パパとママとわたし#15
次の日パパはお仕事はお昼からにすると言って庭に出た。畑を耕す鍬を持って水の流れている石積みへ向かう。お水が落ちてくるところの地面を鍬でザクザク掘り出した。
「ぱぁぱなにしゅるの?」
「せっかくお水があるからね、待たずに汲めるようにあそこの水桶をここへ持ってくるよ」
パパが指差したのは畑の隅の水桶。
そうだね、じょぼじょぼ溜まるのを待つより溜まったのを汲んだ方が早いね。
「だからここを平らにして、ついでに水桶がひっくり返らないよう少し掘っておくよ」
水桶はベビーバスぐらいの大きさだからそんなに時間はかからず地面はきれいになった。
畑まで行って水桶の中の水を作物の根本にかける。ミアも小さな木のカップでお水をあげる。そーっとね。みりあは園芸委員だったから、葉っぱじゃなくて根っこのところにかけるの知ってるよ。「そろそろ夏野菜は終わりになるなぁ」パパが呟く。
空になった水桶を荷車に積んで水場まで運ぶ。「荷車があって助かったな」大きさはベビーバスぐらいだけど、プラスチックじゃなく、分厚い木でできている桶はけっこう重そうだ。
短い距離だけどパパだけじゃ大変だもんね。でもこの荷車は借りてるのだからミアの“ご挨拶”の日に返すんだって。それから水桶をさっき掘ったところへ下ろしてグラグラしないか確認して回りを土で少し埋めて、できあがり。
と、思ったら違った。
パパはお水が吸い込まれる棒に一番近い水桶の横の下部分にぐりぐりとネジのお化けみたいな金属の道具で穴を開けた。そしたら今度はその穴に合う詮を薪を割ってナイフで削って嵌め込んだ。
栓をしたままにすると上からじょぼじょぼと流れてくるお水がどんどんと溜まっていく。
「ミア、水桶にクリーンしてくれる?」
「あい!くりーん!」
たちどころにピカピカになった。クリーンすごい便利だよー!セラスティア様、こんないい魔法使えるようにしてくれてありがとう!
いっぱいまでお水が溜まると、パパが栓を抜いた。そしたらお水は上からこぼれずに下の穴を通過して棒のところへ吸い込まれてゆく。
すごい!これならいつも桶の中は新しいお水だ!
「ぱぁぱ、しゅごい!!」
思わずぱちぱち拍手したら、滅多に見ない得意気な顔のあとで、すりすり、むにむに。をされた。
「でも1番すごいのはミアだねぇ。ママの水汲みがとても楽になったんだから」
「まぁまよろこぶ?」
「とてもね。ここなら雨が降ってても雪の日だってすぐお水が汲めるからね」
「まぁまがうれしいとみあもうれしー!」
二人で笑いあってすりすり、もにもに。
使った道具をお片付けしていたらお昼になったので、今日は3人で林檎を食べてパパは山へお仕事へ行った。