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ウィゼンベルク村とわたし#1

しばらく進んでいくとアップダウンが減ってなだらかな道になってきた。

教会の鐘のある塔のような建物が見えた。高い建物はそれぐらいのようだ。

外から見たかんじでは白い壁、朱赤の屋根の建物が多い。テレビで見た外国の風景みたい。

「ミアもうすぐよ」

「むりゃ!」

「村に入る前に牧場に寄っていくよ」

村を囲んでるらしい石積をパパは右へ進む。石積はせいぜいミアの身長ぐらいだから外敵から守るとかじゃなくて単なる「ここから村」の目印みたい。歩いていると木の柵が現れた。柵は向こうへいくと丸く膨らんで、もっと向こうはしぼんでゆく。石積を左にするとアルファベットの「D」のような形。石積と柵の間が牧草地のようだ。


「ヤギ!」

ぽつぽつとヤギがいるのが見える。

「もっといるよ」

「めえ~ぇ」

パパの言う通りその先にはたくさんのヤギがいた。みんなのんびり草を食んでいる。

一匹のヤギがこちらに近づいてくる。

「ヤギ兄!」他のより白いからすぐわかった。

ヤギママと頭をこっつんこして挨拶してる。「めえぇ」「めめぇ~」久しぶりって言ってるのかな。


「おぅ、カッツェ!久しぶりだな」

ヤギ兄ばかりを見ていたら突然太い男の人の声がしてびっくりした。

第一村人発見!

赤茶の髪を短く刈った日に焼けた人だ。

「あぁ、ダズ、久しぶり。今日は前に頼んでた交配をお願いしにきたよ」

ヤギママの頭を撫でてパパが言う。

牧場の人だった。

ダズさんはヤギママと背中に乗ってるミアを見て「はぁ!?」と驚いた。

「ちょ、おまっ、は?子供?エルフ!?ちょ、ヤギ白すぎね?え゛?」

どこから突っ込んでいいかわからなかったみたいだ。


「一目でエルフの子供だってわかるぐれぇだからマリッサの子じゃぁねぇよな、この子はどうしたんだよ」

「三年ほど前に旅のエルフから預かって娘として育てているんだ」

なんと、ミアはエルフから預かった子設定になっていた。


「ぱぁぱ、ちってるひと?」お友達なのかな?

「村の人はほとんど全員知り合いだね」

「ミアも今日の“ご挨拶”で顔を覚えてもらいましょうね」

「わかっちゃ!」

ダズさんの目をちゃんと見て「みあでしゅ、しゃんさいでしゅ、よろちくおねがしましゅ!」ママと練習したご挨拶をダズさんに披露する。

「お、おぉ、3才の挨拶に来たのか。よろしくな、オレはダズってんだ。パパとは幼なじみってやつだ」

「おしゃしゃなじゅみ」

ぶはっと笑われた。


ひとしきり笑い終わると、ダズさんは探るような目付きでパパへ言った。

「村長のところへは今から、だよな?」

「教会へ行ってからだね、ヤギは帰りに引き取りにくるからよろしく」パパはため息。

会話がよくわからなくてママを振り返るけど、ママも眉毛を下げて困った顔をしているだけでミアには何も言ってくれなかった。

「おぅ、じゃあ帰るまでに相性のよさそうなやつと合わせてみるわ。頑張れよ(グッドラック)

「だじゅしゃんばいばーい」軽く手を振ったら振り返してくれた。

ヤギママから降りてママに手を繋いでもらう。ヤギママはダズさんに付いていった。


さっききた道を引き返して村の入り口までくる。

とうとう村に入るよ。

入り口は石積が切れていて牧場みたいな柵があるだけで、特に門番のような人はいなかった。

入ってすぐは小さな広場みたい。

円形の何もない場所。そこから道なりに進んでいくと、途中からでこぼこだけど石畳になった。パパの引く荷車の音がじゃりじゃりからごとんごとんに変わる。右に左に民家。平屋や二階建ての建物。どの家も白い壁、朱色の屋根。あ、うちみたいな木のままのおうちも見っけ。

もっと進むと大きな円形の広場に出た。道は広場をぐるっと回っていて、そこからまた放射線状に3本の道が伸びている。広場には特に噴水や彫刻などはなくて、朝市かな?地面に布を広げて籠をおいてお店をしている。ざっとみて5店ぐらい。あれれ?みんな八百屋さんかな?

お客さんもごった返すほどの人はいない、せいぜい10~20人ぐらいかな。

でも、こっちへきてこんな大勢の人を見るのは初めてだ。なんなら本当にパパとママ以外の人がいたんだ。ぐらいの感想だ。さっきのダズさんはノーカンで。


「ふぁあぁ」

「ここがウィゼンベルク村の中央広場よ」

「ここを見るのは後にして先に教会へ行くよ。こっちだ」

ミア達に気づいた村の人がチラチラとこちらを見ているけれど、パパは気にしないで3本のうちの1本の道へ進んで行く。

それからしばらくしたら枝分かれした道へ入った。こっちの道は民家が少ししかないみたい。村の外れの方へ向かっているようだ。

石畳が切れた突き当たりが教会だった。ここも白い壁、朱色の屋根。素朴な作りだけど、建物の後ろに三階ぐらいの高さの鐘のある塔がある。十字架は飾ってないけれど、みりあの知っている教会とあまり変わらない気がした。




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