パパとママとわたし#10
目を覚ましたらパパがいなかった。
ミアそんなにお寝坊さんしたのかな?「ぱぁぱは?」って聞いたら、「今日は朝早くから村に行ってるのよ」って。
「むりゃ」
「神父様にミアの魔法の事を聞いてくるのよ。あと、“ご挨拶”の準備もね。ミアもあと少しで3才だもの」
“ご挨拶”?
「ごあいしゃつ?なぁに?」
「初めまして、と、無事に3才になりました。って教会に挨拶に行くことよ。あと、村長さんにもご挨拶して村の一員に加えてもらうのよ」
日本の七五三みたいなものかな?
「みあむりゃいく?」
「ええ、パパが今日“ご挨拶”の日を決めてくるわ」そう言ってママは微笑んだ。
おぉー。ついにおうち以外の場所へ行けるみたい。“剣と魔法”の世界の村はどんなかな?楽しみっ!
今日も洗濯物を干しているママの周りをうろちょろしながら遊ぶ。
ヤギママが小屋から出てきた。いつもならすぐ後ろを付いてくるヤギ兄がこない。気になって小屋まで見に行くと、中にもヤギ兄はいなかった。
大変!
「まぁま!ヤギいないいないよ!」
ママはちらりとこちらを見ると
「パパが村に連れて行ったのよ」と知っていた。
なんだ、びっくりした。ヤギ兄はミアより早く村デビューをしたらしい。
ヤギにもたまにはお散歩が必要なのかな。
その日は夕方になる少し前にパパは帰ってきた。小さな荷車を引いている。荷車の上には色々な物が載っていた。
おでこには汗が見える。
「ただいま、ミア」
「おかえり、ぱぁぱ」
お約束の抱っこにすりすり、むにむに。すりすり、むにむに。すりすり、むにむに。
「ミア、今日は荷物がたくさんあるんだ、おうちに運ぶの手伝ってくれる?」
「しゅる!」
パパがミアに持たせてくれたのは一番小さい袋。それを持ってママを呼びに行く。
「まぁま~ぱぁぱよ~!」
おうちから出てきたママは「あらあら大変」と言いながら、パパと一緒に荷物をおうちに運ぶ。いつもごはんを食べるテーブルが荷物でいっぱいになった。麻の様な袋や布で包んであるのや、野菜がそのまま籠に入れられている。ママが一つずつ開けて確かめている。一番大きな袋は小麦粉だった。茶色がかった粉が入ってる。パンはこれで焼いてるのかな。ミアの運んだ小さい袋は塩が入っていた。「小麦粉も塩もこれだけあればしばらく持つわ」と、ママは嬉しそう。次は油紙に包まれた物がいくつか入っていた。開けてみると、なんと大きな固まりのベーコンにずらずらと繋がってるソーセージ!薫製のいい香りがする。思わずお鼻とお耳がピクピクしちゃう。もう1つの油紙には黄色い物。四角くてスーパーで売ってた食パンぐらいありそう。バターかな?チーズかな?こんなご馳走、この世界へ来て初めてみた。他の袋にも何か細々と入っているようだ。ママもさっきよりもっと嬉しそうなお顔だ。
「それからこれはミアの“ご挨拶”用に」
パパがママにカバンから取り出した物を手渡した。四角く折り畳まれた水色の新しい布地だ。ママが広げてミアに当ててくれる。
「とってもよく似合う色だわ。これならいい晴れ着が作れるわ」
「みあの?」
「そうよ、“ご挨拶”に行くのだもの、きれいにしなくっちゃ」
「マリッサにも何か、と思ったんだけど冬支度を充実させるために使ってしまったんだ。ごめんね」
「いいのよ、そんなこと。それよりこんなにたくさん食べ物があってうれしいわ。今年はミアもいるし食べ物の心配をしなくていいのはとてもうれしいもの。でも、大丈夫なの?こんなにたくさん。予定よりも多い気がするのだけれど……」
「あぁ、思ったより高く買ってくれたんだ。毛並みが真っ白ですごくいいって言ってくれてね。あの子ヤギ、前からあんなに白かったかな?」
パパと一緒に村に行ったヤギ兄は一緒に帰ってこなかった。そっか、そういうことだったんだ。
ミアの為に買い物をしてくれた嬉しさと、母と子を引き離してしまった悲しさでどんな顔をしていいかわからない。
「ぱぁぱ、やぎどぉこ?」
行方が気になって聞いてみる。まさかもうお肉になってたりするのかな。テレビで見た沖縄のヤギ汁が頭に浮かぶ。
「牧場っていってね、他にもヤギがたくさんいるところだよ。子ヤギといってももう大人だからね、そこでお嫁さんを探すんだ」
よかった!お肉じゃない!
そして、新しい家族を作るんだ。それならちょっとだけさみしいのですむかも。
一人娘をお嫁に出した、施設の職員の鈴木さんも言ってた。
「家から出ないのも心配だし、出たら出たで心配だし」って。
ヤギママには明日林檎をあげて、ヤギ兄の事を教えてあげようっと。
驚きです。
本日(4/23)異世界転生/転移・ファンタジーの日間ランキングで197位に入っていました。
選挙カーに乗り込んで誰彼構わず手を振って、これも皆様のおかげですっ!ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!と連呼したい気分です。
続けて読んでくださってる方も、今日初めて読みましたの方も、心よりお礼申し上げます。