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エルフとわたし#9

「で、あの人達は?」

パパは不思議そうにエルフ達を見てる。

エルフ達は林檎の樹の下で何やら話し合っている様子だ。

「あのね、ミアお耳がぞわぞわして飛び起きたの……そしたら、あの人達が樹に登って勝手に林檎をむしゃむしゃしてて、それで怒って話を聞いたらミアをエルフの国へ連れて行くって言い出したんだけど……」

そこまで言ったらパパの顔が強ばった。

「けど、ミアは行かないってお断りしたの。そしたらあのシェファフルトさんっておじさんが一緒に連れてきているお医者さんにママを診せてくれるって。林檎泥棒は嫌だからそれの代金でいいって言ったの」

「それでさっきのやり取りになったんだね?」

「うん」

「なんでミアをエルフの国に連れて行くかは聞いた?」

「なんかね、女神様のお告げでエルフの国の大変なのをミアが何とかできるって言われたみたい。でも、ミアそんなこと女神様から聞いてないよ?」

「お告げが……。ミア、さっきもらった紙、パパにも見せてくれる?」

「うん、いいよ!」

エプロンのポケットに畳んで入れてある、契約書を取り出して広げて渡す。

「でも、エルフ語だから読めないと思うよ?」

「じゃあ、パパに指差しながら教えて?」

「うん、あのね……」

先に元の文を読んで、付け加えたところと、線を引いて後から書き換えたところもこうなったんだよ、って教えてあげる。

「……で、女神様に二人で誓ったからママはちゃんとお医者さんに診てもらえるよ!」

「ミアは本当にすごいなぁ」

パパは契約書を見て安心したのかにこにこしながら、ミアにすりすりもにもにをした。

「じゃあ、パパもその、シェファフルトさんにご挨拶をしなくちゃね」


「シェファフルトさん、あのね、パパがね挨拶したいって」

林檎の樹の下へ行って、シェファフルトさんの背中へ向かって話しかければ、エルフ達の視線がパパへ集まった。

けど、パパは特に気にした様子もなくにこにことシェファフルトさんに話しかける。

「この度は妻を医者に診せるように取り計らって下さったそうで、ありがとうございます」

「あぁ、いや、何、これしきのこと……」

「いえいえ、さすが女神様を篤く信仰されているエルフというのは、慈悲深く大変立派なのだと感心していたのです」

「ははは、その通り。エルフというのは慈悲深いものなのだ」

「えぇ、本当に。エルフの国へ行かないミアにもここまでよくしていただいて、診察代も女神様より託された林檎ですませて下さるそうで、なんとお礼を言っていいか…」

「う、うむ、それなのだが……」

「本当にありがとうございます」

パパがにっこり笑いかけてるのに、シェファフルトさんは何だか苦い顔だ。


後ろで「親子揃って手玉に取られましたね」「これからどうされるおつもりでしょう」とぼそぼそ話す声が聞こえてくる。

あ、そうそう!

これからといえば……

「ねぇ、シェファフルトさんっお医者さんがここへ来られるのは一週間後でいいのかな?」

往復6日ならそれくらいだよね。

「あぁ、いやそんなにはかからない」

「?」

「ミア様は伝書鳩を見たことがありませんか?」

サーシェルさんが手のひらを上にして胸の前へ出す。

「我々はそれを魔力で作り出すのです。いうなれば、伝言鳥ですか」

小さな光の粒が手のひらに現れて、それが手からはみ出すほどの大きさになると、真っ白な鳩の姿へと変わった。

「鳩になった!」

スゴイ!手品師もびっくりだよ!!

「これに伝言をします。魔力の鳩はすぐ相手まで届くので、医者は4日もあればこの村へ着くでしょう」

そして鳩に向かって「診てもらいたい患者がいるので至急ヴィゼンベルク村まで来られたし」と話しかけた。

鳩は赤い瞳をちかりと光らせると、羽をバサバサと動かしてサーシェルさんの手のひらから羽ばたいて、ミア達の頭の上を2、3周回ると、ぱっと姿を消してしまった。

「消えちゃった!」

「ふふ、今頃はちゃんと相手に伝言を伝えているから大丈夫です」

サーシェルさんがそう言い終わらないうちに、再び鳩が頭上に現れた。

サーシェルさんが手を差し出すと、ちゃんとそこへ止まった。

「すぐに向かいます」と鳩から男の人の声がして、またぱっと消えてしまった。


「すっごーい!それは誰にでも送れるの?」

「残念ながら知ってる人で相手にも魔力がないと届きません」

「とっても遠くても届くの?」

「たくさん魔力を使いますが、その分の魔力さえ込められれば届きますよ」

距離は関係なくて、魔力次第なのか。手紙より速いけど、繰り返し見られるメールより不便かも。

「一回しか聞けないと聞き逃したら大変」

「ふふ、それは大丈夫です」と、またさっきの鳩を作り出すと今度は「先ほどの伝言をもう一度」と言えば「すぐに向かいます」と、また声がした。

おぉー!ミアがパチパチと拍手をするとサーシェルさんは「こんなことで拍手をいただくとは」と照れ笑いをした。

魔法ってやっぱりすごい!

ミアも伝言鳥できるようになりたいっ!

あ、でもミアには魔力を持ってる知り合いも、遠くにいる知り合いもいないから、送る相手がいないや。








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お盆の激務で疲れた心が一気にウキウキ気分になりました。

1~1000まで評価頂いた皆様、本当にありがとうございます!

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