ウィゼンベルク村とわたし#23
声を殺して泣きたいのに我慢しようとすればするほど、泣き声が大きくなってしまっている。
「本当に、どうしたの?」
ママが心配してお布団の上から背中を撫でてくれてるのがわかる。
けど、その優しさが今はもっとミアを泣かせてしまっている。
だって、ママはまだミアがラビーをミイラにしちゃったことを知らない。
どうして練習もしてない魔法でお手伝いしようと思っちゃったんだろう。
あんなことしなければ、今頃ママは初めてパパが捕ってきてくれたラビーでシチューを作り始められたはずだ。
パパだってママの美味しいシチューが食べられた。
あんなミイラじゃどんなに頑張っても美味しいシチューにはならないもん。
自分がやってしまったことに、なんでどうしてと涙と後悔で溺れそう。
それに……こんな余計な事をする子はいらない。って言われたらどうしよう………。これからはおとなしくもっといい子にしてるからって謝れば大丈夫かな?でも、それでももういらないっていわれたらどうしたらいいのかな。
やだ、そんなのやだ!
パパとママにずっとミアのパパとママでいてほしいのに、どうしたらいいかわからない……。
ギィと、扉の動く音がして大人達のぼそぼそ話す声が聞こえてくる。
「ミアは………」
「ラビーが……干し……」
「…………いきなり……走り出して……」
お布団の中にいるから細切れにしか聞こえないけれど、きっとミアの事を話してる。
どうしよう、すぐ謝ったほうがいいのはわかってるのに、怖くてお布団から出られない。
えぐえぐと泣きながら縮こまることしかできないミアの耳に、カイ兄ちゃんの大きな声が聞こえてきた。
「だーかーらー!ミアはすっげぇラビーのシチューを楽しみにしてたんだって!ミアは3才のご挨拶の時にソーセージとベーコンしか食ったことねぇって言ってたんたぜ。母ちゃんのラビーシチューが食えるってそりゃ喜んでたんだ。それが食えなくなったからショックを受けてんだろ!?」
何でそんなこともわかんないのか。ぐらいの勢いでカイ兄ちゃんは力説してるけど、それじゃあミアがものすごく食い意地が張ってるみたいじゃない!?ラビーのシチューが食べられなくなったのも悲しいけど、違うよ!!もっと切実な問題でミアは泣いてるんだよ!?
でも「はぁ!?」と、さっきのカイ兄ちゃんばりのすっとんきょうな声を上げたイオさんと「なにぃ?」と低い声で唸るような声を上げたじぃじはミアと違うところが引っ掛かったようだ。
「なぁ、カッツェ、今カイが言ったことは本当か!?」
「え?」
「ついこの間まで孫娘に肉を食わせてなかったのかと聞いておるんだっ」
「あーー、まぁ、その、なんというか、そう……なる、かな?」
「そうなるかな?じゃねぇ!」
「そうなるかな?じゃない!」
「「ちょっとこいっ!!」」
イオさんもじぃじも段々声が大きくなってお布団の中でもはっきり声が聞こえてくる。
「え、二人とも待って……」と、引きずられていくような音とパパの声が遠ざかる。
パパ、どうしちゃったのかな?
心配になってお布団をちょっぴり持ち上げて、そぉっと覗いてみる。
そしたらパパを見つける前に、そっと覗き込んできたママの濃い青の瞳とぱちりと目が合った。
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