ウィゼンベルク村とわたし#21
それから昼過ぎにパパ達が帰ってくるまでカイ兄ちゃんとずっと遊んだ。
やっぱり一人より相手がいるとずっと楽しい!追いかけっこもミアにはなかなか捕まえられなかったけど、カイ兄ちゃんはわざとミアの周りをグルグルして捕まえるチャンスをくれたり、ミアが逃げる番の時も全速力で追いかけて速攻で終わりにするようなことはしなかった。捕まりそうで捕まらなくて何だかおかしくなってきて大きな声で笑いながらちょこちょこと息が切れるまで逃げ回った。
ミアが一番楽しかったのはカイ兄ちゃんが吹いてくれた口笛だった。高い音も低い音も上手にピィーって少し尖らせた唇からでてくるの。村のお祭りで子供たちが踊る躍りの曲を吹いてくれた。明るいテンポのいい曲だった。
ミアも真似して唇を尖らせて息を吹いてみたけど、ふぅーふぅーって普通の息がでてくるだけだった。しょぼん。
「かいにぃちゃ、くちびゅえしゅごーい!ぴぃーってなりゅ!」
カイ兄ちゃんはミアのふぅーふぅーを見て笑ってたけどミアが誉めたら、口許をにやにやさせて喜んでる。
「猟に使う犬を呼ぶときに口笛で呼ぶんだ。だからちゃんと練習したんだぜ」って胸を張った。
「かいにぃちゃはりょーししゃんになりゅ?」
「あぁ、家は兄ちゃんが継ぐと思うけど、オレも父ちゃんみたいに猟師になると思うぜ。立派な猟師になってミアにいっぱい肉食わせてやるよ!」
「にきゅ!たべりゅ!」
嬉しくて、にかって笑ったカイ兄ちゃんの手を取って左右にぶんぶん振っちゃう。こないだソーセージは食べたけどこっちは何のお肉をどうやって食べるのかな?みりあの時に食べた唐揚げやトンカツはあるかな?調理員の須藤さんは食べ盛りの子供のために大皿に山盛りになるまで唐揚げをふぅふぅいいながら揚げてくれたっけ。にんにくと生姜がきいたジューシーな唐揚げは皆の大好きなメニューだった。
うぅ、思い出したらとってもお肉食べたくなってきちゃった。
「おにきゅ、どーやってたべるにょ?」
「どーやってって……ミアも母ちゃんに作ってもらうだろ?」
「ぱぁぱ、ごあいしゃちゅのまえにむりゃでしょーしぇーじかってきてくりぇた!しゅーぷにはいってたの、ちゅっごくおいちかった!!あとはべーこん!おいもとじゅーじゅーしてあるの!」
冬支度の為の食料は買ってきてくれた最初だけ食べたけど、後は本格的に寒くなるまでとっておくみたいでその後はソーセージもベーコンもみていない。
「他には?」
って、カイ兄ちゃんが言うからミアは首をふるふる横に振る。こっちのお肉料理はママが作ってくれたその2つしかまだ見たことない。
「しらにゃい。ごあいしゃちゅのがはじめてらったよ」
そしたら「えっ!?」って顔をしたカイ兄ちゃんは少し考えてから口を開いた。
「オレんちは猟師だから色んな肉食うぞ。母ちゃんが作ってくれるシチューによく入ってる。焼くかシチューで食うことが多いぜ」
って教えてくれた。そっか、焼くか煮込みが多いのか。ミアが大きくなってお料理できるようになるまで揚げ物は食べられないかも。
カイ兄ちゃんとおしゃべりしていたらパパ達が帰ってきた!
「おかえりなしゃーい!」駆け寄ってパパの足にしがみつく。いつものすりすりもにもにをしていたら、じぃじが無言で見つめてくるので、じぃじにもしてあげた。お髭がさわさわしてくすぐったくてパパとは全然違った!じぃじは無表情だけれど何となくうれしそうにも見える。ミア何となくじぃじのことわかってきたかも。
「カッツェは獲物の処理すっぞ」
イオさんが背負い籠から何かを引っ張りだした。
片手で耳を掴んで出されたのは灰色のウサギ。身を捩ってイオさんの手から逃げだそうとするけれど、しっかりと捕まえられてて少し動いたら動きを止めてしまった。
よく見るとそれはミアが知ってるウサギサイズじゃない!前足と後ろ足をそれぞれ縛ってあるウサギは体がランドセルぐらいあるジャンボサイズだ。
「おっきぃー」思わず呟いてしまう。
「おぅ、今日はカッツェが仕掛けた罠にラビーの大物がかかってたぞー。初めてにしちゃあ、上等だ」
イオさんもパパもにこにこうれしそうだ。
「ぱぁぱ、しゅごい!」って言ったら、パパはわかりやすく得意気な顔になった。
うさぎはラビーっていうんだね。
あれ?ラビーってどっかで聞いたっけな???どこで聞いたっけ?
パパとイオさんは最近は使われなくなった洗濯を干すためのロープを張っていたT字型の棒にラビーを吊るして下に桶を置いた。
ちらっとイオさんがカイ兄ちゃんを見た。
「ミア、ミアの母ちゃんに夕飯はラビーのシチューにしてって言いに行こうぜ」
そうだ!ママに言っておかないと違う夕飯の支度をしちゃうかも!
「ちゃいへん!しゅぐいわなくっちゃ!」
二人でお家へ走り出す。
勢いよく扉を開けて、お芋の皮を剥いていたママに「ぱぁぱ、おっきーらびぃとっちぇきた!しちゅーちゅくって!!」とお願いする。
両手を広げてこーんなに大きいよ!ってお肉がいっぱい食べられることを教えてあげる。
「まぁ!そんなに大きいの?それは楽しみだわ」ってママも嬉しそう。
「みあもしちゅーちゅっごくたのちみ!おりょーりおてちゅだいしゅる?」って聞いてみたけど、残念ながら「ミアにできるお手伝いは今日はないの」って言われちゃった。
でも、パパのお手伝いならできることあるかもしれないよね!
お庭に向かって駆け出したミアに「あっ!ミアまだ!」ってカイ兄ちゃんが言ってるけど、お手伝いしたらその分早く夕飯が食べられるんだから急がなくっちゃ!
ブクマがとうとう200になりました!
最初のお1人から200人目の方まで本当に感謝、感謝です!
これからも引き続き、読んで下さると嬉しいです。
ブクマしてない方も、これからもよろしくお願いします!
ミアの物語はまだまだ続きます。




