ウィゼンベルク村とわたし#10
「村長ん家も色々あったよねぇ」
「やっぱり始まりは奥さんが病気になっちまったことだよねぇ」
「あれは本当に早すぎたよ。せめて下の子の成人まで、ってさ、本人も思っていたろうよ」
ミアが小さくて話の内容が理解できないと思って、おばさん達は色々おしゃべりをしてくれた。
ミアはママに抱っこされて寝たフリをしておいた。
つまり、こうだった。
じぃじと亡くなった奥さんには3人の子供がいた。3人兄弟。長男が村長の後を継いで、次男のパパが補佐役になると思っていたら、何を思ったのか15で成人してすぐ長男は村を出て冒険者を生業に選んでしまった。そのころパパのお母さんは具合を悪くしていて、12才だったパパは家の仕事やお母さんがしていた村長の仕事の手伝いをしていたそうだ。パパが成人してもお母さんは回復せず毎日介護や家事に忙しくしている間に今度は3つ下の弟が成人を迎えた。次男の補佐役になってくれると思っていた三男はもっと大きな街で自分の力を試したいと言ってこれもまた家を出ていってしまった。しばらくしてお母さんが女神様の元へ召され、パパは家事と村長の補佐をしながら暮らしていたんだって。
そこへ隣村からママが親戚を頼って移住してきた。ママも両親を病で亡くしていてその介護のせいで少し婚期を逃してしまっていたらしい。こっちの女性は成人の2、3年後には結婚するのが普通らしい。
そんな健気で儚げなママにパパは一目惚れしたらしい。話してみれば介護で苦労したという共通点もあり、二人の仲は急速に深まっていった。
なのに、じぃじが待ったをかけた。
村長を継いでもらおうと思ってたパパには村の中でも比較的裕福な家の娘さんを宛がうつもりだったらしい。加えてママはあまり体が丈夫でない為にじぃじは二人の結婚に大反対をした。
それにパパは猛烈に噛みついたらしい。今まで素直に家事や仕事や介護、色々な事を長男や三男と違って反抗せずやってくれていたパパの反撃に、じぃじもムキになった。そして遅く来た反抗期をいかんなく発揮したパパも引かなかった。
パパとママ二人で駆け落ちをするしかない。
と、いうところまできて、ゲーテおばさんが仲裁に入ってくれたらしい。じぃじには次男まで村からでていってもいいのか、と。パパには頼る親戚がここにしかいないママをどこへつれて行く気かと。そこで山番という村から少し離れたところで生活するのはどうか?と。二人に提案してくれたらしい。
ママが前に「ゲーテおばさま、様々ね」って言ってたのを思い出した。本当だゲーテおばさんいなかったらミア、パパとママと会えなかったかも。
ゲーテおばさんに説得されてじぃじは条件をつけた。5年、山番をしっかり勤めあげたら結婚を認めると。
それが、あと一年ほどだったらしい。
家事と書類仕事しかしたことのないパパはすぐ音を上げて家に帰ってくるだろうと思ったらしい。
愛の力は偉大だね。
パパは山のお仕事の事で弱音を吐いたことなんてミアが知る限りは一度もないよ。きっとミアの知らないところでもないよ。
「案外もう許す気になってたのかもしれないねぇ」
「自分から孫娘だって、あんなに触れ回って認めたんだから、これからは堂々と嫁面してりゃいいからね」
どこかのおばさんがママに向かって笑って言った。
「違いないよ」
ゲーテおばさんの笑い声。
「よかったねぇ」
「ほんとだよ」
「これでこっちも堂々とカッツェに山仕事を教えてやれるよぉ」
「よく耐えたよ、なんせカッツェ罠の仕掛け方も知りゃしないんだろう?」
「山番の手当てだけじゃ、やっぱりキツイもんがあるよねぇ」
「ダンナに罠の仕掛け方と弓の使い方、教えるように言っとくよ」
うちが貧しかったのにも理由があったらしい。
………これからお肉、増えるかな?
「この子のおかげだねぇ」
ゲーテおばさんがミアのほっぺをちょん、とつついた。
サブ・サブタイトルをつけるなら、「ミアちゃん家の家庭の事情」でしょうかw




