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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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173/214

#45 ミア薬師になる!#5

ゴリゴリゴリ……

グツグツグツ……

カチャカチャカチャ……


ルゥ先生に案内されてお薬を作るためのお部屋に見学にきた。

ネリーさんに「ここにいる人はみんな先生だと思って何でも聞いてね」って言われたから、全員が“先生”だと紛らわしいから、れかるぅすとふぉーねから呼びやすいところだけ抜き出して“ルゥ先生”って呼ぶことにした。

ルゥ先生は「何でもいい」って。


お薬を作るお部屋は右と左の壁が全部お薬の材料を入れる引き出しになっていて、前には高いところに開け閉めのできるガラス窓が3つ。

その窓の下にはカウンターのように長い机がある。

背中に隠れていて手元はよく見えないけれど、何かを擂り潰すような音や、小さなお鍋で何かを煮ている人、できた薬を入れるためかな?茶色い瓶を並べる人もいる。

なんだか小学校の理科室みたい!



「ここで薬を作る。が、キミはまだ薬師ではないからここでは作らない。隣の練習室へ案内する」


ふむふむ、お仕事の邪魔したらダメだもんね!

すぐ横の練習室は左側の半分だけが引出しになっていて、後は隣とほぼ一緒だった。


「キミには一般薬師を目指してもらう」

「いっぱん?」

「そうだ、薬師には二種類ある。“一般薬師”と“特級薬師”だ。一般は決められた種類の薬だけを作る。一般にも一級、二級、三級とあり級が上がるごとに作れる薬の種類が増える。進級には薬師ギルドの決めた条件を満たす必要がある」

「なるほど」

「“特級”は患者の容態に合わせて薬を調合することができる。が、医師のように手術などはしない。外傷ならば多少の手当ては許されているが」

「ミアのママはウェルツティン先生にお腹にできた腫れ物を取ってもらうの」

「師匠はエルフのみならず普人の治療もおできになるからな。もちろん医師も特級薬師の資格を持っている」

「ルゥ先生も?」

「もちろんだ」


「ねぇ、ルゥ先生、ウェルツティン先生はママの腫れ物を魔法を使って少しずつ取り除くって言ってたけど、普人のお医者さんはどうやるの?」

「できない。肌の出来物などであれば強引に刃物でなんとかするであろうが、内臓となれば服薬治療しか普人にはできない」


「そうなの!?」


「キミの母は本当に本当に本当に運がよかったのだ。一人でそのような難しい手術をこなすのは師匠でなければできなかったんだぞ」


そうなのかぁ、ミア、ママは普人で魔力がないからすっごく時間がかかるだけなのかと思ってた。

いまいちピンときていないのが顔に出ちゃったみたいで、ルゥ先生はわざわざ顔をずいっと近づけてから言った。

「いいか? 事前の魔力に慣らすのも下手がやれば余計に衰弱を招く。ようやく魔力に慣らしてからも“痛覚遮断”に“精神安定”に“透視”に“切除”と一人で魔法をいくつも重ねなければならないのだぞ?」

「それって大変なの?」

「4つ同時になど師匠にしかできん。普通は何人かで手分けしてすることだ」


そういえばみりあが見たドラマでも手術のシーンでは何人もの人がぐるっと患者さんを囲んでいたっけ。

ミアのお家に来たのが、ウェルツティン先生じゃなければママは元気になれなかったのかも。


「ウェルツティン先生はすごい。本当に本当にすごい!!」

「そうだ師匠は本当に本当に本当にすごいのだ。キミにもわかってもらえてうれしいぞ」


「まずは基本の薬草の刻み方から。薬草や作る薬の種類によって、細かければ細かいほどよい物もあれば、ちぎっただけで使うこともある。それは“鑑定”でわかるか?」ルゥ先生は引き出しから乾いた薬草を取り出してミアの前に置く。


“鑑定”!


『咳止め草』

「うん、これはものすごく細かく擂り潰すってでるよ。ちゃんとしないと薬効がでなくてダメなんだって」

「そうだ。そこまでわかる鑑定なら座学は実践をしながらでも平気だな」

白い陶器のすり鉢に乾いた薬草を手で砕きなから入れると先生は手際よく同じ白い陶器の棒でごりごりと擂り潰す。

慌ててすり鉢を両手で挟むようにして支える。

「ほぅ、気がきくな」

「ミアおうちでもお料理のお手伝いしてた」

「そうか、薬作りは料理とも似ている工程がある。薬師の認定には決められた数を決められた時間、期間で作るというのもある。手際の良さは有利だぞ」

「はいっ」


ルゥ先生は粉になった薬草を今度はあらかじめ火にかけていた小さなお鍋に入れた。

ぼこぼこと沸騰したお湯が一瞬ぶわっとふくれる。

「こうなるから、気をつけろよ」

「はいっ」


お湯はすぐに薄い茶色になる。

柄の長いあんまり窪みのないスプーンでぐるりとかき混ぜて、それをミアにずいっと差し出した。

「味見して覚えろ」

ぺろっと舐めてみると、ちょっぴり苦い。

別のスプーンで味見したルゥ先生は「よし」と呟いた。

「これを冷ましておしまいだ。初めに覚える一番簡単な薬。“咳止め”だ」


“鑑定”!


『咳止め薬◇品質良◇少し苦い◇口に含んで上を向き、しばらくしたら飲み下す』


お口に入れて少し待ってなきゃいけないのか……

お口に入れてる間に咳が出そうになったらどうするのかな……


「これ、飴にしちゃえばいいのに」


みりあもお薬を飲むほどじゃないけど、咳だけが出る乾燥がひどい日なんかには、のど飴をもらって嘗めたりした。

少しいがいがした喉がミントで、すーっと気持ちよくなった。


「なに!?」


小さい声で呟いたつもりだったのにルゥ先生に聞こえちゃったみたい。


「わっ、生意気言ってゴメンなさい!」


「いや、それ、いいぞ! そうだ、何で今まで気がつかなかったんだ! もう少し煮詰めて飴にしてしまえば薬は少しずつ喉を通過するっ!」

「ミントを入れると、すーーっとして気持ちいいよ?」

「うむ、それもいいな。砂糖自体にも保湿効果が見込まれるし、ミントで喉の熱も多少和ぐ」

「飴にできる?」

「どれだけ煮詰めるかは要検証だが、難しくはないだろう」


茶色の薬瓶にクリーンをかけながら「いや、根本的に見直して煮出す葉の量を倍量にしてみるのも手か……」と、ぶつぶつ呟いていたルゥ先生だけど急にこちらへ向き直った。



「……なぜ飴にしようと思った?」

「鑑定で口に含んでしばらく上を向くってでたけど、咳を我慢しても、むせても苦しいし、それに小さい子は苦いのキライだから」



「……そうか」


「それがどうかした?」


「いや、キミは薬師に向いていると思ってな…………師匠の弟子は私よりキミかもしれんな」


ルゥ先生の表情は変わらなかったけど、その声はさっきまでと違って少し元気がなくなってる。


「……なんでそんなこと言うのかわかんないけど、ミアが教わっているのはルゥ先生だし、ウェルツティン先生はミアに弟子がいるって言ってたよ? ウェルツティン先生はルゥ先生のことちゃんと弟子だって思ってるんだよ」


そうミアが言ったら、ルゥ先生のお顔はみるみるうちに真っ赤になった。

「師匠が私のことを“弟子”と……?」


“出来の悪い”ってついてたけど、それは今は言わなくていいよね。

でも、主席って確か一番って意味だよね?

なのになんで“出来の悪い”って言ったのかな?

あ、よく学校でよそのお母さんが言ってた「うちの子は出来が悪くって……」ってアレだ!

本当は自慢したいんだけど、直接言うといやらしくなるからそういう言い方するんだって翔お兄さんから教えてもらった!

大人って複雑!



「ルゥ先生、次! 次の薬を作るよ!!」


いつまでも顔を赤くしたまま固まってしまっているルゥ先生の袖を揺さぶれば、はっと我に返った。


「よーしっ、次だ! 師匠に恥じぬ薬師になれるようにビシバシいくぞ。キミは私の弟子、つまり師匠の弟子の弟子、孫弟子になるんだからな!」


「はいっ」


お久しぶりでございます。

大変、大変お待たせいたしました。

見捨てずに読んでいただいてありがとうございますっ!


感謝、感謝でございます( ;∀;)


誤字報告いただいた読者様、ありがとうございました。大変助かりました~。

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