ウィゼンベルク村とわたし#13
「ミアさん、お茶のおかわりはいかが?」
「いただきまちゅわ」
「まぁたへんなごっこ遊びかよ」
サッとミアの座っているところが影になった。
「?」
振り向こうとした瞬間、誰かに両耳を掴まれた。
「ひゃっ!?」
「だれだコイツ?ぴこぴこ動いて変な耳!ラビーみてぇ!」
声の主の男の子は後ろからミアの耳をがっしりと掴んでいる。そしてそのまま上へ持ち上げようとした。
「いちゃい!!やめてぇ!!」
叫んだけど、手は緩まない。
ぽろぽろ涙がこぼれてくる。耳が引っ張られてキリキリ痛い。
「ちょっとカイ!何してんのよっ!放しなさいよ!!」
アナが叫んでくれる。
「なんだよ、別にいいじゃねぇーか」
「そんな小さい子に乱暴しないでよっ」
「早く放しなさいよっ!!」
アナお姉ちゃん達が放すように言っているのに、男の子は止めるつもりはないようだ。
耳を握る手にますます力が入ってもう限界だ。
「はなちてぇーーーーーーーっっつ!!!」
火が付いたように泣き出したミアにぎょっとしたのか、ようやく手が離された。後退りして逃げようとするのをアナが腕をとって「どこにいくのよっ謝りなさいよっ!」と迫っている。
「私、ミアのお母さん呼んでくるッ」とベスが井戸端会議へと走って行ってくれる。耳を引っ張っていたのは、アナ達より少し大きな男の子だ。
耳がじんじんして頭もズキズキする。
「謝るまでは離さないからね」とエミーナも男の子を押さえるのに加わった。
ベスとママがこちらへ走ってきてくれるのが見える。そこへ役場へ行っていた、パパがじぃじと戻ってきた。知らない男の人も一緒だ。
「み、ミア、どうしたんだい?」おろおろしたパパが抱っこして優しく頭を撫でてくれる。ママもミアに何が起こったのがわからなくて困ってる。
ミアはわんわん泣くのが止められなくてお話できないよ。
「カイ、おめぇ何か知ってるか?」一緒にきた男の人はあの男の子を知ってるようだ。
「知ってるも何もカイが悪いんだからっ!」
「そーよっあの子に乱暴したのよ!」
「私達が遊んでたらねっ………」
3人のお姉ちゃんが詳しく話してくれた。
「お耳まだ痛い?まだ赤いわ。あぁ、どうしましょう…ちゃんと聞こえているかしら」ママがお耳に息をフーフー吹き掛けて赤くなった耳を冷まそうとしてくれている。
ふと横を見たらじぃじのお顔も真っ赤だった。目を見開いて男の子を凝視している。拳がプルプル震えてるのは気のせいじゃないと思う。
それを見た男の子はアナとエミーナの手を振り払って逃げようとした。
「カイ!てめぇ、どこ行く気だッ」低く押し殺したような声で知らない男の人が男の子を止めた。
「と、父ちゃん……」
なんと、この子の親だった!
「アナ達が言ったことは本当か?」
「ち、ちがっ…」
「……なら、どこがどう違うか言ってみろ」
「そ、それは……」
カイという子は明らさまに父親から目をそらした。
「言えねぇなら、違わねぇってことだな?」
「………」
「謝れ。ちゃんとあの子に謝るんだ」
父親はさっきよりも低い声になっている。
「な、何だよっ!変な耳だからちょっと引っ張っただけじゃねぇーかっ!ピーピー泣くそいつが弱いんだろっ!!」
カッと目を見開いたカイパパはつかつかとカイに歩み寄ると、いきなり両手で両耳を掴んで上へ引っ張った。手加減してるようには見えない。
「いででで……っ痛ぇよ父ちゃんっ止めてくれよ!」
「お前はあの子が止めてと言った時止めてやったのか?」さらに上に引っ張る。
「あの子はエルフで耳が長いからもっと痛かったろうになぁ。なぁ?お前は弱くないから平気なんだよな?」
「耳が取れちまうっ!いてぇ!いてぇーよっ、離してくれよ!!」
カイもぽろぽろ泣き出した。
「ちゃんと謝るんだな?」
両手で耳を押さえながらぐずぐずと泣いているカイがこくんと頷いた。
そのままミアを抱っこしているパパの前にくる。
「わ、悪かった」小さくぼそぼそとした声だ。
パパの肩に顔をつけて「や!」と、一言だけ言ってやった。
ゆかりお姉さんも言ってた。「謝られても本当は許したくなければ、許してあげなくていい」って!
ミアはまだお耳痛いし、怒ってるんだもん!
カイパパが「ふーっ」とため息をついた。
「おめぇのやったことはすぐには許されることじゃなかったってことだ。もう今日はうちに帰れ。アナ達も世話んなったな」と帰宅を促してる。
「ミア、今度来たら特別にまたあのカップ貸してあげるわ」
「今度はもっとたくさん遊びましょ」
「待ってるからね」
半べそのまま、小さく手を振ってお別れした。




