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エルフとわたし#15

5日後の早朝、シェファフルトさんが山のおうちへミアを迎えにきた。

「ママ、寝てていいんだよ?」

「何を言うの、ミアとしばらく会えなくなるのに寝てなんていられないわ」パパに支えられながらママはお庭まで出てきてくれた。

ミアがエルフの国へ行くと聞いたママはとても取り乱してしまって、決意したミアの方が苦しくなっちゃうぐらいだった。

「だってね、2年我慢すればそれから先はずっとママといられるんだよ?」そう説得した後も「私が病気になんてならなければ…」とひどく落ち込んでいた。


「ママ、ミアはエルフの国で頑張る。ママは病気を治すのを頑張ってね」

「えぇ、そうね」

「もしかしたらお薬すっごーく苦いかもしれないけど残さないで全部飲むんだからね?」

そう言ったらママは泣き笑いの顔になって何度も頷いた。

我慢できずにママに抱きつく。

ママもぎゅっと抱きしめ返してくれる。

パパもミアの背中からぎゅっとしてくれる。

「いつでも、どこにいても愛してる」

「うん、ミアも。パパとママ愛してる」


「いってきます!」

パパとママを目に焼き付けようと思ったけれど、涙が溢れてしまったらママが気にしちゃうと思って慌てて前を向いた。


「荷物はそれだけかな?」

「うん。あとは村でピュイトと合流するときにもらうことになってるの」

ミアの荷物は首から下げたセラちゃんと林檎の樹さんだけだ。


さっきママ達とお別れする前に「ミアと一緒にエルフの国へ行ってくれる?」とお願いしたら、いつも通りミニ林檎の樹さんになってくれた。

シェファフルトさんは初めて林檎の樹さんが小さくなったのを見たときのパパとママより驚いてた。


「……ありえん」

シェファフルトさんは目が乾いちゃうんじゃないかと思うぐらい瞬きしないで林檎の樹を見つめて、それから、ミアも見た。心なしか顔が強ばっている。

「そんなに見られたら照れちゃうね」と林檎の樹さんに話しかけたら、ざわざわと葉っぱを縦に揺らしたのを見て、顎が外れそうになってた。

今度は口が乾いちゃうよ?


村へ入る手前でじぃじとゲーテおばさん、ピュイトが待ってくれていた。

「ミアちゃん、これに全部入っているからね」ゲーテおばさんが肩から斜めに掛けてくれたのは濃茶の革のカバン。いいカンジにくたっとしてる。

「ありがとう!」

ミアはクリーンが使えるから着替えは一組でいいよ、って言ったらミアでも持てるくらい荷物は少なくなった。

カバンには布で作ったふっくらとした林檎のマスコットがついている。

「カワイイ!」

「カバンはアタシのお古だけどね、ミアちゃんのだってすぐわかるようにしておいたよ」ってゲーテおばさん。

「気をつけて行ってくるんだよ」と腰を屈めてぎゅっとされる。

耳元でそっと「マスコットの中に大銀貨が3枚隠してあるよ。辛くなったらそのお金で手紙を出しな。誰かが必ず迎えに行くからね」と囁かれた。

「うん、ゲーテおばさんありがとう」


じぃじは泣くのを堪えているのか、もうお顔が真っ赤だ。

じぃじにも屈んでもらって抱き締める。

「ミア、頑張ってくる。パパとママのことよろしくね」

「任せておきなさい」

「うん、ありがとう」


「さぁ、行きましょうか」

ピュイトが歩き始めたら

「ミアーーっ!」と大きな声で呼ばれた。振り返るとカイ兄ちゃんが走ってきている。

どうしたのかな?カイ兄ちゃんとのお別れはこの間済ませておいたのに。

エルフの国へ行くって言ったら「母ちゃんの為だもんな……」としばらく黙ってたけど「頑張ってこいよっ!」と応援してくれた。

はぁはぁと息を切らして「ミア、食いしん坊だから途中で腹が減るだろ?」と干し肉の入った包みを渡された。

「待ってるから。オレ、ミアが帰ってくるの待ってるから。ちゃんと2年で帰ってこいよっ」と、また走って行ってしまった。

ミアだってパパとママと2年以上離れるなんて考えたくないよ。

カバンに干し肉をしまって「ミア、そんなに食いしん坊じゃないのにっ」って呟いたら、ゲーテおばさんに「ミアちゃん気になるのはそこなのかい!?」って言われた。

そこじゃなかったらどこなの?


くくくっと笑ったシェファフルトさんに「さて、今度こそ出発します」と言われて歩きだした。

初めて村から出るのが、いきなりこんな長旅になるなんて本当にびっくりだよ。女神様なんでミアをご指名したのかなぁ。


朝陽が初めて歩く道を明るく照らしている。

これから行くエルフの国までの道のりもこんな風に明るければいいな。


「隣の村まではどれくらいかかるの?」

「そうですな、ミア様の速度では日が暮れてしまいますな」

「が、頑張ります」

今こそ鍛えた足腰の出番!


意気込んで歩きだしたのに、お昼を過ぎる頃には何故だかミアはシェファフルトさんの背中におんぶされていた。

林檎の樹さんはピュイトが持っている。


「こんなはずじゃ……」


「「予想の範囲内です」」


うそー、ミアは完全に予想外だったよ?




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