ウィゼンベルク村とわたし#8
パパがゴトゴトと荷車を引いて、ミアとママは手を繋いで、さっきの広場まで戻ってきた。来るときはあった屋台や露店がなくなっている。朝市だったのかな?
今度は今来た道の正面の道へ入ってゆく。
「はー……」
進むにつれてパパのため息が多くなり足を動かすスピードが落ちてきている。
「うちになんて寄らなくていいんじゃないかな…?」
「何言ってるの?そんな訳にいかないのは、あなたが一番わかってるじゃないの」
なんでか知らないけどパパは実家に行きたくないらしい。
「ぱぁぱ、やめりゅ?みあとおうちかえりゅ?」
パパの側へ寄って荷車を引く手にミアの小さい手を乗せる。
「……ミア! よし、ミアの為だ。パパは頑張るよ。負けられないね」
何に勝とうとしてるのかはわからないけど、やる気になってくれたみたいなので「うん!」と元気に返事をした。
後ろでママは「ミアに励まされてどうするのよ」と呆れているけど。
しばらく進むと周りのおうちより古い、だけど立派なおうちの前で止まった。両隣の倍はありそうなカンジだ。
パパが荷車を門の中へ入れ、玄関についているベルを紐を揺らして鳴らす。
チリィーーーンと高い澄んだ音が響いた。いい音♪ミアもやってみたい。
両手を出してせがんだけれど「後でね」と断られた。つまんない。
中から「はいよー、ちょいと待っとくれー」と声がする。カタコトと音がしていたが、こちらへ近づいて来る足音が聞こえて内開きの扉が開けられた。
「まぁまぁ、しばらくぶりだねぇ、カッツェ!」
中にいたのは恰幅のよいおばさんだった。ほっぺが赤くてつやっとしてる。
焦げ茶色の服に白いエプロンをしている。
「マリッサも、もう体は大丈夫なのかい?無理はしてないかい?」
「えぇ、おかげさまでもうすっかり」
「そうかい、それはなによりだよ。あぁ立ち話もなんだね、ささ、入っとくれ」
招き入れられて通されたのは応接室のようだ。三人掛けのベンチが向かい合って置いてあり、ティーテーブルが真ん中にある。一人掛けの肘付の椅子がテーブルの短い方へ一脚。ベンチにはキルトでできた薄いクッションが並べられていてかわいい。
おばさんがお茶の用意をしてくれた。
「小さい子がくるって聞いたからねぇ、お菓子を焼いたんだよ。さ、食べとくれ」
ママ達には紅茶かな?赤っぽい透明なお茶。ミアにはホットミルクを出してくれた。陶器のお皿に乗せて出してくれたのはビスケットかな?形がコンビニでアイスを買ったときにくれる木のスプーンに似てる。片方に少し窪みがついてて赤紫のジャムが乗せられている。美味しそう!
ママをちらっとみると、笑って「いただきなさい」って言ってくれた。
「いたーきましゅ」
小さい子に食べやすい、握って食べられるお菓子。ゲーテおばさん優しい人だ。ジャムの方から口に入れるとサクッと小麦の香ばしさとベリージャムの甘酸っぱさが広がる。
「おいちー!」
朝、美味しいパンケーキと林檎ジャムをお腹いっぱい食べたけれど、甘いものはいつだってどこだってなんどだっていいよね。
教会に長居していたから小腹が空いてしまったのだ。にこにこ笑顔が全開だ。ミルクを飲んだら白いおひげがついた。
「なんてかわいい子だろうね、カッツェから聞いてはいたけど、こんなかわいい子を手放すなんてエルフってのは薄情なのかね?」
「旅の方だったから……」
ママは曖昧に微笑んだ。
「まぁねぇ、赤ん坊を連れて旅は無理さねぇ。赤ん坊はすぐ熱を出すもんだから」
ゲーテおばさんも言ってはみたものの、やっぱり無理だという結論になったのか、自分の言葉にうんうんと頷いている。
ママにお口を拭いてもらっていたら、おうちの奥の方で「ゲーテどうした?客人か?」と男の人の声がする。
「あんた達が来ることは言ってないんだよ、言ったら玄関先でケンカになっちまうかもしれないからね」と小声でパパに告げるゲーテおばさん。
「兄さんを連れてくるから待ってな、あたしもここにいてあげるから心配しなくて大丈夫だよ」
パパとママに目配せしておばさんは部屋を出ていった。
足底腱膜症というものになってしまいました。
整形外科で歩きすぎと言われました。
GWの激務がたたっています。
そして歩くたびに激痛がするのて痛み止めを処方されました。
飲むと速攻で熟睡できます。
気がついたら朝です。
びっくりです。
そんなわけで、これから毎日更新はちょっと無理な気がします。
すみません。