双子の女神#6
二つ目のアップルパイを堪能し終えたらセラスティア様から声がかかった。
「んーちょっとみりあちゃんに確認しておきたいことができたわー。」
ーーなんですか?
「みりあちゃんは産んでくれたお母さんに育てられるのではないと嫌かしらー? 今調べてみたらみりあちゃんと相性の良い夫婦がいるのだけれど、奥さんは一年前流産してもう赤ちゃんをお腹に授けるのは無理そうなのよねー」
ーー養子になるということ?
「みりあちゃんを女神の愛し子として私がお告げをして預かってもらう、という感じね。大事に育ててくれるのは間違いないわー」
ーーなら、大丈夫。そこの夫婦の子供になります。
「いいのかしらー?次の候補の夫婦のところでもいいのよー?」
ーーせっかく選んでもらったし。その代わり、育ててくれてありがとう、って思いたいから、できればみりあとしての記憶はそのままにしてくれるとうれしいです。
実のお母さんという存在にも、もちろん憧れはあるけれど、実際に私は捨てられてしまったし、施設にいて里親や養子縁組をして幸せになった子供がたくさんいるのも知っている。
12才で家出して施設に保護されたヤンキーをしていたゆかりお姉さんは、施設の相談員をしている弁護士さんのおうちに養子縁組をした。猛勉強をして自分も弁護士になるって頑張ってた。お正月、施設にお父さんと挨拶に来ていた時「司法試験に合格したらゆかりは一生うちの事務所でタダ働きだな!」「さてはそれが目的でアタシを引き取ったんだな!?」って、全然本気じゃないってわかる軽口を叩きながら、お互いを温かい目で見ていた。私もあんなふうになりたいって思ってた。でも何回かチャンスはあったけれど、里親も養子先もなかったけれど。
セラスティア様は半分笑顔、半分悲しい顔になった。
……記憶を残すのは無理なのかな?
「受け入れてくれてありがとう。記憶は残せるわー。では、あとのお願いは私に任せてくれるかしらー?色々調整しておくわねー。」
ーーはい。お願いします!
「あら、そうそうー。最後に一つ。名前はどうする?お告げをするからみりあちゃんの好きな名前にできるわよー?」
名前かぁ…そういえば、私の名字の〈安西〉は、その時の市長さんの名前をつけてもらったんだっけ。保護されて色んな大人の人に「お名前は?」って聞かれたらしいけど、「みぃりあ、ちゃんしゃい」としか言えなかったらしい。死んで地球にはもういないから、私の事を親が探しにくるなんて少ない可能性ももうなくなったし、今の名前にそんなに拘りはないけど、でも、あっちの世界にどんな名前があるかも分からない。
ーーそれもお任せで。違和感がなければ何でもいいです。
「はい、お任せねー。大丈夫、私名前考えるの得意なのよー。任せて任せてー。」
胸の前で小さなガッツポーズをしてセラスティア様は引き受けてくれた。
「じゃあ、みりあちゃんの転生手続きをこれから始めまーす。」
セラスティア様は、さっきのファイルとペンを差し出した。
「ここのね、“私はこの転生に同意します”と、書いてあるところの前の□にチェックを入れてくれる?そしたら、その下のところに“安西みりあ”ってサインをお願い」
言われた通りにサインをしたら、私の体がまた青白く光ってる。今度はどんどん光が強くなってるみたい。あれって気がついた時には、セラスティア様の瞳に映る私は光の玉になっていた。
「さぁ、これで次に目が覚めた時には新しいあなたよー」
今度は心構えができるから、心臓から口…じゃなかった。口から心臓がでるほどびっくりしなくてすむかな。
「地球には面白い言葉があるのね、どちらになってもホラーじゃないかしらー?」
クスクス笑いながらセラスティア様は言う。
あれ? 私、今、伝えようと思って…た……?
みりあとしての記憶はそこまでだった。
すみません、ゆかりお姉さんのエピソードを少しだけ変更しました。後から、ゆかりお姉さんが弁護士さんになるのにはまだ若すぎることに気がつきました。
司法試験、そんな簡単に受かるものじゃないですよね。
勢いのまま書き進めていますので、今後もこんなことがあるとは思いますが、ご了承下さいませ。




