パパとママとわたし#9
わたしにも魔法が使えることがわかってウキウキだ。色んな魔法を使ってみたいけど、とりあえずお手伝いに使える魔法ができるのがわかって少しほっとした。次は洗濯物を“クリーン”してみようかな。
ビンのクリーンも食材のクリーンも終わってしまって、「ミアはもう遊んでていいわよ」って、キッチンを追い出されちゃった。つまんなくなってお庭に出る。また乾燥野菜の見張り番でもしようっと。
ん、よしよし、ミアが離れてる間に鳥がきて食べたりしてないな。あれ?ヤギ兄がいない?ヤギ小屋の方から鳴き声がする。林檎を食べてる間に乾燥野菜を食べちゃわないように、ママが小屋に入れたんだ。ヤギママはまだのんびりと畑の周りの草を食べている。
そうだ、いいこと思い付いたかも!
ヤギママに近づいて……
「くりぃーん!」そしたら一瞬で、ちょっと臭くて黄色っぽい色をしていた毛があっという間に真っ白で艶々な毛になった。臭かった臭いも消えている。
クリーンは生き物にも使える!
小屋に行ってヤギ兄にも「くりぃーん!」ヤギ兄も真っ白艶々だ。
生き物に使えるなら、今日は寝る前にパパとママにクリーンしてあげようっと。
それから夕方まで林檎の樹の周りをぐるぐるまわって遊んだ。何でちっちゃい子は回るのが好きなのかな?
なんて思いながらもやめられない。
ちょっと疲れて林檎の樹を背もたれに座り込む。背中がふんわりと温かい。
「ミーアーー!ただいまー!」
パパだ!お庭の向こうにパパがいた。
「ぱぁぱーーー!」
ダッシュでお迎えだ。
丁度庭に入るところで膝をついて両手を広げてパパは待っている。
ダッシュの勢いのまましがみついた。
すりすり、むにむに。すりすり、むにむに。すりすり、むにむに。
「あのにぇ、きょうね、みあね、しゅごかったのよ!むしさんしっしっ!と“くりーん”したの!」
「?」
どや顔でパパに報告したのに上手く伝わらない。パパは庭に出てきたママへ顔を向けた。
ママはパパにわたしが“クリーン”を使えること、そして、それで保存食作りを手伝ってもらえたことを話した。ママと同じで大はしゃぎすると思ってたパパは真面目な表情で言った。
「ミア、“クリーン”を使った後、だるくなったり頭が痛くなったりしていない?寒くはないかい?」
抱っこされたまま首やおでこに手を当てて熱を計られた。ハッとしたママの顔がみるみる青ざめた。
「いちゃいのにゃいし、しゃむいのもにゃいよ?どちて?」
「魔力を急に使いすぎると、だるくなったり頭が痛くなったり、寒くなったりするんだって聞いたことがあるんだ。パパにもママにも魔力がないからミアがそうなる加減がわからないんだ」
「みあ、ぜぇんじぇんへーき」
「そうか、ならよかった。でも油断しちゃダメだよ?最悪、魔力切れで死んでしまう人もいるらしいから」
「わかっちゃ!」
そっか、魔力が切れるとそんな大事になっちゃうのか。それは怖いね。でも自分では魔力が減った感じも身体の不調も全然感じないなぁ。そもそも魔力ってどうやって感じるんだろう?
「ミアっ……ミア、ミア……」
泣きそうな顔のママ。ぎゅっと抱きしめられて「ごめんね」だけを繰り返してる。
「だいじょーぶよ?どっこもいたいのないよ?まぁまのおてちゅだい、たのちかったの。またあちたもやろうね?」
ママのあたまをなでなでしてあげる。
「明日は“クリーン”を使ってはダメだよ。パパが村の神父様に魔法のことを聞いてくるから、パパがいいと言うまでは使わないと約束して」
せっかく魔法が使えたのにつまんないけど、そんなに心配ならしょうがない。
「ん、やくちょく」
夕飯を食べて、いつもと同じように寝る準備をする。
薄緑のランプを灯しみんなでベッドへ入る。いつもと同じでうとうとしながらパパとママのお話を聞いている。
「カッツェ……私、気がつかなくてごめんなさい。ミアを危険な目にあわせてしまうところだったわ……」沈んだ声のママ。
「僕達には魔法が使えないからね、思い至らなかったのもしょうがないよ」
「ミアに何も無くて幸運だったわ」
「ミアのことも心配だけれど、僕はマリッサが悲しむのはもう見たくないんだよ?」
いつも優しいパパの声、今はいつもよりもっと優しい。
「カッツェ……」
ママの声はまた泣きそう。
ミア越しにパパがママを抱きしめてるみたい。ミアも一緒にぎゅっして欲しいけど、眠たくて体が動かないや。
明日の朝、いっぱいぎゅってしてもらおう。
おやすみ、パパ、おやすみ、ママ。




