ウィゼンベルク村とわたし#7
「みあ、ぱぁぱとまぁまよんでくりゅ!」
とてとてと走って扉まで行く。取っ手には手が届かないから扉をコンコン叩いてみる。
「みあでちゅよー」
言い終わらないうちに扉が勢いよく開かれた。
「「ミア!」」
さっと掬うようにパパはミアを抱っこした。ママは抱っこされたミアの手を握りしめる。
「もぅだいじょーぶよ、みあとぱぁぱとまぁあはじゅっといっちょよ」
それを聞いた二人は、パッと顔を輝かせた。
「本当に!?」
「すごいなどうやって神父様を説得したんだい?」
「みあはぱぁぱとまぁあがだいちゅきなの!ってゆっただけよ」
「えぇ、それがよくわかりました」
目も鼻もまだ赤いけど、神父様は決意を込めた顔で言った。
「私にも女神様より愛し子の願いを妨げてはならぬというお告げがありました。ミリアンジェはあなた方と共にあることを望みました。ならば私は全力でそれが叶うように助力をいたしましょう」
「「女神様からお告げが………」」
パパとママが「今度は何をしたの?」って目で見てくるけど、ミアはお祈りしただけだよ?何にもしてないよ?ほんとだよ?
「村の皆へは最初に私に説明した通り、旅のエルフから預かった娘ということにしておきましょう。その方が穏やかに暮らせるでしょうから」
「ええ、わかりました」
「そうします」
うん、ミアもその方が気が楽でいいな。
「ずいぶん長居をさせてしまいましたね。この後はご実家に向かわれるのでしょう?首を長くしてお待ちになっていることでしょう、申し訳ないことをしました」
眉毛を下げて神父様が謝ってくれる。
「あー、いや、そんな待ってるとは…ゲーテおばさんは待っているとは思いますが……」
なんだか歯切れの悪いパパ。
神父様は膝をついてミアと視線を合わせた。
「ミリアンジェ、たまには教会へきてくれますか?女神様のことで伺いたいことがたくさんあるのです」
そーだよね。あの時の神父様の様子だと女神様を本当に崇拝してたもん。
きっと女神様のことだったら何でも知りたいに違いないよ。
「ぱぁぱとまぁあがつゅれてきてくれにゃいと……」
ちらりと見上げると二人とも頷いてくれた。
「いいって!みあのちってるめがみしゃまのことおはなちしゅるよ!」
「楽しみにしていますね、ミリアンジェ」
うーん、やっぱり“ミリアンジェ”は呼ばれ慣れないな。
「あのにぇ、しんぷしゃま、みあはね“みりあんじぇ”だけど、“みあ”がいーの。まぁあがつゅけてくれたから。だからね、みあのこと“みあ”ってよんでほちーの」
それを聞いた神父様は懐かしい人を思うような、さみしさをこらえるような色を瞳に浮かべた。
そして、微笑んで言った。
「わかりました、ミア。ミアと呼ばせていただきましょう。私の名前はピュリンハイド、長いので“ピュイト”と呼んでください。……父がつけてくれた愛称です」
「ぴゅいと」
うれしい!仲良くなれた。
「ちょーだ、ちょとまっちぇちぇ!」
開いたままの扉から外へ出る。
「ミア?どうしたの?」ママがびっくりしてるけど、すぐ戻るよ!
荷車に積んである木箱にぎっしり入っている中から一つ手に取る。
真っ赤でぴかぴかの林檎。
走って戻ってピュイトの前に立つ。
「みあね、ぱぁぱとまぁあがだいしゅき。もうひとちゅだいしゅきなのがりんごなの。ぴゅいとにもだぁいしゅきのおしゅしょわけ!」
甘い香りを放つそれを両手で差し出せば、ピュイトはそっと受け取ってくれた。
「エルフに……林檎」
「ぴゅいともりんご、しゅき?」
「え、えぇ。もちろん」
「しゅきならこんどはたっくしゃんもってくりゅね!ぴゅいとがたべきれないぐりゃい!」
喜んでくれるかな?くふふと笑っていたら、ぴゅいとのお顔がぽっと赤くなった。
「?」
「な、なんでもありませんよ」
それから数秒、林檎を見つめて、
そして、「ありがとう、ミア」と、
ふありと溶けてしまいそうな笑顔でお礼を言ってくれた。
ミアのほっぺがまたじわじわと熱くなる。
美形の笑顔ってスゴい……。
こうしてミアの“ご挨拶”は無事に?終わった。
あとは村長さんのところ!
あれれ?さっき次は実家って言ってなかったっけ?
どっち先に行くのかな?




