ウィゼンベルク村とわたし#32
編み物講習会が再開されて、ミアはヒマになっちゃった。しょうがないから座ってまたセラスティア様人形を眺める。セラちゃん。って名前にしようかな。
「女神様といえばさ、あたしゃ昨日ご近所さんと朝のお祈りに行ったんだよ」ゲーテおばさんが手を止めて話し出した。
お祈りってことは教会へ行ったんだね。そういえば神父様のピュイトに女神様の事お話しする約束してたっけ。あれはいつ連れてってもらおうかな。
「お祈りが終わったらさ、神父様にミアちゃんは次村に来るのはいつですか?って尋ねられたよ。まさかこんな早くまた村に来るとは思わないもんだからさ、「そのうちに」なんて、答えたんだけどさ」
そこでおばさんは一度話を区切って、そこから一気に話出した。
「そしたらさ、ご近所さん達がさ、面白半分で広場での事を話したんだよ。あの子が耳を引っ張られて村長が怒ってさぁ、とか何とか。そしたらさ、……なんと神父様、半分白目向いて気絶しかけちまったんだよ!あたしゃ慌てちまってさぁ、家まで気付け薬を取りに走ろうかと思ったよ」
おばさんは編み棒を膝に置いて言った。
「すぐに立ち上がったから大丈夫だと思うんだけどね、エルフの耳を……とか何とか呟いてたけどあれは何だったのかねぇ?」
えぇー!ピュイト大丈夫なのかな!?
愛し子が乱暴な事されて気が遠くなっちゃった?ガチ女神様信者のピュイトならありえるかも。
自然とママと目が合う。
多分ママも愛し子のミアが心配でピュイトがそうなったんだと思ってると思う。
「まぁま、みあ、またきょーかいいきちゃい」
「え、えぇ、そうね、せっかく村に来たのだものお祈りしてから帰りましょう」
午後は教会へ行く事になった。
お昼になってパパとじぃじが帰ってきた。お昼ごはんはママと一緒におばさんのお手伝いしたよ。ミアはじゃがいもにクリーンしたの。皮ごと茹でられたじゃがいもはほかほかと湯気を立てている。
それにお祭りの屋台でよく売ってたようなフランクフルトぐらい大きな焼いたソーセージが大人は2本、ミアには1本。
お昼ごはんはパパのお膝で食べることになった。
ほかほかのじゃがいもに十字にナイフを入れてもらって、バターをたっぷりのせてもらう。熱でとろとろ溶けだしたバターをお芋が吸い込んでとっても美味しそう!ふーふーしてもらってぱくり。土臭いような皮の香りにほこほこのお芋。バターのこくのある塩気。「おいしぃ!」
次はソーセージ、ナイフで一口分に切ってもらう。断面から油がじゅわぁって溢れてくる。ぱくり。うん、これも美味しい!お耳がぴこぴこ大忙しだ。大人は茶色いツブツブの入ったマスタードをつけてソーセージを食べてる。ミアにはまだ早いよね。テーブルにはまだ何か置かれてる。ボウルに薄緑?薄黄色の何か。各自で好きなだけ取れるように大きめのフォークが添えてある。
「ぱぁぱ、あれなに?」
「キャベツの酢漬けだよ。口がさっぱりするんだけど、ミア食べられるかなぁ?」
さっき、じぃじもおばさんも美味しそうに食べてた。
「たべりゅ!」
ちょっとだけお皿に取ってもらって、ぱくり。
すっぱーーーーーいっ!
思わず目を瞑っちゃう酸っぱさ!!
「ちゅっぱ」
涙目になってしまった。
急いでお芋を口に入れてもらって、ほっとする。
「ミアちゃんにはまだちょっと早いねぇ」って、みんなに笑われちゃった。
お片付けもクリーンでお手伝いして、教会までパパとママと一緒に行くことになった。




