ!?ミア色んなの覚えたい!」

「お任せください」


「こちらが本日お泊まりになる宿です」

おしゃべりをしていたらあっという間に宿に着いたみたい。

二階建ての横長の建物。中に入ってみると、一階はがらんと大きな部屋になっている。

「いつもは村の集会場で、旅人が来た時だけ宿として貸し出すのでしょう」ピュイトが大きな部屋を眺めながらそう言った。

「えぇ、村長がそう言ってましたね。それで、二階にお泊まりいただく部屋があるのですが、その、部屋数が限られていまして、……お二人で同じ部屋でもよろしいですか?」


「ミアは別にいいけど……?」

ピュイトをちらりと見ると「小さな子供を一人にしておく方が心配ですから同室で大丈夫です」とグリフェルダさんに軽く頷いてみせた。

「助かります。扉の前に隊員を配置しますので安全は保証致します。ではこちらの部屋で。明日の朝また迎えに参ります」

ホッとした様子で二階の門部屋に案内された。部屋にはすでに蝋燭が灯されていた。

中に入るとベッドが両方の壁際に1つずつ。座ってみるとギシギシ音がする。

「あんまりいいやつじゃないね」

これならじぃじが村の大工さんに頼んでくれたミアの組み立てのベッドの方が丈夫そう。

「簡易の宿などこんなものですよ。さぁ、今日は疲れたでしょうから早く寝ますよ」

「はーい」

促されて寝間着を取り出そうとカバンを大きく開ける。

んと、夜にならないと使わないから、多分一番下に入ってるはず。

カイ兄ちゃんからもらった干し肉を出して、ハンカチやお金の入った革袋をベッドの上に出していく「あった」じぃじのおうちでいつも使ってた寝間着。あれ?寝間着を出した後にも何か入ってる。

引っ張り出してみると、それは涼しげなミントグリーンのシンプルなワンピースだった。

ミア、こんなお洋服知らない。

そういえば、別れるときのゲーテおばさん、目の下に隈ができてた。

……5日で仕上げてくれたの?


ぎゅっと胸に抱き締めれば「急だったから凝った作りには出来なかったけどね、着古しより堂々としていられるだろう?」とほっぺをつやっとさせながら笑うゲーテおばさんが目の前にいるような気持ちになった。

勝手に目が潤んでしまって、慌てて意識を逸らす。

着替える前にクリーンしなくっちゃ。

「今からクリーンするね」壁際に置いてある衝立に向かって声をかける。

「お願いします」

「クリーン!」

今日はずっと外にいたから少し埃っぽかったのが、すっきりさっぱりして気持ちが良くなった。

ミアはまだ子供だから恥ずかしくないけど、ピュイトはやっぱり着替えとか見られるの恥ずかしいのかな?

ピュイトが衝立の陰にいる間にミアも着替えちゃおう。

ワンピースを脱いで、また寝間着のワンピースを被るだけ。簡単。

着ていたのはきちんと畳んでカバンにしまう。新しいミントグリーンのワンピースはお部屋の備え付けのハンガーにかけた。

明日からこれを着よう。


「ミアのおかげで気持ちよく眠れそうです」

寝間着に着替えたピュイトが衝立から出てくる。

生成色の普通のパジャマだ。

普通だけど神父様の服じゃないピュイトを見るのは初めてで新鮮だ。

「ねぇ、ピュイトは旅の間も神父様の服なの?」

「そうですね、基本は神父や神官はいつでも神父服や神官服ですね」

そういえばサーシェルさんも神官の服だった。

「身分がはっきりわかりますしね。とはいえ、雪山や砂漠を旅するような時は別ですが」

「ふーん、皆たまにはオシャレしたくならないのかなぁ?」

と言えば「神父や神官は清貧が基本ですからね」と笑われた。


「さて、消しますよ」

ミアがベッドに潜りこむと、ピュイトが蝋燭を消してくれる。


一瞬真っ暗になったかの様に思えたけど、ナイトテーブルに置かれた光石ランプが徐々にぼんやりと光だす。

小さいころは何が入っているのか知らなかったけど、小間物屋さんに普通に売ってた。暗くなると自然と光だす性質の石なんだって。ぼんやりとしか明るくはならないけど、蝋燭は火事になっちゃうから寝るときはこっちを使うんだって、おじさん言ってたな。

何年かすると徐々に暗くなっちゃうから買い換えが必要なんだって。


薄緑に色がついた光がぼんやりと壁や天井を照らしている。


おうちと一緒の薄緑の光。


足はくたくたなのに、眠れない。











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