初めまして、おじさん!
「サンディノおじさん!!」
タタっと駆け寄ると、おじさんはぎょっとして動きを止めた。
けど、すぐに「……ミア、か?」と名前を言ってくれた。
「うんっ、ミアだよ! 初めまして!!」
近くでよく見れば、少しずつバランスは違うけど確かに兄弟と言えるぐらいパパとおじさんは似ている。
生成り色のシャツに水色のベスト、茶色のズボン。
シャツの首回りが少しキツそうなのが気になったけど、パパと同じ優しそうな雰囲気!
よかったぁ!
そうそう、パパとじぃじから手紙を預かってきてる。ごそごそとポケットを探るフリをして指輪から手紙を出した。
「これね、お手紙!」
「おぅ、読むから、ちょっと待ってろよ?」
折り畳んだ紙をかさりと広げて、おじさんは「ふむ」と読み始めた。
「間違いなく兄貴と親父の字だな」
ざっと目を通すと手紙は元のように畳まれて胸ポケットへしまわれた。
「パパとじぃじ、何て?」
「ミアをくれぐれもよろしくだとよ」
そう言っておじさんは改めてじっとミアを見た。
「くそっ、前に来た手紙にも“かわいい娘”と書いてあったが、親の欲目じゃなかったのかよ。どーすんだよ、街中歩くのにも護衛がいるぞ」と短い髪をわしゃわしゃしながら、ブツブツ呟いた。
「この子は見た目は小さいですが実際は14才ですし、魔法が使えるので心配ありませんよ」
ピュイト、小さいは余計だよ。
「うん、ミアね、ここにくる時にも盗賊を落とし穴に落っことしたし、街中を歩くぐらい平気だから大丈夫」
お世話になる上に心配までかけたらダメだよね。
ミア自分のことはちゃんと自分でやるから安心してほしい。
「サンディノ、そろそろ仕事に戻って」
さっきのお団子のお姉さんがおじさんに声をかけた。
そうだった、おじさんはお仕事中だった。
「おお、悪ぃ、っても今日は後、報告書書くだけだけどな」
「じゃあ、早く済ませちゃってよ」
「わかってるって。まだ仕事が残ってるんだがミア達はどうする? ここで待つか?」
それはちょっと退屈そう。
近くをブラブラしておやつを食べるのもいいかも。
「そしたら、ちょっと外へ行ってこようかな」
ちらっとピュイトを見れば、こくりと頷いてくれる。
「おぅ、夕方前には終わらせるからな」
「あ、そしたらね、ミア、お金をもらいたいの」
ここまでの旅費はパパがピュイトに預けてくれてたから、ミアはお金持ってないんだよね。
お疲れ様ってピュイトにおやつをご馳走してあげたい!
「そーか、悪ぃ、そうだよな」
おじさんはズボンのポケットをごそごそしだした。
「ううんっ違うのっ、ミアはミアのお金をもらいたいのっ」
“くるり”が売れたお金はいつでも商業ギルドでもらえるよってバイエルのおじさま言ってた。
いくらぐらい預けられてるのか知らないけど、おやつぐらいは食べられるはず!
慌ててミアもポケットをごそごそして、指輪から取り出した商業ギルドのカードを差し出した。
「お前、商業ギルドの会員なのか? しかも銀カードなんて…………」
ミアのカードを手に取ったおじさんは、次の瞬間変な声をだした。
「ハァ゛ッッ!? ぷ、プ、ぷ、白金!!!!」
「え!?」
お団子のお姉さんもその変な声を聞いて、ミアのカードを見て、大きく見開いた目をさらに大きく見開いた。
「ちょっ、商談室借りるぞっ!」
右手にカードを握りしめたおじさんは、空いてる左手でミアの腕を掴むと階段へと向かった。
お姉さんが首を赤べこみたいに振っているのが横目で見えた。
ピュイトは何も言わず後ろをついてきてくれてる。
なら、安心だからこのままでいいや。
そのまま引きずられるように、二階の個室に連れ込まれた。
中には小さなテーブルに椅子が4つ。
おじさんは奥へ行くと椅子をガタガタと鳴らしてどっかりと座った。
ミアはおじさんの正面にピュイトが引いてくれた椅子へ座った。
「どういうこった? 何で村から出てきたばっかの子供が白金カードを持ってんだ?」
「白金カード?」
ミア、バイエルのおじさまに「はい、これがミアちゃんのだよ」って渡されただけなんだけど。
「わかってねぇのかよっ、ギルドのカードは下から順に、木、青銅、鉄、銀、金、白金、魔鋼鉄になってんだよ、つまりお前は上から2番目だ。白金カードを持てる商人なんざ、ほんの一握りなんだぞ」
おじさんはさすが商業ギルドの職員さんだね。
ちょっと怒りながらも、ちゃんとカードの説明をしてくれた。
白金カードは上から2番目なんだ。
でも、そんなこと言われてもミアは何にもしてないんだけどなぁ。
どうやって説明しよう?
ちらりと横に座ったピュイトを見やると「しょうがないですね」みたいに見返された。
「ミアについては、旅の間の保護者の私が説明いたしましょう」
ピュイトがお話を代わってくれた。
「…………マジか、え、兄貴の娘がバイエル商会の娘で“くるり”の考案者だと?」
ピュイトはすらすらすら~と、みんなで決めたミアの生い立ちを話してくれた。
ミアはもう正式にバイエル商会のおじさまの妹になっている。
なにをどうしたのかは知らないけど、養女じゃなくて、ちゃんと血の繋がった婚外子って事になっているらしい。
「そういう訳で、ミアの会員カードは白金なのです」
「ピュイトのは?」
一緒に商業ギルドに入ったし、ピュイトにも“くるり”のお金が入ってるよね?
「私のは銀ですよ。ミアは“くるり”の配当金よりも、エルフ王家のお気に入りで、バイエル商会の末娘というのが白金カードの理由でしょう」
見せてもらったピュイトのカードは銀色でピカピカしてるんだけどミアの白金カードに比べると少し黒っぽく見えた。
「ふぅーん?」
「待て待て待て、エルフの王家が何だって!? なんかスゲェ事を聞いちまった気がするんだが……」
おじさんはまた髪の毛をわしゃわしゃしだした。
「リデルはね、王子様なんだけど、ちゃんとミアのお友達なんだよ。エルフの国へ行った時はねリデルのおうちのお城でお泊まりさせてもらったの」
リデル元気にしてるかな?
時々、伝言鳥のやりとりをしていたけど旅の間は途絶えてた。
落ち着いたらアイナブルゴヤにいますって教えてあげよう。
「あーもういい……」
おじさんは髪の毛をわしゃわしゃするのを止めて、ふんっと大きく鼻から息を出した。
「……で、金を下ろすんだな?」
「うんっ、おじさんは商業ギルドの職員さんだからできるんでしょ?」
「おー、できるぞ。いくらいるんだ?」
「えっとね、とりあえずおやつが食べられるぐらいと、お買い物ができるくらい?」
アイナブルゴヤの物価をまだ知らないから、いくらぐらいいるのかイマイチわからない。
「じゃ、待ってろ。手続きしてきてやるから」
「はーい、お願いします」
おじさんは何だか覚束ない足取りで部屋を出ていった。
ちょっとして戻ってきたおじさんはテーブルに大銀貨を5枚置いた。
あれ、なんだかさっきよりも疲れちゃってる感じ?
「こんだけありゃ、腹一杯になるだろ……」
「よかった、ちゃんとお金入ってたんだね」
「お前、入ってるかどうか気にするような残高じゃねぇだろ……俺はあんな金額初めて見たぞ」
「ただ街へ出てきた姪っこの世話するだけだと思ったのに、何か面倒なことになりそうな予感がひしひしとするな……」おじさんはテーブルに突っ伏してブツブツと何か呟いてる。
お仕事で疲れてるのかな。
「おじさんにもおやつ買ってきてあげるから、 それで元気だして!」
立ち上がってお部屋を出ようとドアノブに手をかけたら「甘いのはいらねぇ、買うなら肉串にしてくれ。それと“おじさん”って呼ぶな。一気に年取った気分になる」と、呼び止められた。
「わかった、肉串ね! “おじさん”じゃなかったら何て呼ぶ?」
パパより若いけど、もう“おじさん”って呼ばれてもいい年齢だと思うんだけどな。
「“ディノ”だ」
「ディノ」
「兄貴も親父も家族はみんなそう呼ぶ」
……ミアにまた家族が一人増えた。
うれしいっ!!
「わかった! 美味しい肉串を選んでくるから待っててね!!」
前話からエピソードタイトルをつけるのにAIさんの力を借りています。
何個か候補を出してもらうと、自分では考えつかないステキなのが出たり、自分の考えたのと同じようなのだとうれしくなったり、的外れなのもそれは違うな、と物語の要点を再確認できたりしてとても楽しいです。
あ、一応本文は未熟ながらも自力で書いておりますので、どうか引き続き応援よろしくお願いします
m(_ _)m




