エルフとわたし#17
今回は本編の続きです。
お待たせしました。
「席を整えて参りますので少々お待ちを」グリフェルダさんとシェファフルトさんはテントの近くまで来ると、ミア達を置いて先にいい匂いの近くへ行ってしまった。
「ねぇ、ごはん食べるのにお金とかいらないよね?」ちょっと心配になってピュイトの上着を引っ張りながら聞いてみる。
カバンの中には小さな革袋に大銀貨が5枚入っている。必要な時に使いなさいって支度の打ち合わせをした時にじぃじがカバンにしまってくれたお金。でもミアにはそれがどれだけのことができるお金なのか、まだよくわからないでいる。
ピュイトからお金の種類とかは習ったけど、こっちでは物価はその土地土地で随分違うっていうのも習った。
逆にみりあのいた国では同じ物なら、どこでも大体同じ値段で買えるって教えてあげたら目を丸くして驚いてた。
不安な顔をしていたら、ピュイトは少し呆れた顔で「あちらの都合で連れていくのですから、道中にかかる食費や宿代、その他諸々はもちろんあちら持ちですよ?それに、愛し子にお金を払わせるエルフはいないと思います」と言った。
「そうなの?」
「そうなのですよ」
ピュイトはついでに「ちなみに私の分はサーシェル殿持ちです」と涼しい顔で言った。
いつの間にサーシェルさんとそんな約束をしたんだろ。
……苛め、ダメ、絶対。
そんな会話をしていたら「お待たせしました」とグリフェルダさんが呼びにきてくれた。
案内された場所には折り畳みのテーブルと椅子が三脚あった。
ミアとピュイトが座ると、あと一つの椅子にシェファフルトさんが座った。
「さぁ、いただきましょうか。スープは隊員達が作った物ですが、パンは村のパン屋から買ってきた物ですので味の保証ができますぞ」と、ハハハと笑った。
配られたのは木の器に入れられたパンとスープ。
スープはざくざくと大ぶりに切られたキャベツと緑色のお豆。それに丸のままで小ぶりのソーセージが入ってる。
うん、男の人が作ったスープって感じ。
「いただきますっ」
お豆とキャベツを掬ってぱくり。
味はソーセージのお出汁が出ていてほどよい塩味。
ところどころキャベツがくたくたなのとシャキシャキなのがあるのは、「何か具が足りなくないか?」「じゃあキャベツもっと入れとくか?」みたいな感じだったのかも。そうだったら可笑しいな。
「美味しいっ」とシェファフルトさんに伝えると「それはよかった」と笑顔を見せてくれた。
パンをもぐもぐしながら周りを見回せば、隊員の人達の半分が木に凭れたり、地面に直接座りながらごはんを食べている。
あわわ大変。ミアのんびりしてる場合じゃなかった!グリフェルダさんもシェファフルトさんの後ろに立っているだけでまだごはんを食べていない。
「待っててね、ミア急いで食べるから次テーブル使ってね!?」
最後に食べようと取っておいたソーセージを丸ごとお口の中に詰め込んで急いでむぐむぐする。
「っそ、そのような気遣いは無用ですよ!?ゆっくり召し上がってください!」
慌てた様子でグリフェルダさんが止めてくれる。
うぐぐっと飲み込んで「でも、テーブルの方が食べやすいよ?」と言えばシェファフルトさんが「隊員達はああして食べるのに慣れているので大丈夫です。それに愛し子様に席を譲られてしまったら皆、落ち着いて食べられませんな」
「そうなの?」
「そうですな」
「ほら、そんな余計なことを考えていないで。お腹はいっぱいになったのですか?」ピュイトがミアの空になったスープの器を見て言う。
うぅ、見抜かれてる。
「あの、あのね、スープおかわりしてもいい?」グリフェルダさんにそっと空の器を差しだしたら「もちろんです」とぱぁっと花が開くような笑顔を見せてくれた。
すごい、かわいい。
あんなに可愛いのに近衛隊の副隊長さんなのかぁ。
あ、そうか、きっと“副”隊長さんだから秘書さんみたいなお仕事が多いのかも。それなら納得できちゃうな。
空の器を持ったグリフェルダさんが大きなお鍋に近づいていくのを見ていたら、配膳係の人達が「愛し子様が俺達の作ったスープをお気に召してくださったぞーっ!」「おかわりをご所望されたっ!」と大きな声で回りの人達に知らせてる。「なんとっ」「やはり愛し子様は素晴らしいっ」おぉーっとあちこちから歓声が上がってる。
あ、あの喜んでくれるのはいいんだけど、ミアもさ、一応は女の子だからさ、おかわりをそんな大きな声で………。
やっぱりエルフにはデリカシーもプライバシーもないのかも。
ミアがおかわりを食べ終わるのをピュイトとシェファフルトさんは待っててくれた。
「ごちそーさまでしたっ」
「お口に合ったようで何よりでしたな。さすがにデザートまではお出しできないので物足りないかもしれませんが」とシェファフルトさんが空になった器をグリフェルダさんに渡しながら言った。
「デザート、食べる?」
「ん?」
「エルフはみーんな林檎が好きなんでしょ?ミア林檎ならご馳走できるよ?」
椅子の横に置いた林檎の樹さんの葉っぱを撫で撫でして言ってみる。
「え?その、小さな林檎ですか?」
グリフェルダさんはきょとんだ。
「大丈夫!ちゃんと皆にご馳走できるよ!」
 




