ウィゼンベルク村とわたし#3
祈りが終わって顔を上げると神父様が紙のような顔色をしてミアを凝視していた。
「ひぇ!?」
ミア何か間違えた!?
「え、な、まさか、そんな……。カ、カッツェ!カッツェ!どういうことです!?ミリアンジェは旅のエルフから預かった子だと言いましたね!?それはどんなエルフでした!?まさか、そんな、もしやエルフの神子だったのですか!?」
詰め寄られて肩を両手で揺さぶられているパパの首がぐわんぐわん揺れている。
「カッツェ!どんなエルフだったのです!?」
ミアを預けたエルフなんていないんだから言える訳ないよ!
パパの首が鞭打ち症になっちゃう!
ママも神父様のあまりの勢いに手が出せないでいる。揺さぶられすぎて気持ちが悪くなったのかパパの体から力が抜けて白目を剥いている気がする。
「ぱぁぱのくびがとれちゃう!!」
ミアが神父様の足にしがみついたらようやく神父様の動きが止まった。
そして今ベンチの1つの向きを変えて四人で向き合って座っている。ミアはパパのお膝の上。
もちろん神父様は一人でだ。
神父様はお水を持って来て「とにかく落ち着きましょう」と言った。
うん、神父様以外はそんなに慌ててないよ?とりあえずみんな一口ずつお水を飲んだ。
「カッツェ、先程は取り乱してすみませんでした」
「まぁ、もう大丈夫なので……」
えー、パパ理由も聞かずに許しちゃうの!?こうなったらミアが聞いちゃうんだから!
「なんでぱぁぱをぐらぐらしちゃの?」
神父様は一度正面の浮き彫りに目をやってから口を開いた。
「あの時、あの祈りの時、ミリアンジェの手のひらから青白い光がすぅと浮き彫りの女神様に向かって飛んで行ったのです。それからすぐに今度は女神様からミリアンジェの手のひらに薄紫の光が舞い降りました。薄紫はセラスティア様の高貴な色です。あれはきっと女神様からの祝福に違いありません」
神父様はそう言うと、自分の耳の上の髪をそっと後ろへ流した。
「見えますか?」と、顔を横へ向けてくれる。
パパとママに比べると……
「ちょぴっと、とんがり?」
ミアのように長くしゅっとしてないけど神父様の耳は確かに少し尖っている。それを聞いた神父様は一瞬目を丸くしたけど、すぐに笑いだした。
「ははは、ちょぴっととんがり、は、いい表現です」
「神父様もエルフだったのか」
「知らなかったわ」
パパとママは顔を見合わせて驚いている。
「ちょぴっととんがり、の見た目通り私には普人の血の方が多いのです。祖父がエルフです。母は半分エルフでも父も普人なので私はほぼ普人と言えるでしょう。御存じかどうかわかりませんが、霊人は女神様と交流のできる種族と言われています。霊人としての資質が少ない私にでもミリアンジェの祈り、女神様との交流が見えました。……それでカッツェが預かったミリアンジェは30年ほど前に出奔したエルフの神子が父親ではないのかと思ったのです」
ちらりとパパとママがミアを見る。
うぅ、確かに女神様からの声が聞こえたけど、目をつぶってたからそんな光が出てたりしたなんて知らなかったよ?ミア何にもしてないよ?
「神子様の行方がわかるかも、と、焦ってカッツェにはひどいことをしてしまいました」
神父様は少し肩を落とした。
「それはもう気にしないで下さい。それよりエルフの神子様が行方不明というのは本当なんですか?」
「えぇ、本当です。エルフの郷の神殿にいたのですが、ある日姿を消したそうなんです」
「そんなこと私達が聞いてしまっていいのかしら?」
「かまいません、教会の者なら誰でも知っていることですから。もしミリアンジェを預けたエルフが神子様の特徴と一致していたら、彼の無事を神殿にお知らせしたいのです」
神父様の顔は真剣だ。
女神様から預かった愛し子より旅のエルフから預かった子供って設定の方がすんなりとみんなに受け入れられると思ってそうしたと思うのに、それで押し通すのは無理そう。
パパとママは顔を見合わせて、こくっと小さく頷きあった。
「……実はミアは旅のエルフから預かった子供ではないのです」
「嘘をついてしまってすみません……実は……」
と、かくかくしかじか。
ミアが実は女神様の愛し子としてお告げがあって預けられたと告白した。
昨日、愉快な名前の方から感想をいただきました。
感想をいただいたのは初めてだったので、お名前も含めて癒されましたw
ありがとうございました♡
いいね&ブクマ&評価して下さった方もありがとうございます。
書く力になります。本当に。