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エルフとわたし#12

「ご存知かと思いますが、医者はとても数が少ない、そして、魔力持ちの医者はさらに少ない。そして奥様が完治されるには1年から2年ほど継続的に治療と投薬が必要です。ですから、それなりに治療費はかかるでしょう」


「そ、そんなに……は、無理で……」

「治療しないとどうなっちゃうの!?」

そんなお金うちにあるわけないっ。

パパは今だって一生懸命働いてくれてるんだもんっ。

「そうですね、今日、明日にどうにかなるわけではありませんが、このまま治療をしないとなると……もって五年ほど……でしょうか……」


え、それって後5年でママは死んじゃうってこと!?

嘘っ!!!!


ゆっくりとパパの方へ顔を向ければ、目を閉じて苦しそうな顔をしている。

どうするか考えているのかな、でもどうしようもないのはミアでもわかる。だけど、そんなのヤダっ!

認めたくないし、諦めたくもない。

目の前が真っ暗になりそうなのを必死で我慢していると


「打つ手はありますよ?」と、先生は涼しい顔で言った。

「えっ!?」

「いやいや、さすがは女神様の愛し子です。このタイミングでのお告げ、正に女神様のご慈悲によるものでしょう」

どういうこと?

「何が言いたいのかミアにはわかんない」

「シェファフルト殿をやりこめたと聞きましたよ?私の治療と薬代を条件にエルフ国へ行くと言えばよろしい」


「そ……それは……」


確かにそうだ。

それを交換条件にすればママは必ず治る?


「娘を差し出すような真似はできませんっ」

テーブルをドンっと叩いてパパは先生を睨み付けてる。

ミアだってパパとママから離れたくない。

けど、けど、ママが死んじゃうなんて……もっとヤダ………。



「……パパ、ミア、エルフの国へ行く」

「何を言ってるんだいっ、そんなのママだって喜ばない!」

「そだね、パパとママは反対だよね、でもねそれしかないよ?ミアはママにもう一度元気になってもらいたい。パパだってママが死んじゃうのイヤでしょう?」

「もちろんっ、それはそうだけどっ」

「なら、決まりだよ?ママの病気が取り返しがつかなくなってからじゃ遅いんだもん」


「えぇ、そうですね、死んでしまっては何もできません」

先生はにこりと笑った。

「だからね、寂しいのも不安なのも後回しだよ?ミアはママに治ってほしい」

パパの手をぎゅっと握りしめて、決意を込めて見つめる。

しばらくミアを見つめ返していたパパだけど、目を閉じてまた苦しそうな顔をした。

「こんなことをさせるために、ミアを女神様から預かった訳ではないのに……」

うん、ちゃんと知ってるよ。

哺乳瓶がないから小さなスプーンで時間をかけてヤギママのお乳を飲ませてくれたこと、夜中に突然大声で泣いちゃった時も、替えたばっかりのおしめにすぐおしっこしちゃった時も、二人とも嫌な顔なんてしないでミアのお世話をしてくれた。

“私の赤ちゃん”って頬擦りしてキスしてくれて抱き締めてくれて。

愛されてるって全身で感じ取れた。

それが本当にうれしくてうれしくてしかたがなかった。

今度はね、ミアが助ける番。


「でもね、行くからにはきちんとした約束がいるよね?」


パパから先生の方へ向き直ると、先生はゆったりと微笑んでいた。


「色々と確認してもいい?」

「おやおや、何なりと」

「先生はエルフのお医者さんだけど普人の治療はしたことあるの?」

エルフの国から帰ってきたらママが手遅れになってたなんて洒落にならない。

「えぇ、もちろん。もう随分前に死別しましたが、私の妻も普人でした。妻の治療はもちろん私がしていましたよ。最後、老衰だけはなんともできませんでしたがね」

「治療が一年から二年なのはどうして?」

「薬の効き方に差があるので、投薬してみないと何とも言えません。あと、魔力で腫れ物を除去しますが、普人の方は魔力に耐性があまりないので一気にはできません。様子見しながらなので、一年から二年と幅をとって伝えました」

「じゃあ、先生に任せたら二年後、ママは必ず治ってる?」

「今日お話したところ以外に不具合がでなければ、ですが、それは約束できるかと」


ママが確実に治るなら文句はない。

後、先生の治療と薬代以外で条件をつけるとしたら何だろう?

腕を組んで目を閉じて考えてみる。


「あぁ、後ですね、治療が終わっても継続的に血を増やしやすくする薬を飲んだ方がいいでしょう。ミア様はエルフの国で薬の作り方も学んでこられるといい」


驚いて目を開けると、先生はパパに向かって「まだ小さいので心配なのはわかりますが、エルフ国は愛し子様を粗略に扱ったりはいたしませんよ。シェファフルト殿と話し合う時は私も同席いたします」と言葉をかけている。


「先生はミアの味方なの?」

エルフの国に連れていきたいだけなら、さっさとママの治療を盾にして有無を言わさず連れて行けばいいのに。

どうして治療後の薬の事まで教えてくれるんだろう……?


「私のかわいい孫がかわいがっている教え子ですからね、予想以上に賢いですし、私もかわいがることにしました」


ん?何の事?

ピンときてないミアを見て、


「初めまして、ピュリンハイドの祖父です」


と、にっこり笑って先生は挨拶した。














ブクマが400こえました!

これはもう“マツケンサンバⅡ”でないと喜びを表現しきれません……!

ですが、あの踊りにはキラキラの着物がなくては……!

今回も踊れず残念です。


ブクマしてくださった皆様、ありがとうございます。

感謝、感謝でございます♪


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