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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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#37 リデルと街歩き6

怒られちゃった。


聖石をしまった後、落ち着くためにアトラスさんにもう一杯お茶を淹れさせたリデルが最後の一口をくいっと飲み干したら、お説教が止まらなくなった。


「ミアはなぜそんなにうかつなのだ?」とか「自分の立場をわかっていない」とかノンストップであれやこれや言われた。


ようやくリデルの勢いが弱くなってきたと思ったら今度はアトラスさんからも「まさか聖石でお支払をしようとするなんて」とか「一瞬大それた夢を見てしまったではないですか」とか言われた。

ミアはただ足りないお土産代を払いたかっただけなのにね?



「王妃様からお金は気にせず買い物をしてもらうように言いつかっておりますので、気にしないで大丈夫なのですよ」

「母上に言えば、喜んでその10倍でも20倍でも渡してもらえるから遠慮などしなくてもよい。わかったか?」


それに甘えて本当にいいのかなぁ?


「……はーい……?」


「なんだそのわかったようなわかってないような返事は………」

リデルは大きなため息をついた。

そしてアトラスさんのお父さんに視線を向けると「メルチス、ミアに関して一切の他言を禁ずる」と言った。


アトラスさんのお父さんは「聖石の個人所有だなんて、他言しても信じてもらえませんよ」と笑って、それでも「御意」とエルフの礼をとった。


「……それだけではないがな。……ほら、もう全部指輪に入れてしまえ」

リデルが犬を追い払うかのように手をしっしとする。

「わかった」

テーブルのお土産の山に指輪を近づけると、吸い込まれるようにみんな消えていく。

何回やっても不思議。

後で小麦粉も入れるけど、重くたってかさ張ったって生物(なまもの)だってこの指輪に入れておけば持ち歩けるなんて、本当に便利!

ジーンに感謝!


アトラスさんのお父さんはミアの指輪に目を止めると「ミア様の“魔法収納”の指輪は王家からの借り物ですか?」と聞いた。

「え? これ? これはね、ミアのだよ?“魔法収納”じゃなくて “異空間倉庫”っていうんだよ! 何でもどれだけでもしまっておけて便利なんだよっ」


「何でもどれだけでも……?……まさか“状態保存”までかかっているのですか!?」


「父さん、他言無用ですからね」


アトラスさんが指輪を指してぷるぷるしているお父さんの指を無理矢理曲げている。


「この指輪、そんなに珍しい? どこかに売ってないの?」

そりゃ、ものすごく便利だからみんな欲しがっちゃうかもしれないけど、ここには魔法があるんだもん。

他にもこういう便利魔法グッズがエルフの国だったらあるんじゃないの?

ジーンも腕輪が“異空間倉庫”だったよ?


「“魔法収納”はあるにはありますけども……」

アトラスさんは遠い目。


「王家に近い高魔力のエルフが10年間、毎日魔力を注ぎ続けても……」

リデルの台詞をアトラスさんのお父さんが続ける

「荷馬車1台分が入るでしょうか?」


「出回っている“魔法収納”はそんなに入らん。大容量になればなるほど高価になるゆえ、ほどほどの物が何とか手の届く値段になっている」


「え! そうなの!?」


思わず指に嵌まった半透明なピンクの薔薇に目をやる。

これ、そんなに貴重な物だったなんて!

ちゃんと説明してからくれなきゃ困るよ、ジーン!

あ、でも「造るにはたくさん魔力がいる」とは言ってたっけ。



「アトラスから“愛し子”様をバイエル商会でもサポートすべきと聞いてはいましたが……ぜひそうするべきと実感いたしました」

うんうんと頷きながらこっちを見てるアトラスさんのお父さん。


「ぜひそうしてやってくれ」

リデルもうむうむと頷いている。


「えぇ、失礼ながらミア様は少々常識が足りていないようです。まだお小さいので仕方がないといえばそれまでですが」

アトラスさんのお父さんの視線が何だか可哀想な子を見る目……。



村ではお利口だね、ってみんなに言われてたし、みりあの時だって“みりあちゃんはしっかり者”で通ってたんだから。


「そんなことないよ? ミアちゃんとしてるよ?」


失礼なと思いながら、みんなを軽く睨んだけど、3人共にやれやれって感じに首を振られるだけだった。




ちょっぴり納得いかないまま、アトラスさんのお父さんと別れて街歩きを再開させた。

お日様はもうすっかり真上を過ぎている。

リデルがお昼御飯に連れてきてくれたのは、王都でも有名なレストランなんだって。


個室に通されて、まずはサラダが運ばれてきた。


「サラダ美味しいっ」


瑞々しい葉っぱがシャキシャキのパリパリで、かかってるドレッシングもあんまり酸っぱくなくてちょうどいい。

「採れたてにしかもクリーンしてあるからなこれ以上のサラダは他の国では食べられまい」


そういえば、村ではお野菜はなるべく火を通すようにしてたっけ。

帰ったらミアもサラダを作ってパパとママに食べさせてあげよう。


お次はスープ。

ほかほかの湯気まで美味しそうな香りがする。


「スープも美味しいっ」


カボチャのポタージュはとろとろで甘くって一口飲んだらスプーンが止まらない。

一緒にきたふわふわの白パンとも相性抜群。

おかわりしたいけど、おかわりしたら次のお料理が入らなくなっちゃう。


「四ツ目牛のクァツでございます」


スープを飲み終わるのを見ていたみたいに、お店の人が次のお皿を持ってきた。


銀のお皿の上には平べったいお肉。

細かい衣がついていてこんがりしてる。

「これ、カツ!」

揚げ物はこっちにきて初めてかも!

「クァツは知っているのだな。ミアの常識は食べ物関係は強いとみえる」

「リデルうるさい」


持ってきてくれた人がレモンのソースをかけるとじゅわっと音がした。

熱々、揚げたて!!


リデルになんかかまっていられない。

早速、ナイフで一口分を切り取ってフォークで口に運ぶ。


すっと切れた柔らかいお肉はお口の中でもほどけるように崩れてお肉の旨味と油のコクとレモンの爽やかな風味が口いっぱいに広がる。


「おいしーーーっっ」


お耳がピコピコしてるけど止められないから仕方ない。


「ミアは何でも美味しそうに食べるな」


「だって美味しいもん」


そういうリデルだってお上品にだけど、ナイフとフォークはずっと動いてるくせに。


施設の調理員の須藤さんも言ってた。美味しいものは誰かと食べるともっと美味しくなるんだって。


「ねぇ、一緒に食べると美味しいねっ」


こんなに美味しいお店に連れてきてくれてリデルに感謝っ。


「ん、美味いな」


微かに赤いリデルのお耳もほんのちょっと、ぴくっとした。

やっぱり美味しいとお耳ぴくっとしちゃうよね!






「ねぇ、リデルと食べると美味しいねっ」

と、彼の耳には聞こえていたようです

( *´艸`)

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