女神セラスティア
光の玉になったみりあちゃんを、そっと雲のソファーに下ろす。
青白く清廉な光を放つ、とても美しい魂。こんなに綺麗な魂が見られるなら、ちょっとめんどくさい魂交換も悪くないと思えるわね。
さーて、この魂に相応しい新しいみりあちゃんを創るわよー。
えーと、両親は決まったから、後のお願いは、かわいがってほしいから今より可愛くなりたい&サラサラストレートの髪。手芸が上手くなりたい。と、お手伝いのできる魔法が使えるようになりたい。だったわねー？
純粋すぎる可愛いお願いに涙が出そうになってしまったわー。
ふと、脳裏にみりあちゃんの前にきた幾人かの地球の魂が思い出される。
一昔前のお願いなんて、「食べる物に困らない生活」や「戦争のない平和な国への転生」だったのに、最近きた魂は「◯○王にオレはなーるっ！」とか「ハーレム♡孕ませ♡拙者の子孫で埋め尽くしてやるでござる。デュフフ……♡」とか、「俺TUEEEE！で！最強！！」とかよくわからないのが多いのよね。
やっぱり急に文化が発展しちゃうと、こっちの方がついていけなくなってしまうわね。地球もついこの間まで私の世界と似たようなものでしたのに。やっぱり私の世界はゆっくりのんびり発展させていきましょう。
あの魂達のお願いはめんどくさくなっちゃったから、さくさくっと叶えてあげましたけど、こちらの世界に馴染んでいるかしらー？
貝族の王は海で元気にしてるかしらー？貝になりたいだなんて少し変わったお願いだったわね。ハーレムさんの子孫繁栄のお願いは沼地のカエルにしておいたから、今頃たくさんのおたまじゃくしに囲まれているわね。杖で最強君は杖術の達人にしておいたけど、どこかで闘ったりしているのかしらねー？
あら、思考が逸れてしまったわー。
今はみりあちゃんに集中しなくてはー。
みりあちゃんには悪いけれど、子供だから上手く説明できないかもしれないと思って、地球での記憶とこちらにきてからの思考をフルオープンで覗かせてもらっていた。
みりあちゃんはいい子だった。いい子すぎるくらいのいい子。みりあちゃんの年齢なら自分の境遇が受け入れ難くてひねくれてしまってもおかしくないのに、施設の中で将来の事を考えながら、周りの大人を観察しておとなしく過ごしているような子供だった。
こちらの世界からは聖獣クラスの魂との交換だったから、あちらはどんな魂なのかと思えば只の人間の魂。
だけど、傷付いてはいても純粋で本来は魂を濁らせるはずの欲望でさえも澄んだ色をしていた。
“愛されたい”それだけがあの子の心からのお願いだった。
私の世界では両親のもとで望んだように過ごせればいいわね。
とってもいい子だったから少しサービスしてあげましょー。
えぇと具体的には容姿端麗で、手先が器用でってことね？それでもって、魔力を豊富にすれば、お手伝いも大丈夫。あぁ、魔力が豊富なら創造も付けてあげられるわ。そしたらこっちにはない手芸の材料も手に入れられるわねー。どうしようかしらドワーフなら手先が器用だけれど、容姿端麗ではないわね、あれはあれでかわいらしい種族だけれども。それとも人族に加護をたくさんつける？何かいい種族あったかしらー？
いっそ、みりあ族とか創った方が早いかしら？
ソファーに置いたみりあちゃんの魂を見つめて考える。そういえば、アップルパイ美味しそうに食べてくれてたわー。記憶を覗いて好きなのがわかったから出しておいて正解だったわー。
みりあちゃんの微笑ましい様子を思い出していて閃いた。
あるじゃないのー、ぴったりな種族！
容姿端麗、手先も器用。魔力も豊富！
あの種族の魂を扱ったのはもうずいぶん前だから、すっかり忘れてしまっていたわー。
うんうん。あれなら、ご両親にお世話になる手土産にあれを持たせればいいし、前にあの種族に持たせた分は大分古くなってるはずだから丁度いいわー！
そうと決まれば、みりあちゃんファイルに必要事項をーー念写！
はい、できあがりー。
これで当面の仕事はなくなったわね。次は300年後だったかしら？しばらくはのんびりして過ごせるわー。
あとはお告げをするだけねー。
女神らしくしなくてはー。
じゃあね、みりあちゃん、私の世界でたくさん愛されて幸せになってね。
次話ようやく異世界です。
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うれしすぎて身悶えしてしまいました。
