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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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夢見心地な日々

「ハツコイ……?」


お姉さん達はミアに「初恋よ」と告げた後は好きにしゃべりだした。


「そぉよぉ、つまりポーラに嫉妬しちゃったんでしょ?」

「神父様ってば何気に村の娘達の初恋泥棒だものねぇ」

「頭が良くて綺麗で物腰が優しいもの、憧れるのもしかたないわ」

「あー、あたしもカイに初めて恋した時の事、思い出しちゃう!」

「あの時のアナの粘り、すごかったわねぇ」


次々に会話が弾む、お姉さん達の声がどこか遠くに感じられる。


恋……?

ミアはピュイトに恋してる……?


え、え、でも、ピュイトは小さな頃からミアを見守ってくれてて保護者みたいなものだよ?

それって家族みたいに好きだってことじゃないのかな?


「は、初恋じゃないと思うけど……!」


お姉さん達の会話に割って入ったミアの声は思ったより大きくて、その声にお姉さん達はピタリとおしゃべりをやめた。



「なんでそう思うの?」


小首を傾げたアナお姉さんに同調するように他の2人も首を傾げる。


「だっ、だって、ピュイトは家族みたいなものだもんっ。家族だからミアのクッキーが一番だって思って欲しかったんだと思うっ、きっと!」


「ふぅーん?」


アナお姉さんは指を一本、口に当てて少し考えてからこう言った。


「じゃあね、想像してみて? 神父様に『好き』って言われてるところ。もちろん恋愛としての“好き”よ?」


ピュイトに?

ミアが?

「好き」って言われる?


瞬間、頭の中にペリドットの瞳を細めてミアに「好きですよ」と言うピュイトが現れた。

その声は柔らかくって甘くって……


「……うぅっ」


じわじわと顔に熱が上がってくるのがわかる。


何だろう、すっごく恥ずかしいけど、すっごくすっごく嬉しく思っている自分がいる。


胸がどきどきしてきゅうっとする。

だけどその、きゅうっは全然嫌な感じじゃない。

もしも、もしも、そんなのを本当にピュイトに言われちゃったら…………



「ほらね、それが答えよ?」


くすくすと笑うアナお姉さんは自分の頬を指差した「林檎みたいに真っ赤よ?」と、さらに笑う。


「何とも思っていない人に言われたって、そんなにならないわねぇ」

「そうそう! 私も隣村のミゲルに告白された事あったけど、困ったとしか思わなかったもの」


「何よ、そんな話聞いてないわよ!?」

「昔の話じゃないのっ」


お姉さん達はまた銘々おしゃべりを始めている。


思い出せば、ピュイトは困った時にいつも手を差しのべてくれていた。

キレイで優しくて、ピュイトとの暮らしはパパやママとは違った安らぎと幸せがある。

そういえば、ピュイトの喜ぶ顔を見るといつも胸がきゅぅとしてた。



ミアは……ミアは……ピュイトが好き。




自覚してしまうと、さらに恥ずかしい。


耳がぴこぴこと忙しなく動いてしまう。


「お、お、お姉さん達っ、内緒だからね!? 誰にも言っちゃダメだからね!?」


自分より早くピュイトへの恋心を見抜かれてしまったのも恥ずかしすぎて、涙目になりながらお姉さん達をじっと睨めば、3人共「この歳でそんなことしないわよ」と、どっと笑った。




「ただいま戻りました」


夜になってピュイトが帰ってきた。


「お、お、お、おかえりなっさいっ!」


いつもと同じでいたいのに心臓がドキドキドキ……と音を立てていて、上手くそれができない。


「ご、ごはんできてるからっ」

「いつもありがとうございます。では着替えてきますね」

「用意しとくっ」

「慌てなくて大丈夫ですよ」


挙動不審なミアを見てピュイトはミアが慌てていると思ったみたい。


ピュイトの顔を見た途端、どうしていいかわからなくなった。

なんで今までこの気持ちに気がつかなかったんだろう……。


ピュイトの役に立ちたいし、ピュイトに喜んで欲しい、ピュイトにミアの名前を呼んで欲しい、ピュイトの笑顔が見たい。


ミアの心はいつもピュイトに向かっていた。


「ダメダメ、いつも通りでいないと!平常心!」


だって、ミアはまだ子供としか見られていない。

悲しいけど、このドキドキしている気持ちはミアだけだもん。

せめてもう少し成長しないと、ピュイトには恋愛対象として見てくれないよね……。



「美味しいですね」

「よ、よかった」


ドキドキしすぎてほとんど味がわからない夕飯を終えて、そそくさとクリーンをかけてベッドへ潜り込んだ。


「いつか、もう少し先⋯⋯ミアがちゃんと大人になるまで、ミアはただの同居人だね」


それまでに、ピュイトにミアを好きになってもらえるように努力する!

今だって、恋愛の好きではないけど、ピュイトはミアを可愛がってくれてる。

だからきっと大丈夫。

そして、2人でずっと幸せに暮らすんだ。




自覚してしまえば、好きな人と暮らすのは毎日がとても楽しくて。

春の芽吹きも、夏の陽射しも、秋の収穫も、冬の暖炉の温もりも。

巡る季節を幾度か感じていたら、ミアが大人になる日はあっという間にやってきた。



その日は朝からお腹がしくしくと痛んで顔色が悪かった。

ピュイトはとても心配してくれて今日は一日ベッドにいることを約束させられた。


「頭痛もしてきた⋯⋯お薬飲んだ方がいいかな?」

起き上がった拍子に何かがジワリとして、慌ててお手洗いに駆け込んだ。



「これ、あれだ⋯⋯」


みりあの時には“生理”、こっちでは“月の印”と呼ばれている。

びっくりしたけど、ママにもルゥ先生にもアナお姉さんにも教えてもらっていたから、慌てずにすんだ。

汚れた下着をクリーンして、教わったとおりにする。


「こんなにお腹も頭も痛いなんて。エルフは1年に一回程度でよかった」


お部屋に戻って姿見の前に立てば、少し顔色は悪いけれど見慣れた美少女が見つめ返している。

シャンパンゴールドの金髪は長く伸ばしても艶々で、ホタルガラスの大きな瞳も相変わらずキラキラしてる。

ぷるんとした唇はリップいらずに潤っていて、頬は少しすっきりとしてきていて子供時代の終わりを感じさせる。



「大人っぽいとは言えないけど、大丈夫、ミアこんなにかわいいし、アナお姉さんも脈アリって言ってくれてたし」


甲斐甲斐しくピュイトのお世話をするミアのことを村の人が「小さな奥さん」ってからかった時もピュイトは嫌な顔しなかったし、何よりミアを見るピュイトの瞳はすごく優しい。

他の村の女の子を見るのとは違うと思うのは、自惚れじゃないと思う。

結局ポーラはピュイトに告白しないでとっくにお嫁に行ったし、ピュイトの事を一番にわかってて側にいるのはミアだしね!



「よし、体調がよくなったら告白! 決めた!」


そしたら居候じゃなくて、恋人として一緒にいられる。

最近はあんまりしてくれなくなったハグだってできるし、キ、キスとかもしちゃうかもしれないよね!?


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