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ウィゼンベルク村とわたし#42

「よし、それじゃあそろそろ始めようか」

少しの休憩を取った後、パパが皆に声をかけた。


「よっしゃやるか!」「持ち場につけよー」「まず梯子持ってこいっ」「葉っぱと実は別けて入れとくれ」

村の人たちはバラバラになってそれぞれ木の下へ集まっていく。

「その木は去年の虫食いであまり実がついてないから、今年もあまり葉っぱを取らないで」

「そっちのは枝が細いから一番軽い子にしてくれ」

パパが村の人にキビキビと指示を出している。


あちこちの木にかけられた梯子に、次々と子供が登っていく。梯子はちゃんと下を大人が支えてるから安定してる。

するりと木の枝に乗り移ると、枝をゆさゆさと揺らし始めた。


真っ赤な葉っぱがはらはらと舞い降りる。

南天のような小さな実がパラパラと雨のような音を立てて地面へ落ちてくる。


それをおばちゃんやお姉さん達が地面にかがみこんで、せっせと拾い集めていく。


大人の男の人は木から距離を取って外を向いて立っているだけだ。

「おちょこのひと、ひろわない?」

やっぱり拾わずにヤギに水をあげていたダズさんに聞けば

「あぁ、男は猪や熊を警戒してんだ。全員下向いてたら危ねぇからな。イオと犬がきてるのもその為だ」


なるほどー。

子供は身軽だから葉っぱと実を落とす係で、女の人が拾う係。男の人は見張りなんだ。

イオさんは弓に矢をつがえたまま、皆より外側を油断なく歩いている。

犬達もちゃんとイオさんの横へ着いていってる。

ミアに突進してきた時と顔つきが違う。

さっきはあんなだったのに、やればできるんじゃん。


ん?

もしかして……

「やぎまま、わんわんのいいとこみしぇたかった?」

「メエェ」こくこくと首を振る。

ダメな時にちゃんと叱るだけじゃなくて、いい時の名誉挽回までフォローしてくれるの?

ヤギママすごすぎる………。

“ヤギママ流子育て”っていう本でも出せるんじゃない?



ゆさゆさと枝を揺らしている子供達の中にはアナお姉ちゃん達もいる。

「これ、おもしろいわね!」

アナお姉ちゃんはノリノリで次々と枝を移ってはらはら、パラパラと葉っぱと実を落としていく。

隣の木にいたベスお姉ちゃんは「ちょっと慣れてきたわ」と、慎重に枝を掴んでいる。

反対側の隣に登っているエミーナお姉ちゃんは「私は怖いわ」とへっぴり腰だ。

「怖いなら無理せず下りてきなっ!他の子にやらせるよ!下で拾う方へまわっとくれ」とおばちゃんに言われてほっとしている。


「みあもひろう!」

木登りは無理でも拾う方ならできるよ!

ヤギママはそっと座ってミアが下りやすい様にしてくれた。

「葉っぱと実とどっちがいいんだい?」

井戸端会議にいたおばちゃんが袋と小さい籠を見せてくれる。

んと、ミアの手なら実の方かな。

「み!」

そういうと籠の方を渡してくれた。


地面に落ちている実を一粒ずつ摘まんで拾う。

南天みたいに小さくて数が多いから大変だ。

村の皆で協力しないといけない理由がわかった。

ぴかりと光る真っ赤な粒をどんどん籠に入れていく。

だんだん籠の中がいっぱいになっていくのが楽しい。


ある程度たまったら葉っぱも実も大きな袋へと詰め替える。

その袋を左右へ上手にバランスを取りながらヤギの背中へ乗せてくくりつける。

「とりあえず、こんだけ先に持ってくわ」

三匹のヤギはダズさんともう一人男の人に連れられて一度ミアのおうちまで行くらしい。

「みあもいく」

ママとじぃじに、拾うお手伝いしたよ。ってお話したい!

「帰んのか?なら、カッツェにいいかどうか聞いてきてやるよ」

ダズさんはパパに話しに行ってくれた。


「おうちに戻るならもうこっちにはこないで、そのままおうちにいるんだよ?」

パパがミアを抱っこしてすりすりしながら言った。

ミアが着いてくるのは予定になかったもんね。パパがお仕事してるのも見れたしそれでいいよ。

「わかっちゃ!」

ヤギママに乗せてもらう。

「やぎまま、おうちかえろ?」

「メェェ」

「じゃあ、ダズ、荷物とミアを頼んだよ」

「あぁ、任せとけって」


3匹のヤギとヤギママとミア、それにダズさんとおじさんで山を下りることになった。


先頭をダズさん、その後にヤギが着いて行く。その後ろにミアとヤギママ。どこかのおじさんはミア達の半歩後ろを歩いてる。

ガランカランとダズさんの持つ大きな鈴が音を立てている。

行きはなかったけど、今は少人数だから熊避けなんだって。

急な下り坂は少し怖くってヤギママのもふもふをしっかり握った。

おじさんはミアが落ちるんじゃないかとハラハラしながら手を出したり引っ込めたりしている。ヤギママはそんなおじさんがおかしいのか「メェェ」と歯を出して笑ってる。







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