ウィゼンベルク村とわたし#12
お待たせしました。
「さ、ベス、エミーナ敷物を敷いてちょうだい」どうやらアナがリーダーっぽい。アナがもっていた籠には色々な物が入ってる。
白地に別の赤い布で四辺がトリミングされてる布。真ん中辺りにうっすらと大きな茶色の染みがある。多分テーブルクロスだったけど、染みが落としきれなかったので子供の敷物へと降格したのだろう。草の上に敷物を敷いたらみんな靴のまま座った。
「ミアも座っていいわよ」
「あいっ」
靴のまま敷物に上がるのはすごい抵抗感があるけど、変な子扱いされないようにここは耐えなくちゃ。
「何して遊ぶ?」
「おままごとは男の子がいないとお父さん役がいなくてつまらないし」
こっちでもおままごとは女の子の遊びの鉄板らしい。
「お茶会ごっこは?それならミアもできるんじゃない?」
「そうね、ミアできる?」
「おじょうさまになって、お茶を飲むふりをするのよ」
アナはもうお茶会ごっこに決定とばかりに籠から、縁の欠けた陶器のカップや木製のひびが入ったスープボウルなどを取り出した。
お嬢様になるなら……
「あのにぇ、みあがおねぇちゃんたちをおじょーしゃまみたいにしてあげゆ」
「何をするのよ?」
「かみのけ、きれーきれーにしてあげゆ」
アナの後ろへ立って「かみのけほどいちぇいい?」と聞いてみる。
後の二人は不安そうにアナを見るけどアナは「いいわ、また結べばいいんだもの」と自分でリボンをほどいてくれた。
「みあのてちいしゃくてじょーずにできないから、べすおねぇちゃんとえみーなおねぇちゃんてちゅだって」
と言えば、二人ともアナの後ろへまわってきてくれた。
「まじゅはふたちゅにわけてー……」
目指すのはアナの名前のついていた有名アニメの女王の髪型だ。
「こっちのかみのけをちょびっととってー……」
ミアの指示でお姉ちゃん二人が交互に髪の毛を持って編み込んでゆく。
施設にいたお姉さんのオシャレのお手伝いもよくしたな。って懐かしくなった。自分じゃキレイにできない右側のブローとか右手の爪を磨いてあげたりネイルカラーを塗ったりしてあげるの。きれいにできるとお姉ちゃん達は嬉しそうに出掛けて行ったっけ。
三つ編みをしてる二人は上手にアナの髪を編み込んで行く。
ここではゴムがないから二人がかりで正解だったかも。最後はエミーナに髪の毛をぎゅっと持っててもらってベスがリボンをきゅっと結んでくれた。
「かんしぇー!」
「かわいいわっ」
「そんなに難しくないのに三つ編みよりすごく凝ってみえるっ」
「どうなってるのよ?私だって見たいじゃないっ」
アナは自分じゃ見られなくて髪の毛を前に持ってくるけどあまり長くないから尻尾の方しか見られなくてもどかしそうにしてる。
「ちゅぎはあなおねぇちゃんがおてちゅだいしゅるばん」
「そうだわっ、皆同じにすればどうなってるのかわかるものねっ」
「もう一回やったら覚えられるわ!」
「次、次は私にやってみて?いい?エミーナ?」
「うふふ、わたしは最後で大丈夫よ」
次はベスにやることになった。三つ編みのくせがついてるから、アナよりもやりやすいと思う。
「まじゅふたちゅにわけてー……」
そして三人お揃いの編み込みヘアが出来上がった。
「おじょーしゃまできた」
「ミアあんたちっちゃいのにすごいのね!」
「こんなの村のお姉さんだって誰もしてないわ」
「本当のおじょうさまになったみたい……」
お互いの髪を見て自分の髪型がどうなっているかわかったようだ。喜んでくれて何よりだ。
「みあもかみのけのびたらやっちぇくれる?」
「もちろんよ!それまでに練習してこれよりもっとキレイに編んであげるわ」
「本物のおじょうさまになった気分でお茶会ごっこができるわね!」
「ミアに一番いいカップを貸してあげるわ、特別よ!」と、縁の欠けた陶器のカップを渡されてお茶会ごっこは始まった。
木のお皿にどんぐりを入れてクッキー。カップにはちぎってきた草の葉っぱ。
「あら、このクッキーたいへんおいしいわ」
「そうでしょう?我が家の料理人が作った特製ですの」
「おいちぃでしゅわ」
「さすがはアナ様のおうちの料理人ですわ」
うふふ、ほほほ、とお茶会は和やかに進んでいた。