双子の女神#4
……言ってもいいのかな。
こんなこと誰にも言えなかった。私が“いいな”って思うことは、私のまわりを困らせることだったから。
学校の友達はパパとママがいて“いいな”「よかったね」
施設のお兄さん里親が決まって“いいな”「よかったね」
このあいだ入所したあの子、お祖父さんとお祖母さんが面会にきてて“いいな”「よかったね」
“いいな“ “いいな“ ”いいな”
たくさんの“いいな”を飲み込んで、ずっと外には出さずに過ごしてきた。
私が次に生きる世界で“こうだったら“いいな”と、思うこと……なんて、決まってる。
ーーわ、私、両親から愛されたいです!私を大事にして愛してくれる両親のところへ行きたい。抱き締めて、大好きだよ。って言ってくれるような両親のところへ……
3才でデパートに置き去りにされた私は親の顔を知らない。
涙がぽろっとこぼれてしまって、それ以上は言えなかったけれど、選べるというのなら、今度は私を捨てないパパとママが欲しい。
テーブルを挟んで前に座っていた女神様が私の横へきて、優しく肩を撫でてくれた。こぼれてしまった涙の跡をそっとハンカチで押さえてくれる。
「次は?他には何かないかしら?些細な事でもいいのよー。どんどん言ってみてー」
ーーそんなにたくさん言っていいの?女神様、困らない?あと、なんでそんなにお願いを聞いてくれるの?
「そうねぇー、生まれ変わって赤ちゃんから成長すると言っても元々は違う世界の魂でしょ?きちんと魂交換の手続きは済んでいるのだけれど、何故か何となく馴染めない魂もあるのよねー」
妹女神のセラスティア様は少し困った顔で笑った。
「でも、自分の理想の生を送っていると違和感がなくなるのが早くなって馴染みがよくなるのー。それにせっかくこちらの世界にきたのだもの、楽しく過ごして欲しいのよー。みりあちゃんのお願いが全部叶うかはまだわからないけれどー」
首を傾けて私の顔を覗き込んだセラスティア様の薄紫の髪がサラサラと肩から流れた。金色の瞳が興味深そうに私を見つめる。セラスティア様はどこを見てもキレイでついつい見惚れてしまいそうになる。
「さぁ、他には?」
どんどん言っていいって他でもないセラスティア様が言ってるんだから、言ってみようかな。
私はミルクティーをこくりと飲んで決意した。
ーーあのね、今よりもう少しかわいくしてほしいの。きっとね、かわいい方がパパとママにもかわいがってもらえるでしょ?それにかわいいと、イケメンに出会えるって施設を卒業したお姉さんが言ってた。あと、できるならこんなうねってぺたんこになっちゃう髪じゃなくて、セラスティア様みたいにサラサラのストレートな髪になりたいな。
「ふんふん。他には?」
あとは、何だろう?
こうだったらいいなってこと、施設でさみしかった時はいっぱい想像したのに、いざとなると思い付かないよ~。
ーーあ!あのね、私、学校で手芸クラブに入っていたの。ビーズでネックレスとか、和柄の布で巾着とか作ったことあるんだよ。もっとやってみたかったから、手芸とか上手にできるようになれるかな?
「次は?」
ーーえっと、えっと魔法が使える世界なら私も使えるようにして欲しいかな。それでパパとママのお手伝いができたらうれしいな。
「その次は?」
ーーうーんと、えっと、もうない……かな?
それだけ叶えてもらえれば十分!
今言ったお願いがダメならまた考えます!




