ウィゼンベルク村とわたし#33
右手はパパ、左手はママに繋いでもらって教会までの道を行く。時々すれ違う村の人がミア達を見て微笑んでる。
あ、あっちから来る子もママと手を繋いでもらってる。前は見ないようにしてたけどもう大丈夫、全然羨ましくなんてない。
ふふふ、うれしいな。
「ねぇ、ミア、ミアは教会についたら神父様と二人でも大丈夫?」ってパパが聞いてくる。ママが「えっ?」って驚いてる。
「パパとじぃじと大事なお話があるんだ。話が終わったら迎えに来るから」
「何のお話なの?」
「戻ってうちで話すよ」
よっぽど大事なお話なのかな?
ミアもピュイトとお話するならパパとママはいない方が安心しておしゃべりできるかも。
「うん、いーよ?みあ、きょーかいでまっちぇるよ!」
教会まで来ると、パパはこの間の入り口じゃなく裏手の小さな扉をノックした。しばらくして出てきたピュイトはミアを見つけると満面の笑みになった。
「愛し子よ、待っていましたよ」
美形の笑顔の破壊力がスゴい。幻だけど後光が見える。思わず目を瞑りそうになっちゃった。
ミアが後光にたじろいでいる間にパパが後から迎えに来る事を説明してる。
「えぇ、かまいませんよ。女神様の話を聞いて記録をとりたいので少々時間をいただきたいと思っていたのです」と了承された。
パパとママとバイバイして中に入れてもらう。表の教会とは違ってこっちは普通のおうちっぽい。
「こちらへ」と案内されたのは小さな部屋。書斎も兼ねた寝室?棚に本が並べてあって、窓際の机には灰色の紙が山のように積んである。飾りっけのない部屋だ。
「なんにもにゃい」
「神父は清貧が基本なのですよ」と返された。
「ここには子供用の椅子がないので……」と、ベッドへ座るように促されたので、靴を脱いでよじ登ってちょこんと正座をした。
「見慣れない座りかたですが、それは元の世界の座りかたですか?」
「うん、ちょーよ。でんとーてきな、いすがないときのきほんのすわりかちゃ。だいじなときや、かしこまっちゃりしゅるときにもこうやってすわるの」
「そうですか。ですが、かしこまる必要はないので普通に座って大丈夫ですよ」
足を崩していいよ、ってお許しが出たので遠慮なく足を楽にした。
「さて、色々準備をしなくては……」と呟いているピュイトの視線はどうもミアのお耳を見ている気がする。
「おばしゃんからぴゅいとがばたーんしちゃってきいた」
そしたら急に耳から視線を外して狼狽えた。
「な、何でもないのです、ただびっくりしてしまって……」
「えるふのおみみがどーかしたのか、おばしゃんきにしてちゃ」
「そ、それは、あれです、エルフにとって長い耳は他種族への誇りといいますか、自慢するものなのです。それをそんな乱暴をされたとは聞いたことがなかったので……」
ふーん、お耳は自慢するものなのか。ミアは何で勝手にぴこぴこするのか気になるぐらいだけどね!
「しんぱいしてくれちゃの?」
「……ええ、とても」
一度外した視線をまたお耳に戻したピュイトのお顔は照れているのか少し赤い。かわいい。普通にしている時は美形だけど全然かわいいなんて思わないのに不思議。ミアのちっちゃい心臓がきゅんってした。
「ぉ、お、おみみもうじぇんじぇんへーきだよっ!?」
丁度目の前にあったピュイトの手を取ってお耳を触らせる。「ねっ!?だいじょーぶでしょ!?」
瞬間、そう“瞬間”ってこういうこと。そんなスピードでバッっと手を引き抜いたピュイトは「な、ななな何て事をするんですっ!?」と、ぷるぷる震えながら、引き抜いた手を反対の手で押さえながら小さく叫んだ。
顔が真っ赤。
「ふぇ!?」
どーしたの?ミア何か悪いことした???
きょとんとしたミアを見て、“わかってない”と思ったのか、ピュイトは「あぁ、そうですね、あなたはエルフを知らないのでした」と、大きな深呼吸をしてから椅子に座った。
ミアと向かい合うように座ったピュイトは言いづらそうに視線をあちこちにさ迷わせながら「前のあなたは確か10才でしたか……わかるかどうかわかりませんが、その、…エルフは家族以外に耳を触らせることはありません」
「かじょくならいーの?」
「あ……いえ、……家族でも子供の時……だけです。……耳を触るのは、その、成長した……男女、だけ、といいますか………」
言いながらまた段々と顔が赤くなってしまってる。
えと、それは、あれ、みりあの世界じゃキスみたいなものかな?
小さい時は父親とかにほっぺにちゅっとかするけど、大きくなったらしなくなるもんね。
……じゃあ、ミアいきなりピュイトのほっぺにキスしたことになっちゃうの!?
「ご、ご、ご、ごめなしゃっ」今度はミアが慌てる番だ。じわっと顔が熱くなってくる。
幼児とはいえ、いきなりキスされたらそりゃ驚くよね!
「知らなかったのですから、仕方ありません。でも、もう他の人にしてはいけませんよ?」
「はぁい」
ピュイトは耳コンプレックスを拗らせた耳フェチです。
エルフにはたまにそんな人がいるらしい。
ミアのファーストお耳の相手はカイ兄ちゃんになるのだろうか?作者にもよくわかりません。エルフに聞いてみたい。




