ウィゼンベルク村とわたし#36
「おや、おかえり」
じぃじのおうちに帰ると、ゲーテおばさんが夕飯の支度をしていた。
「手伝いますね」
「みあも!」
「じゃあ、お願いしようかねぇ」
今から山のおうちに帰るには暗くなっちゃうから、もう一つじぃじのおうちにお泊まりすることになっていた。
ミア達も食べるんだもん、お手伝いはしっかりしなくっちゃ!
キッチンのテーブルに並べられたお野菜達に「くりーん!」
「ミアちゃんがいると水仕事が減って楽チンだねぇ」って誉められる。
えへへ。
じゃがいもに人参に玉ねぎにパセリ。
パセリ以外はカレーの材料みたい。
「みあのおてちゅだい、おわり?」って聞いたら「なら、パセリをお願いしようかねぇ」と木でできたボウルと2、3本が束になったパセリを渡された。
「こうやって、茎と葉っぱを分けてくれる?」とママが見本を見せてくれる。
手でぶちぶちと千切れるからミアにもできるよ!
もしゃもしゃとしている葉っぱを千切ってボウルへ入れていく。パセリの青臭い匂いがプンっとしてくる。茎と葉っぱがキレイに分かれるように丁寧にね。ママ達はお野菜を切っている。
「できちゃ!」
葉っぱが入ったボウルをゲーテおばさんに渡すと「おや、早いね。でも先に茎の方をくれるかい?」と笑って手を差し出された。
「くき、たべりゅ?」
「あはは、食べられないことはないだろうけどね、これは匂い消しだね」
と、束ねたパセリの茎をくるっと結んでお鍋の中へ入れた。
大きな鉄のお鍋。
パセリの茎を入れた後、切った野菜をごろごろ入れる。
「さてと」と、ゲーテおばさんが手提げ籠から大きな葉っぱにくるまれた物を取り出した。
「今日は肉屋にいい山雉があったんだよ」と、包みを開く。
骨付きのモモ肉の部分が2つ。みりあのイメージではクリスマスに照り焼きにされてて骨のところに持つためにアルミホイルが巻いてあるお肉。
ゲーテおばさんはお肉の部分に金属の串をブスブスと刺して、塩を揉みこんでからお鍋へ入れた。
その後はお水を水差しからとぷとぷと注ぐ。
イオさんのところにあったのと同じようなコンロにお鍋を置いた。イオさんのおうちのよりじぃじのおうちの方が大きい。イオさんちのはお鍋が2つ置けたけど、じぃじのおうちのはお鍋が4つ置けそうだ。
もう火は付いていたようで、真ん中の段に細い薪を数本放り込んで扉を閉めた。扉を閉めてもお花の形になっている空気を取り込むための小窓から火の勢いがよくなったのがわかる。ゲーテおばさんは小窓を覗き込むと「これでよしっ」と言った。
いつの間にかパセリの葉っぱの方はママが微塵切りにしていた。切ったパセリをボウルに戻して柔らかくしたバターをそこへ入れている。ミアが見ているのに気付いたママが「まぜまぜする?」と聞いてくれた。
もちろん「しゅる!」
スプーンでバターとパセリをまぜまぜする。途中でゲーテおばさんがニンニクの磨り下ろしも入れた。
ママがパンを薄切りにしてる。
「がーりっくとーしゅと?」
「あら、ミアよくわかったわね」
「あれま、かしこいねぇ」
えへへ、二人に誉められた。
薄切りパンにぬりぬりするのも手伝ってオーブン用の鉄板に並べた。
後はスープが煮えたら軽く焼くだけ。
夕飯が楽しみでお耳をピコピコさせていたら、キッチンにじぃじがやってきた。
あれぇ?まだ美味しい匂いはしてないよ?と思ったら、無言でミアを掬い上げた。そのままキッチンから出てしまう。
居間の椅子にそのまま座るとミアの頭に自分のお髭の顎を乗せて、ほっぺや顎の下を少しかさついた手でさわさわすりすりしてる。じぃじのお顔は後ろにあるから見られないけど、何だかご機嫌?
ご機嫌なのはいいけれど、毎回無言で連れ去られるのはビックリしちゃう。
落ちないようにじぃじの服を掴んで頑張って身を捩る。
ぐるっと回ってじぃじと向かい合うように座ったら、ぎゅうっと抱きついた。
じぃじはちょっとピクッとしたけど、そのままにしてくれて背中を撫でてくれている。
「じぃじ、だっこしゅるときおちえて」と言えば「うむ」としか返事をしない。そういえば、ミアまだお名前呼ばれたことなかった気がする。認めてくれたのはうれしいけど、ずっと“孫娘”呼びはおかしいよね。
「みあ、みあよ?じぃじも“みあ”ってよんで?」と、必殺のきゅるるんお目目で呼んで?と訴えかける。
「………ミア」
「あいっ!」
呼んでくれたので元気よく返事をする。
「ミア」
「じぃじ」
「ミア」
「じぃじ」
向かい合わせに座ったのでミアはじぃじのお髭を両手でさわさわする。硬そうで柔らかい?髪の毛とは少し違う。
じぃじが背中を押さえててくれるから、遠慮なく両手が使える。
「じぃじ、おひげ、いっぱーい」
「うむ」
特に嫌がってはいないみたいだから、ほっぺでもすりすりする。
「じぃじ」
「ミア」
ふふ、じぃじお名前呼んでくれるようになった。うれしい。
それからじぃじといっぱいお話した。
ミアは今日知ったばかりの“ペペパ”をじぃじにも教えてあげた。
「まもにょ、はぐんだって!だかりゃかみたかいのよ」
「うむ、紙は高いな」
「じぃじのおうち、かきかきするはっぱありゅ?」
「裏にあるから明日取ってやろう」と言ってくれた。
そのうちキッチンから、ふわりといい匂い。スープが出来上がったかな?お耳もお鼻もぴくぴくしちゃう。
「うむ、夕飯の時間じゃな」
じぃじはミアを抱っこして食堂へ移動した。




