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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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ウィゼンベルク村とわたし#37

いつの間にか雨がしとしと降っていた。

外はもう真っ暗だけど、食堂は蝋燭が灯されていて黄色い光がテーブルを照らしている。

テーブルにはもうお皿が並べられていて、温かいスープが湯気を立てている。パパはもう席に着いていた。


家族団欒。


そんな言葉が頭に浮かぶ。

ママがカトラリーを並べたり、お水のコップを配ったりしている。

じぃじ、ゲーテおばさん、パパ、ママ、ミア。一人一人がこの家族団欒を形作っている。

ミアもその中の一人だということがたまらなくうれしい。


わたしの家族だ。

わたしの家族なんだ。



ほのかに漂っていたガーリックの香りが強くなる。

食欲をそそる匂いにお耳とお鼻がぴくぴくしちゃう。

ゲーテおばさんがお皿に盛ったガーリックトーストを持って食堂へ入ってくる。

「さ、待たせたね、それじゃいただこうかね」


「いたーきましゅ!」

夕飯はじぃじのお膝の上。

お昼はパパだったから、今度はじぃじの番なんだって。パパが何だかジト目でミアを見てくるけど、そんなことよりじぃじが、ふーふーしてくれたスープがミアは気になる。

骨付きのお肉はもう解されていて、細かくなったお肉がスープのところどころに入っている。薄い黄色のスープに浮かぶ濃い黄色の油が蝋燭の光でキラキラしている。山雉っておばさん言ってたけど、それの油かな?

ぱくっとスプーンを頬張る。

「おいふぃっ!」

お野菜の甘味もあるけど、これはやっぱり骨かな?骨から出汁が出てるんだよね?塩だけじゃない、旨味。

山雉は美味しい。

ミアまたこっちのこと覚えた!


じぃじもゆっくりと一つ頷いた。

「うむ、美味いな。あの悪たれ坊主も一端の猟師になりおったな」

「あくたれぼーじゅ?」

「イオのことだよ」

笑いながらパパが教えてくれる。

「村の肉屋に山で捕れた獲物を卸すのはイオの役目だからね」

「やくめ?」

「うーん、ミアにわかるかな?山は村の皆の物だからね、イオが優先的……、あー、皆よりたくさん捕っていいですよ。っていう代わりに、イオはお肉屋さんに決められた数を持ってくるんだ。そしたら皆もお肉が食べられるだろう?」

「おにきゅ、みんなしゅき!」

「えぇミアも好きよね」

パパの話を聞きながらもスープをもぐもぐするのを止めないミアを見てママが笑ってる。

だって美味しいんだもん。


じぃじがガーリックトーストをお口に近づけてくれる。

「みあねーぱしぇり、ちぎって、まぜまぜとぬりぬりした!」

パパとじぃじにお手伝いの報告!

ミアだって家族の役に立てるよ!


「よくお手伝いできてえらいよねぇ。これなら、あたしも安心して兄さんを任せておけるよ」

え?任せるってどういうこと???

みんなをキョロキョロ見回すとママが教えてくれた。

「おばさまのおうちにね、赤ちゃんが産まれるんですって。それで冬の間、お嫁さんのお手伝いに帰ってきて欲しいそうなのよ。それで冬の間は私たちがこちらで住むことになったの」


お話ってこれのこと?


「じぃじのおうち?いっちょ?」

「うむ。染料の実の収穫が終わったらこちらへ来なさい」

ガーリックトーストをもう一枚ミアのお口に近づけながら、じぃじが頷く。

最後の方はママに向けて言ったみたい。

「本当に助かったよ、なんせ兄さんは家事なんて一ッつもできないときてるからさ。うちの嫁さんだって上の子供が3人もいるんじゃ、赤ん坊の世話なんてできる訳ないし、マリッサがきてくれなきゃどうなってたことか……」

やれやれといったカンジでゲーテおばさんがじぃじを見るけれど、じぃじはわかってるくせに目を合わせようとしない。

じぃじはゲーテおばさんに弱いからね。


「あかちゃ、みあもみたい!」

「あぁ、無事に産まれたらぜひ見に来とくれ。そうさね、すぐには無理だから春になる前ぐらいかねぇ?」

「たのちみ!」

それから皆で産まれてくる赤ちゃんの事を話した。

ここでのお産は日本に比べてもっともっと命懸け。

ママの赤ちゃんは産声をあげることなく女神様の元へ召されてしまったけれど、赤ちゃんだけじゃなく、お母さんも出産で命を落とすことも珍しくないんだって。

「まぁ、四人目だし、大丈夫だとは思うんだけどねぇ、こればっかりはお産が始まってみないとわからないからねぇ」

「えぇ、本当に」

ママがしみじみと言う。

ママの赤ちゃんのこと思い出してるのかな?

急にもやもやした気持ちが溢れてくる。

じぃじの膝からするりと下りてママのお膝にしがみつきに行く。

「あら、どうしたの?」って抱き上げてお膝に乗せてくれる。

ママの胸に顔をぐりぐり擦り付ける。


「他所の赤ちゃんの事ばっかり話してたから、ヤキモチかねぇ?」

ゲーテおばさんはからから笑う。

ヤキモチだけど相手が違う。

「ふふ、ママの一番はミアよ?だから他所の赤ちゃんにヤキモチ妬かなくて大丈夫よ?」そう言ってもらえて、ようやくきゅうっとしたままだった心臓が緩んだ。




「きょーもまぁまとねんねしゅる」

パパとじぃじがショックを受けてるけど、今日は絶対ママがいい。


「ほらほら、子供なんてもんは母親が一番に決まってるんだよ、いいかげんにおし」ゲーテおばさんに追いたてられて、じぃじは自分のお部屋に、パパは一人でベッドへ入った。


ママにぴとっと、くっついて眠る。

「まぁま、みあ、まぁまだいしゅき」

「ママもミア大好きよ」

ちゅっとほっぺにキスしてもらって目を閉じる。


ミアのママになってくれてうれしい。

ありがとうママ。
















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