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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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エルフとわたし#7

足の痺れに悶えてる人達は放っておいて、ミアは心配してるパパを安心させてあげなくちゃ。


ドアを開けたら、すぐそこにパパとママは立っていて、すぐに抱きしめられた。

「もうっ、心配するでしょう!?何で一人でいいなんて言ったの!」

珍しくママが強い口調でミアを叱る。

「…ごめんなさい」

パパは庭に転がってる人達を見てぎょっとしてる。

「あれはそろそろ治まるから、放っておいていいよ」

「いいのかい?」

「すぐ帰ると思うよ?」


それより、ママの顔色やっぱり今日も悪い。

興奮したのがいけなかったのか、立ち上がろうとして、フラリと倒れかけた。

「危ないっ」

パパが背中を抱き止めてくれたから、ママは辛うじて立っている、

「ママ、ごめんなさい、ミアが心配させちゃったからだよね、すぐベッドへ行こう?朝ごはんまだでしょう?ミア用意するから少し休んだら食べて?」

目眩がするのかおでこを押さえてママはうつむいたまま、パパに支えられてベッドへと向かった。



「ご両親が一緒に行けない理由はあれかな?」

おじさんがいつの間にか復活してミアの後ろに立っていた。

「わかったでしょ?ミアはパパとママから離れたくないし、ママは旅ができるような体じゃないの」

エルフの国はとっても遠いんでしょ?

新幹線も飛行機もないのに、ママを連れて行ける訳ない。

「ふむ、ならば、一つ提案があるのだがね、聞くかね?」

「提案?」

「我々は馬車で旅をしてきた。途中で何もないように、準備万端整えてね。その中には医者も含まれている」

え、お医者さん!?

「一度その者に母親を診せてはどうだろう?」


それが本当なら、すごいチャンスだ。


パパに一度村にお医者さんはいないのか聞いたら、お医者さんは大きめの町に一人いるかどうかなんだって。

そのお医者さんも、お金を払ってもこんな山奥の村までは来てくれないだろうって聞いた。

「そのお医者さんは普人も診られるの?」

「魔力と寿命は違えど、人体の構造自体はそれほど変わらないと聞いたことはあるがな」

それなら、ママの病気もわかるかもしれない。


「……その代わりにミアはエルフの国へ行くの?」

上手い話には裏がある。

オレオレ詐欺に振り込め詐欺に結婚詐欺に悪質リフォーム業者、色んな詐欺が溢れてた世界から来たみりあが警鐘を鳴らす。

エルフの国へ行くと約束しても、一回診察して「はい、治りません」じゃあ、意味がない。

「おや、これは普人に育てられたにしては、予想以上に賢い」

おじさんはハハハと笑うと

「そんなことはしないよ、そうだな、……林檎の代金だと思えばよい」

と、言った。


「お医者さんはどこにいるの?」

「ここから3日ほどの町においてきている。君を連れてすぐエルフ国に戻るつもりだったからね」

じゃあ、行って連れてきてで6日?一週間ぐらいはかかるのか。

「口約束じゃ信用できない」

「これはまた手厳しいな。そうだな、アトラス、紙とペンはあるか?」

「は、はいっ、ございます」

さっきも開けようとした腰のポーチから折り畳んだ紙と小さなペンを取り出して渡してくれる。

「失礼、少しテーブルを借りる」

おうちの中に入ってくると、さらさらと紙に書き付けている。

「これでどうかね?」

そこには


私、シェファフルトは愛し子の母親に、同行させている医師の診察を受けさせることを約束する。

尚、この診察の代金は、愛し子の林檎を先にシェファフルトが受け取っているため、林檎の代金として相殺することとする。

私、シェファフルトはこの診察に対して他の見返りを一切求めないこととする。


と、書かれている。


「どうだね?私もいつまでも林檎泥棒のままは嫌なのでな」

「よく見たいから貸してもらってもいい?」

「どうぞ」

手にとってじっくりと読んでみる。

エルフ語は普段目にしないけど、ちゃんと読めるから焦らない。

契約書は何度も見たことがある。

所長さんはみりあが大人になった時困らないように、大事な書類の見方も教えてくれた。

例えば、みりあが年間に貰ってる予算の書類。何にどれだけ使えるか詳しく説明してくれた。

今こそ習ったことを使う時!

あっちとこっちじゃ、書き方とか違うかもしれないけど、ミアが納得できるようにするためには………

こことここと、ここ。かな。


「直して欲しいところがあるの」

「どこかな?」

「その前に、おじさんの名前は“シェファフルト”さん?」

「これはうっかりしていたな、そうだ、私の名前はシェファフルトという。よろしくな」

「ミア、本当はミリアンジェって名前なの。だから、ここの“愛し子”のところ“ミリアンジェ”に変えて欲しい」

「いいとも」

シェファフルトさんは愛し子に線を引き、“ミリアンジェ”に書き換えてくれた。


「後ね、ここ」

最初の一文を指差す。

「あのね、シェファフルトさんは“ミアをエルフ国に連れて行き隊”のリーダーなんでしょう?なら、役職があるよね?名前の後にそれも入れてほしいの」

「……なぜ入れる必要がある?」

「だって、同じ名前の人がいたら困るでしょ?」

「……確かに」

予算の書類にはちゃんと◯◯市 ■■■市長って電子ハンコが押してあった。

あれはここの市長さんが、ちゃんとこの予算を認めていますよ。って、印なんだって所長さん言ってた。

なら、この書類にもいるよね?

「ねぇ、アトラスさん?シェファフルトさんのエルフ国でのお仕事はなぁに?」

「シェファフルト様は近衛隊、隊長でございますっ」

急に話しかけられてビックリしたのかアトラスさんは少し上擦った声で教えてくれた。

“このえたい”って何だろう?

「じゃあ、ここと、ここにそれを足して?」

ま、役職が分かればいいや。

シェファフルトさんは名前の後に役職を付け加えてくれた。


シェファフルトさんは最後の一文にも書き加えようとした。


「待って!そこは違うのっ!」


「付け加えなくてもいいのかな?」

シェファフルトさんは表情は変わってないけど、なんだか焦っているみたいに見える。

「そこはね、シェファフルトさんの名前じゃなくて、“エルフ神聖国”にして」


そう言ったらシェファフルトさんの下瞼がピクピクと物凄く痙攣しだした。





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