パパとママとわたし#8
何度朝がきてもパパとママはちゃんといる。慎ましい、だけどとっても幸せな毎日を過ごしていたら、いつの間にか季節の変わる頃になっていた。こっちの夏は日本みたいに蒸し蒸しベタベタしなくてとても過ごしやすかった。まだやわやわなミアのお肌にあせもとかできなくてよかったよ。そして朝と夜に涼しい風が吹くようになった。きっともうすぐ秋になるんだ。
ミアも少しずつ成長してる。おしゃべりを頑張っていたら、だいぶ上手に話せるようになった。
今日のミアのお仕事は乾燥野菜の見張り番!
ママが洗ったり茹でたりしたお野菜が庭に笊に広げて干してあるの。たくさん取れる夏に準備しておくんだって。
今日はカボチャを蒸してスライスしたのがたくさん干してある。お日さまにたくさん当てて、からからにして冬までとっておくんだって。
ここには缶詰めや冷凍食品は売ってないからママが保存食を手作りする。
スーパーで何でも手に入った日本とは大違いだね。
ママはキッチンでビンを煮沸消毒してる。施設の須藤さんも「みりあちゃん、食中毒になりたくなかったらきちんとお肉やお魚に火を通して、まな板や包丁を殺菌するんだよ」って漂白剤につけたり、煮沸消毒をせっせとしてた。
しばらくしたらトマトの酸っぱい匂いが外までしてきた。トマトソースかな?ちょっとおうちの中を覗いたらママはくるくるすごい勢いで色んな作業をしていた。
ミアも大事なお野菜に虫が寄らないように、鳥さんが食べに来ないように、一生懸命見張るよ!
あとヤギ兄も要注意だね。
お昼になって、ママと林檎を食べながらお話しする。
「みあね、むししゃん、しっしっ!ってちゃーんとした!」
「ありがとう。ミアのおかげで悪いものがつかなくて嬉しいわ。今年の保存食は長持ちしそうよ」
「まかしぇて」
「魔力があって、クリーンが使えればもっと楽なのよねぇ。ミアはエルフだから大きくなったら使えるといいわね」
「くりぃーん?」
「色んな物をきれいにする魔法なのよ」
おしゃべりしながらあっという間に林檎を食べ終わる。
食べ終わって空になったお皿に
「きれぇになぁれ。くりぃーん!」
って言ってみた。ミアは「あらあらミアにはまだ早いわよ、ふふふ」「お手伝いしたかったの。てへっ☆」っていうのを予想してたのに、目の前のお皿は一瞬青白い光を放つと、少しだけついていた林檎の果汁が消えていた。
ママは無言でお皿を見つめて、そしてキッチンからお鍋を持ってきた。鉄製の黒いずっしりした囲炉裏にかけるやつだ。さっき作ってたトマトソースの残りが少しこびりついている。
「ね、ね、ミア、もう一回、さっきの“クリーン”やってみて?ね?」
ママの目が真剣だ。
「き、きれぇになぁれ、くりぃーん」
ピカピカになったお鍋をイメージしてクリーンと言ってみる。パァッと光って、トマトソースだけじゃなく直接火に当たって煤で焦げついた鍋底もつるっと新品のようになった。
「「……!」」
その後のママのはしゃぎっぷりはすごかった。いつもはやさしく抱き締めてくれるのに、ぎゅむぎゅむいつもの倍ぐらいの力で抱き締められて、ほっぺもおでこもちゅっちゅちゅっちゅのキスの嵐だし、ミアを抱っこしたままクルクル回り出すし、最後は両手を掴んでステップをしてダンスもどきを踊ってた。
ひとしきりはしゃいだ後は保存食作りを再開したけど。ミアも今度はちゃんとしたお手伝いができたよ!ビンとお野菜に「クリーン」いっぱいした。須藤さんの言葉を思い出して追加でこっそり「殺菌!」もしておいた。効果があるかはわからないけど、クリーンはちゃんとキレイになってたんだから、もし効果がなくてもダメ元だしね。
やっと“剣と魔法”の魔法がでてきました。
定番ですが主婦に一番うれしい&お手伝いに一番向いてる魔法ではないかと思います。
“クリーン”私も使いたいですw
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