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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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ウィゼンベルク村とわたし#29

イオさんが扉を開けると、パパが立っていた。

「ぱぁぱ」膝をついたパパとすりすりもにもに。

「ラビーのお肉は食べられた?」

「うんっ、おばしゃんとかいにいちゃにあーんしてもらっちゃ!」

「心配すんな、ちゃんと食わしたから」


パパとイオさんは普通に会話をしているけれど、ハンナさんはまだどこか顔色がよくない。気にしちゃってるのかな。ハンナさんの草色のスカートをくいくいっと引っ張ると「どうしたの?」としゃがんで目線を合わせてくれた。

「あのにぇ、みあのことでおこっちゃり、かなしんだりしなくちぇいーの。はんなおばしゃんは、“だい”と“らい”のおかーしゃんだかりゃ……。きゅーにきてごめんなしゃい。しちゅーとってもおいちかった」

普通は我が子が一番かわいいんだよね。みりあの親はそうじゃなかったみたいだけど。ミアのせいで嫌な気分にさせちゃったならハンナさんはダイとライを慰めてあげればいい。だって、お母さんなんだもん。


パパへと手を伸ばす「ぱぁぱ、だっこ」と言えば、たちまちミアはパパの腕のなかだ。

「おやすみ」

「あぁ、おやすみ」

パパ達が最後の挨拶をしてお暇するようだ。


「ミアちゃん……」ハンナさんは何か言いたげだけどミアは手を振るだけにしておいた。

「また遊ぼうな」ってカイ兄ちゃんが言ってくれるけど、できない約束はしたくないからやっぱり手を振るだけにしておいた。

来た時は夕日の中を歩いてきたけれど、外はもう真っ暗だ。パパが片手で持っているランプの灯りが届くところだけがかろうじて見えている。

お月様は雲で隠れてしまっている。「明日は雨になるかもなぁ」とパパが呟いた。

街灯も自販機も車のライトもないと、夜ってこんなに暗いんだ。

時々、家の明かりが鎧戸からかすかに漏れているだけでも何だかほっとする。

「今日はね、じぃじのお家にお泊まりするよ」

そうだった!

「じぃじのおうち、たのちみ!」

それからの夜道は明日は村で何をするか話して楽しく帰った。


じぃじのおうちに着いたらゲーテおばさんが「おかえり」と出迎えてくれた。みんなすっかり寝る支度が整っている。パパも着替えに行った。ミアもママが持ってきてくれていた寝間着のワンピースに急いで着替えた。

さてさてミアの出番だね!

みんなに集まってもらって「くりーん!」パパとママはもう慣れちゃったけど、ゲーテおばさんは「あれまぁ、これはすごいよ」って驚いてる。じぃじは無表情だからよくわからないけど、しきりに髭を撫で回しているからきっとお髭も髪の毛みたいにさらさらになっていると思う。

さて、後は寝るだけ。ミア達はどこで寝るのかな?って思っていたらパパとじぃじが何やら揉め出した。

「ミアは僕と一緒に寝るんですっ」

「ここは儂の家なんじゃから儂と寝るのが当然ではないか」

「起きた時にそんな髭面が目の前にあったらミアが泣いてしまうじゃないですかっ」

「熊の人形だとでも思えばよかろう。お前もたまには夫婦でゆっくりと眠るといい」

「い、いつもゆっくり眠れてますっ」


ママとゲーテおばさんが「ミアどうするの?」っていう視線で左右から見下ろしてくる。

いつまでも眠れないのは困るなぁ。

「みあ、まぁまとねんねしゅる!」

「あぁ、それがいいさね」

「そうね、ママと一緒に寝ましょうね」


「さ、こっちだよ」

じぃじとパパを置き去りにしてゲーテおばさんが案内してくれた客室へ入る。ベッドが左右の壁際に一つずつ。ミアとママは右のベッドで寝ることにした。

「お先にすみません」

「げーておばしゃ、おやちゅみ」

「あぁ、明日の朝もゆっくりでいいからね、おやすみ」


ゲーテおばさんが扉を閉めるとママと暗闇の中で二人っきり。

「イオさんのおうちはどうだった?」

眠る前のおしゃべりタイム。

「あのにぇ、おっきーわんわんとちっちゃいくろいわんわんいた。かいにぃちゃのぴぃーではしってきてぐるぐるしてた」

ママはミアを軽く抱き込むようにして背中をゆっくり撫でてくれる。

「そう、よくしつけされたわんわん…ね」

だんだん背中を撫でる手が遅くなってパタリと力が抜ける。すぅっと呼吸が規則正しい寝息に変わった。

よかった、今日だけはママに先に寝て欲しかった。たくさんおしゃべりしたら夕食の様子も聞かれちゃう。


“捨て子”かぁ。

久しぶりに言われたな。

じぃじがどんなに“孫娘”だって言ってくれても、村の人にとってミアは他所の子なんだね。村中がみんな親戚のようなものならそれは当然かもしれない。

それならそれでいいや、今さらだもの。

本当の娘じゃなくったって、パパとママがミアにくれる愛情は“本物”だもん。

セラスティア様はみりあのお願いをちゃんと聞いてくれた。みりあがあんなにも欲しかったものがここにはちゃんとある。だから他のたくさんのことは望まないよ。パパとママだけミアを愛してくれればいいんだもん。


明日またママに大好きって伝えよう。

おやすみ、ママ。



蒸し暑くなってきましたね。

早速夏バテ気味になってしまいました。

ミアの転生先のナーロッパは夏でも湿気が少なく過ごしやすい設定となっております。

うらやましい。

皆様も体調には気をつけてお過ごしくださいませ。

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