双子の女神#3
「じゃあ、私達も移動をしましょうかー」
妹女神さまはみりあの手を握ったまま、ふんわりと微笑んだ。
こくりと頷くと、次の瞬間には違う景色へと変わっていた。
そこは全部がパステルカラーの空間だった。
さっきまではどこを見ても白一色だったのに、今度はパステル星雲に迷い混んじゃったみたい。パステルピンクにパステルブルー、薄紫にクリーム色。
雲なのか星屑なのかわからないけれど、それは時々ゆらゆらとしてパステルカラーのマーブル模様を変化させている。
あ、雲がそのままソファーになってる!すごい、リアル○キ&ラ○の世界!
「さぁ、かけてちょうだいー」
女神様に勧められて座った雲のソファーは、雲に触れたらこんな感じだろうな、っていう想像通りのふっかふかのフワフワだった。
これ、座ったら二度と立てなくなっちゃうかも。私のおしりや背中をとっても優しく受け止めてくれてる。
体は相変わらず透け透けだけど、気持ちいいとかは生きてたころと同じ様に伝わってくるようだ。
ほぇ~~
気の抜けた顔でソファーに背中を預けていると、
「ミルクティーでいいかしらー?」
女神様が手を一振りすると、白いテーブルの上にティーセットが現れる。
肉厚のぽってりとしたカフェオレボールにポットからミルクティーを注いでくれる。乳白色の地に薄いピンクでバラがステンシルされている。
シュガーポットも陶器製のティースプーンもお揃いだ。
かわいいっ。
甘くて温かいミルクティーを口にして、かわいいものに囲まれて、ついさっき姉女神様から死んだと聞かされたショックは随分と和らいだみたい。
「ふふ、落ち着いたかしらー?」
ーーはい、ありがとうございます。
「みりあちゃんと呼んでいいかしら?私のことはセラスティアと呼んでねー。これからみりあちゃんの次の生についてお話しましょ?テラスティアも言っていたけどあなたで最後だから時間はいっぱいあるのー」
セラスティア様は私の名前を知っていた。これはきっとあのファイルに個人情報が記載されているんだ。色々駄々漏れだよ。
…まぁ、女神様だもんね。
ーーあの、私が次に行く世界はどんなところですか?
「そうねぇ、私の名前セラスティアがそのまま世界の名前になっているわー。地球でいうところの“剣と魔法”の世界といえばわかりやすいかしらー?
地球ほど生物の種類はないのだけれど、そのかわり人族だけじゃなく獣人もいるのよー。テラスティアは変化を楽しみたいって、初期の世界からたくさんの種類の生物を一気に創っていたけれど、私は必要になったら追加していこうと思ってるのよー」
“剣と魔法”の世界かぁ。
あんまりゲームとかしたことないからよくわからないけど、呪文を唱えて魔法を使ったり、仲間を集めて魔王を倒しに行くやつだよね?
ーーあの、危険なことってありますか?魔王とか戦争とか。
「私の世界には魔王はいないわー。戦争もたまに起こるけれど、大量破壊兵器がないから現代地球に比べたら小さな規模かしらー。あと野生の魔物は危険ねー。人にはよい人も悪い人もいるわー、それは地球と同じねー。
大丈夫よ、最初から危険なところへは転生させないから安心してねー?」
ーーよかった、ちょっぴり心配だったの。
「あとは、そぉねぇ、ゲームの世界よりは、みりあちゃんの世界なら“むかーしむかしあるところに……”から始まる、昔話の世界の方がイメージが近いかしらー。
どうかしら?何となくわかったかしらー?」
ーーえと、たぶん?
「なら次は、生まれるならこうだったらいいな。と、思うみりあちゃんの希望を聞かせてくれるかしらー?」
女神様はおっとりと微笑んで言った。