表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/210

エルフとわたし#16

シェファフルトさんの健脚のおかげで夕方には隣村へ着けるようだ。


「うぅ、お世話をかけます」

「ははは、何、この程度可愛いものです。途中までは全力で歩いてくれましたし、明日からは馬車の旅です」

「ミア、自分ではもう少し歩けると思ってた。シェファフルトさんはスゴいね、ミアをおんぶしても全然速さが変わらないんだもん」

「これでも近衛隊長。日頃の鍛練の成果ですな」

あ、そうそう疑問に思ってたんだった。

「“このえたい”って何する人なの?」

「近衛隊とは陛下及びそのご家族、それに近しい王族の方々を警護するのが主な仕事ですな」


王族の警護かぁ。

それってニュースでたまに見た大統領とかにくっついてるサングラスした黒い服の人達みたいな仕事だよね。

偉い人は狙われるから、そういう人がいっぱいいるんだって所長さん言ってた!

「わぁ、シェファフルトさんはそれの隊長さんなんだ!スゴいね!」

「ははは、それほどでもある」

あれ?でも何で“このえたい隊長”さんがここにいるの?

「“このえたい”は王族の警護がお仕事………」

脳裏にあの偉そうなヤツの姿が浮かぶ。

「ミアね、いまの話聞かなかったことにするからっ」

「はい?」

「ミアまだアイツに謝ってもらってないからっ、だから今の話は聞かなかったことにするのっ」

謝ってもらってないのに、こっちがペコペコするなんて冗談じゃない。

シェファフルトさんの背中で首をぶんぶん振ってたら、何だかプルプル震えが伝わってくる。

「ふ、ふふ、くくく、」笑いを堪えてる?

「ダメだ我慢できん」シェファフルトさんはそう言うとミアを下ろして「アーハッハッハッ」と大声で笑いだした。

「いや、承知した。私も“近衛隊”の説明などしていない。これでいいのであろう?」と、まだニヤニヤした顔で続ける。

「リデル様にはこちらも少々思うところがあるのでな」


うん、そうこなくっちゃ!


「ミアは何も聞いてない」

「私も何も言っていない」


目と目を合わせてがっちりと握手をする。

夕日が二人を照らして瞳が輝いている。


「はいはい、先を急ぎませんと知りませんよ?」


ピュイトが少し先から呆れたように声をかけてくる。


「ま、待って!」


走って追い付いて、それから村までは頑張って歩いた。




隣村に入る手前でいくつかテントが張ってあって、何人かで作業をしているのが見えた。


「隊長!お帰りなさいませっ」

20代に見えるエルフの男の人が駆け寄ってくる。

ひよこみたいな髪色をしていて、走るとそれがふわんふわんと揺れている。

昔の絵に描かれてる天使の赤ちゃんみたい。

ひよこさんはシェファフルトさんの前へ来るとさっと跪いた。

「只今戻った。異常はないな?」

「はい、リデル様がいつもの癇癪を起こされたぐらいで後は何も」

「そうか」

シェファフルトさんはふーっと大きく息を吐いた。


「…そちらが愛し子様ですか?」

跪いたひよこさんはミアと顔が近い。

灰青の瞳はぱっちりしていてかわいいタイプの男の人だ。ミアをじっと見つめると、「想像以上に美しい少女ですね」と言った。ミアになってから毎日鏡を見る習慣がないから、自分が美少女だって忘れちゃってることが多いのに面と向かって言われたら恥ずかしい。

「そうだ、こちらの少女が愛し子様でミア様と仰る。……そしてこれよりこのミア様が護衛対象の“星”だ」

「では、リデル様は…」とシェファフルトさんを仰ぎ見たひよこさんに「二度は言わん。周知せよ」とシェファフルトさんは上から言葉を被せた。

「はっ」と短く返事をしたひよこさんはミアに「愛し子様を無事にエルフ国までお連れいたします。この隊の副隊長を勤めておりますグリフェルダと申します」と自己紹介してくれた。

「ミアって言います。旅は初めてなのでよろしくお願いします」

お辞儀はしちゃダメだから、ぴょこんと膝を折ってご挨拶した。ピュイトが隣で軽く頷いているからこれで合ってたみたい。

「愛し子様はとてもお行儀がよろしいのですね」とグリフェルダさんは微笑んでくれた。

「愛し子様じゃなくって、ミアって呼んで?」

「では、ミア様と。先日は林檎の差し入れをありがとうございました」

「サーシェルさんからもらった?ミアの林檎美味しかった?」

「ええ、久しぶりの林檎に皆、歓声を上げておりました」

「よかった!」


そういえば、そろそろ夕飯の時間だな。ミアのお腹が少ぉし凹んでる気がする。お昼ごはんはゲーテおばさんがカバンに入れてくれてた、パンにバターと蜂蜜を塗ったのを急いで食べたけど、いっぱい歩いたからな……。

そっとお腹を押さえて鳴っちゃダメっと言い聞かせていると、テントの方からふわーっといい匂いが漂ってきた。

途端にきゅるる……とお腹がごはんを催促しだした。


「これはいけませんな。ミア様は“食いしん坊”でいらっしゃるようなので、早速夕飯にいたしましょう」

シェファフルトさんがニヤニヤしてテントの方へ歩き出す。

「違うよっ!それはカイ兄ちゃんが勝手に言ってるだけでミアは“食いしん坊”なんかじゃないんだよ!?ね?ピュイトっ」

前半はシェファフルトさんの背中に向かって、後半はピュイトに同意を求めたのに、ピュイトまで口元をニヤつかせて「食欲があるのは良いことです」と違うって言ってくれなかった!

それを見ていたグリフェルダさんまでくすくす笑ってる。


グリフェルダさん、ミアは食いしん坊じゃないんだってばーー!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ