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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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エルフとわたし#8

「な、何故変える必要があるのかな?私が約束を守らないとでも?」


「だって、国の命令でミアを連れにきたんでしょ?だったらお医者さんも国からお給料をもらってるよね?なら、シェファフルトさんが約束してくれても、お医者さんに診察させたからエルフ国に来いって、エルフの国の偉い人が後から言ってくるかもしれないでしょ?だから、国の代表(・・・・)で来てるシェファフルトさんに、エルフ国は見返りを求めないって、ちゃんと書いて欲し……」

そこまで言ったらシェファフルトさんは、拳をダンッとテーブルに叩きつけた。


「えぇい、わかった、私の敗けだっ」


やっぱりそのつもりだったの?


シェファフルトさんは最後の一文の自分の名前のところを“エルフ神聖国”と書き直してくれた。



「これが愛し子というものか……」

両肘をテーブルについて頭を抱えて何かをブツブツ言っている。


愛し子は関係ないんだけどね。


ま、いいや、それより仕上げをしなきゃ。


「はい、最後に日付とサインして!あ、役職も付けてね。そしたらミアもサインするから」


シェファフルトさんは面白くなさそうな顔をしたけど、それでもさらっと書いてくれた。


ミアも頑張ってエルフ語で書いた。


「よし!これで書類は完成だねっ。あとは…」

「…まだ何かあるのか!?」


もちろん、あるよ?


開けっ放しの扉から外を見れば、ムカつくヤツと神父さんはヤギママのもふもふを撫でて喜んでいる。

うん、わかるわかる。ヤギママの毛並み本当にすべすべサラサラほわほわで気持ちいいもん。

でも、ちょっと手を止めてもらわなきゃ。


「おーい、神父さーんっ、ちょっとこっちきてーー!」

扉のところから大きな声で呼んだら、名残惜しそうにヤギママを一撫でしてから「私に何かご用ですか?」と来てくれた。

やっぱりピュイトと同じで神父さんなのかな?

「あのね、神父さんにお願いがあるの」

「なんでしょう?あぁ、愛し子様、私の事はサーシェルとお呼び下さい。教会ではなく神殿に仕えておりますので、神官でございます」

ふーん、よくわかんないけど神父と神官は違うのか。

ならこの人はサーシェル神官ね。

「あのね、ミアはミリアンジェっていうよ。でも、ミアって呼んでね。それでね、今ねシェファフルトさんと大事なお約束をしたからサーシェル神官に立ち会いをしてもらいたくて呼んだの」

「立ち合いを?」


サーシェル神官におうちの中に入ってもらう。

黙ってベッドに腰かけて成り行きを見守ってくれているパパに「パパっ、セラちゃん取って!」とお願いする。

パパ、ママ、待っててね。もうすぐお医者さんに診てもらう約束が、ちゃんとできるからね。


パパに取ってもらったセラちゃんをコトリとテーブルに置くと

「おぉ、素晴らしい、このようなところに女神様がおられるとは」と、サーシェル神官はすぐに跪いたけど

「ま、まさか、書き直した上にさらに女神様に誓わせようというのか!?」

と、シェファフルトさんはわなわなと震えてる。

「ダメなの?」と、聞けば、ぐっと言葉に詰まり「ダ、ダメではないっ……がっ」と、ガックリ肩を落とした。

エルフはみんな女神様を崇拝してるから、女神様の前で誓ったことは必ず守るってピュイト言ってた。


セラちゃん人形の前に三人で跪く。

前にサーシェル神官、ミアとシェファフルトさんは一歩後ろ。

「崇高なる女神セラスティア様の御前にて、ミリアンジェ、シェファフルト近衛隊長、双方の約定の宣誓を致します」

「ミリアンジェ、あなたはこの約定を守りますか?」

「はいっ!守ります!!」

「シェファフルト近衛隊長、あなたはこの約定を守りますか?」

「はい、守ります……」

「女神の信徒サーシェルが見届け、ここに宣誓はなされました」


最後にサーシェル神官が書類の最後にサインをしてくれた。


やった!!

これでママをお医者さんに診せることが確定したよ!!




ママは寝てしまっているから、起こさないように全員庭に出てもらう。

「パパっ!この人達が連れてきてるお医者さんがママのことを診てくれるんだって!」

「うん、見てたよ、ミアはすごいねぇ。でも、何でこの人達がうちに来たのか聞いてもいいかい?」

あ、そうだった!

パパにまだ説明してなかった!

あれ?パパ、すごーく優しいお顔……これって、すごーく怒ってる………?

「あ、あのね……」

「うん?」

「ご、ごめんなさい?」

「なんで“ごめんなさい”か、ちゃんとわかって言ってるかい?」

「えと、えと、心配させちゃったから?」

「そうだね、でもそれだけじゃないよ?ママをお医者さんに診せるなんて大事な事をミア一人で決めてしまったよね?パパにも相談して欲しかったな」

言われて、はっとした。

パパだってミアと同じぐらいママを心配してる。

「……ごめんなさい」

「わかってくれたならいいんだよ」

ぎゅっと抱きしめられて、パパの温もりに張り詰めていた気持ちがふにゃふにゃと弛んだ。






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