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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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春色、虹色、春祭

アイナブルゴヤでのミアの毎日に、四日に一回のライの食堂のお手伝いと薬作りが加わった。


あの時に渡したお薬がよく効いて、ライの娘のリティは発疹の痕も残らずにキレイに完治した。

それを見た時間差で子供が流行り病にかかった近所の人達がリティのママに「何をしたの?」って聞いたみたい。

追加で分けてあげたミアの薬が評判になって、全然知らない人からも分けて欲しいってお願いされるようになっちゃった。

「薬師ギルドを通した方がいい」ってディノがアドバイスをくれたから、それからは薬師ギルドに持ち込むようになった。

赤い発疹の出る流行り病は命にかかわりはしないけど、いつもあちらこちらで罹ってる子供がいるみたいで、ミアのお薬は薬師ギルドでも大歓迎された。


食堂の常連さんと仲良くなったり、ディノのおうちの厨房でたくさん薬を作ったり、アイナブルゴヤでの半年は瞬く間にすぎていった。



「うわー、どうすっかな、埋まらねぇ」

夕飯ができたよ、とディノを呼びに二階へ上がると机に向かってディノが頭を抱えてる。


「どしたの?」

「あー、祭りのな出店のスペースがあと一つ埋まらねぇんだよ」


アイナブルゴヤは村と違ってほとんど雪は降らなかった。

だけどその代わり冷たい風が強く吹く。

その風が弱く暖かくなってきた頃に“春祭”をやるんだって!

ディノはお祭りの下町担当で出店の場所を割り振る係なんだって。

「ちょうど飲食と雑貨の切り替わるところだから場所が悪くて人気がねぇんだ」

ひょいと紙を覗き込めば通りの地図にたくさんの四角と名前が書きこんであって、その中の一つにはまだ名前がなかった。

ディノは頭をがりがりと掻きながら「どーすっかな……」と悩んでる。



「ねぇねぇ、じゃあさ、ミアがそこでお店やってもいい!?」

食堂のお手伝いで接客もだいぶ慣れたし、お祭りの屋台なら1日だけだし、きっとミアでもできる。

高校の学校祭で模擬店やったりするのやってみたかったんだ!


「出店料がいるんだぞ?……あ、金はミアなら問題無ぇか……何やるつもりだ?」

「まだわかんないけど、どっちでもいいならミアが作ったサンドイッチとかクッキー売ってもいいし、雑貨ならハンドクリームとか売ってもいいんじゃない? 村では手荒れによく効くって好評だったよ?」


「薬師の作るハンドクリームか……よし、それならいけるか……出店料は大銀貨3枚な」


ディノは名前のなかったところに“ミア”と書き込んでくれた。



お祭りまであと1ヶ月、何をするのか考えなくっちゃ!



「でね、そこは食べ物屋さんと雑貨屋さんのちょうど変わるところなんだけど、何のお店にしたらいいと思う?」

餅は餅屋という訳で、バイエル商会に何を売ったらいいのか聞きに来た。

店長のスタットさんは応接室で「血は争えませんなぁ」と、にこにことお話を聞いてくれた。


「そうですね、どちらの品物でもよろしいですけどもお嬢様が扱われるならば軽い物がよろしいでしょう。それから祭りでは春を感じさせる物がよく売れます」


「なるほど」


「飲食ならば春の走りの食材、雑貨や服飾でしたら春らしい色目や花の形の物などですね。それと、お嬢様は生活のためではないので売上は気になさらないかもしれませんが、周りの屋台にはない珍しい物であれば売れ残りは少なくなるかと」


珍しい物……

こっちでの珍しい物って何だろ?


バイエル商会の中をぐるっと見せてもらって、帰りに市場もぐるぐる回って考える。


サンドイッチ、串焼きにスープ屋さん、それに果実水やワインにエール、甘いパンにクッキーみたいな焼き菓子、スパイス屋さん……

お肉や八百屋さんまで食べ物はたくさん種類があるから珍しい物は難しそう。


それ以外だと、古着屋さんに、お鍋を売ったり修理するお店に、革製品にナイフや武器を売ってるお店、床屋さんに代筆屋さん。


生活にいるものは大体市場で揃うようになっている。

ここにないのは……そうだ、かわいいの!


お祭りなんだから生活に関係ない物のお店でもきっといいよね!

みりあが行ったことある夏祭りにもおもちゃやお面やヨーヨー釣りに金魚すくいなんかもあったし。


ミアみたいな子供から大人でも欲しくなっちゃう「せっかくのお祭りだから」ってつい財布の紐を緩めちゃうようなそんな物。


リボン? ふわふわのぬいぐるみ? レースのついたハンカチ?

うーん、どれもかわいいけど、珍しくはないなぁ。




考えながら歩いていたら、いつの間にか噴水広場まで来ていた。

この噴水は丘の上に貯まったお水がたくさんになると噴き出す仕組みなんだって。

ちょうどミアが来たタイミングでサアァーッと水が上へ伸びた。

跳ね上がった水玉が陽射しを受けてキラキラとしてキレイ。


これだ!


ああいうのを売ろう!

きっとみんなキレイだね。って言ってくれる!


よし、さっそく帰ったら準備するよ!

創造(クリエイト)祭りだ!





「ミアの場所はここだ。本当に1人で大丈夫なんだな?」

「うん、平気だってば。それにディノはお仕事なんでしょ? ほら早く行かないと怒られちゃうよ?」

最近のディノはお祭りの準備でとっても忙しそうだった。今日が本番なんだからあとちょっとギルドでお仕事頑張ってもらわなくっちゃ。


「よし、じゃ行くぞ? しっかりな」


小さな手押し車で折り畳みのテーブルと椅子を運んでくれたディノは両隣の人に「初めてなんで気にかけてやってください」と挨拶してから足早に歩きだした。


「もぉ、心配しすぎ」


少しむくれながらテーブルを組み立てていると右隣のおばさんがにこにこと「よろしくね」と声をかけてくれる。

おばさんのお店は小ぶりなジューススタンドでレモン水やジュースを売ってるみたい。

並べてある果物から甘い匂いがする。


「1人で準備できるかい?」

左隣のおばさんのお店は帽子屋さん。

リボンを巻いた麦わら帽子なんかを売っている。

見映えよく帽子を並べながらミアのことを心配してくれた。


ディノが言った通りここはちょうど境目なんだね。


「うん、大丈夫!」


てきぱきとテーブルをミアのスペースの真ん中に置いて、椅子を置く。

背負ってきた大きいリュックからアイボリーのテーブルクロスを取り出してテーブルへと掛ける。

控えめな光沢がいい感じ。

これは創造(クリエイト)じゃなくてバイエル商会の物。

「お嬢様はこのバイエル商会のお嬢様なのですから、お買い上げにならずともお持ち帰りしていただいてよろしいのですよ」ってスタットさんはお金を受け取ってくれなかった。


「何を商うか決められましたか?」って聞かれたけど、売れないと恥ずかしいから「ヒミツ!」って答えちゃった。


リュックから木製のディスプレイスタンドを取り出す。

L字になってて写真立てみたいにちょっと斜めに立て掛けられる。L字の長い方の上の方に浅くて細い溝がたくさんある。


これに見本を飾ればお客さんに商品が見やすいよ。


で、これがミアの売り物。


布の包みをリュックから取り出して、テーブルへと広げる。


じゃじゃーん!


ミアが創造(クリエイト)したのはペンダント!

革ひもに三センチくらいのガラスのペンダントヘッド。

1つ手にとって太陽にかざせば、雫形のペンダントヘッドは光を透かして深い青色をテーブルへうつした。

もちろん青色だけじゃなくって他の色のも創造(クリエイト)した。

紅薔薇みたいな赤、蜂蜜を固めたような黄色いの、エメラルドみたいな緑のに、熟した葡萄の一粒のような紫。

赤、青、黄、緑、紫の全部で5色。


それぞれ見本の一つをディスプレイスタンドにかける。


うん、並べるとますますキレイ!

春の光がガラスの中まで当たって色がますます鮮やかに見える。


“1つ銀貨3枚”と書いた紙をテーブルに置いて、風に飛ばされないように小さな陶器のうさぎを置いた。


そして自分用に創造(クリエイト)したペンダントをつける。

大きさと形は一緒だけど、ミアのは革ひもじゃなくて銀の鎖にした。

色は淡いラベンダー。

今日のお洋服は白いブラウスのフリルの襟と、淡いピンクのスカートで春らしくしてみた。


「準備できたっ」


最初のお客様はどんな人かな?

うきうきと待っていると帽子屋さんのおばさんから声がかかった。



「ちょいとお嬢さん、それをここで売るつもりなのかい?」




リアクション、ブクマ、評価くださった読者様ありがとうございます!

とてもうれしく、そして原動力となっております。

(o・ω・o)


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