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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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72/210

ウィゼンベルク村とわたし#41

村の皆は荷車から下ろした荷物を、それぞれ手分けして運んでいる。

ぞろぞろと坂道を行列が下りていく。

ヤギ達は最後尾を着いていくみたい。


ヤギママの上からぶんぶんと手を振って、さて、おうちに戻ろうとしたら

あれ?

なんでヤギママお庭から出ようとしてるの?

しれっと他のヤギに着いて行こうとしてるよ!?

「やぎまま、みあたち、おるしゅばんよー?おうちもどってー」

って言っても、とことこと進んで戻ってくれない。


「あらあら、ダメよ?」って、ママがヤギママを止めようとしてくれるけど、止まる気はないみたい。

「ミアだけ下ろすがいい」って、じぃじがミアをだっこしようとするけれど、ヤギママはすいっ、すいっと右へ左へ巧みに避けてじぃじの腕を回避する。

「このっヤギめっ」

「どうしましょう」

ママがおろおろしていたら、先頭を歩いていたパパが後ろへ退がってきた。

「皆で着いてきて、どうしたんだい?」

「やぎまま、とまっちぇくれないのー」


「えっ!?」

パパもどうにかしてヤギママをおうちの方へ戻らせようとするけれど、ヤギママは知らんぷりでとことこと皆の後を着いて行く。

とうとうおうちの前の坂を下りきって、山道へ入るところまで来てしまった。

ヤギママの背中から飛び降りなきゃダメかな?なんて考えていたら、ダスさんが「ヤギと一緒なら、オレが見ててやるよ」って言ってくれた。

「悪い、助かるよ。いつもはよく言うことをきくヤギなんだけど、どうしたのかな?」


パパはダズさんにお礼を言ってるけど、じぃじがヤギママにかわされてるのを見て、後ろ向きでこっそり笑ってたのミア知ってるよ?

ダズさんは笑い上戸だよ、多分。


「ダズしっかりミアを見ておけ」

「任せとけって」


「まぁま、じぃじ、いってきましゅ」

山道へ入るところでバイバイして皆の後ろを着いていく。ヤギママは人が一人か二人しか通れないようなゴツゴツした急な山道でも、足取り軽くミアを運んでいく。


パパは毎日こんな道を登って山の見回りをしてるんだ。

すごい。


先を行く村の人達も特にしんどそうな人はいない。皆すいすいと登っていく。

………ミアやっぱり足腰鍛えないとダメみたい。


頭の上にひらひらと落ち葉が降ってきた。ついこの間まで黄色が多かった葉も、今は紅いのが多い。

いつの間にか山は秋が深くなっていた。

落ちてきた葉っぱを指で摘まんでくるくる回して遊んでいたら、ダズさんが話しかけてきた。

「ミア、上手にヤギに乗るんだなぁ」

「じょーずはみあじゃなくて、やぎままよ?」

それを聞いたヤギママは鼻息をふぅんと吐いて、得意気にこちらを振り返った。

「めぇめぇめぇ~」

まるで「わかってるじゃないの~」と言っているようだ。

「しっかし、まぁ、お前のとこのヤギは本当に真っ白だな」

ダズさんは感心した様子でヤギママの背中を撫でて毛並みを確かめてる。

「おまけにこんなに柔らかいし、どうなってんだろな?やっぱこの間見た“クリーン”とやらのおかげなのか?」

「しゃあ?みあ、きれーになぁーれ!ってしゅるだけよ?」

「なぁ、冬の間は村長ん家にいるんだろ?そしたらよ、またうちのヤギ達に“クリーン”してくれねぇか?」

期待を込めた眼差しでダズさんはミアを見る。


「……みあね、ちーじゅしゅき」

「あ?」

「また、ちーじゅ、くれるなら“くりーん”しゅる」

炙ってとろーりとなったチーズを思い出してよだれが出そう。


交換条件を聞いたダズさんは、ぶはっと吹き出した。

「おーいいぞ、チーズならうちでおふくろが作ってるからな!ちっこいのにしっかりしてんな!さすがカッツェの娘だわ!」となかなか笑いが治まらない。

つられたのか他のヤギ達も「メメェ」「メェメ」「メェー」と賑やかに鳴いた。

「こないだ見た時よりも肉がついたみたいだし、チーズもたっくさん食って大きくなれ」

と、わしわし頭を撫でられた。

ミア、いろんな人に心配されてたみたい。


ダズさんとおしゃべりしながら、どんどんと山道を進む。

ダズさんが連れてきたヤギ達は荷物をおうちまで運ぶために連れてきたんだって。

ミアのおうちまで運んだら、荷車に積み替えるらしい。

確かにこんな山道、荷車は絶対通れない。

ヤギママもだけど、他のヤギ達もひょこひょこと上手に山道を登っていく。

「がんばっちぇね」

ヤギママの首を撫でなでしながら、他のヤギにも応援の声をかけた。


「もうすぐ着くぞ」

道が緩やかになったところでダズさんが声をかけてきた。

「ミアは初めてだろ?ビックリするぞ?」


視界が開けて、平らな場所に出たようだ。


「うわぁ…!」


そこには燃え上がっているかのように真っ赤な木々があった。

さわりと風が吹くと真っ赤な色がちらちらと落ちてくる。真っ青な空との対比がとても美しい。


「きれぇ」

「ビックリしただろ?毎年ここでこの木の葉と実を取るんだ」


よく見ると真っ赤な葉っぱの間のあちらこちらに、これまた真っ赤な実が見える。同じ赤だからよく見ないと気がつかない。


さすがに村の人も少し休憩してから作業に取りかかるみたい。

水を飲んだり、持ってきた物を下ろして休んでいる。



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