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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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#32 リデルと街歩き1

「え、本当? お城の外へ遊びに連れてってくれるのっ?」


「ミアも勉強ばかりではつまらぬだろう? 息抜きに街へ遊びに出掛けるぞ」




お勉強を始めて1ヶ月ぐらいたったころ、リデルがうれしいお誘いをしてくれた。


「お勉強は楽しいけど、街へは行きたい!」


リデルはうぇーって顔をするけど、勉強の時間は午前中だけで小学校に比べたらすごく短いし、先生のお話は楽しいよ。

生徒はミア1人だから質問もし放題だし。

今日もいっぱい質問しちゃった!

最近の助手さんはミアが手を挙げると口元がぴくぴくするようになった。


「とにかく、明日出かけるから準備をしておけよ」

「うん、わかった! 楽しみっ! リデルありがとう!!」

うれしくて思わず抱きついたら「た、た、楽しみだなっ」って声が裏返ってた。

しまった、リデルはびっくりに弱いんだから気をつけなくちゃ。


リデルが帰った後、お世話係のお姉さん達がやってきて「街へお出かけなさいますのね? 早速明日着る服を選びませんと」と衣装部屋に連れて行かれた。


「お忍びではないのですからとびきり可愛くしていきましょう」

「街歩きにぴったりなのはどれかしら」

「靴は歩きやすい物にいたしましょうね」


張り切ってるお姉さん達にあれこれと選んでもらっていると「よろしいかしら」とティティさんがやってきた。


「聞きましたよ、街へ遊びに行くと。でしたらこれを持っておゆきなさい」

渡された綺麗な巾着からはジャラジャラと音がする。

「開けてもいい?」

「ええ、もちろん」

紐を緩めて中を覗くと大銀貨が何枚も入っているのが見えた。

「わ、何? 何でこれ?」

「ほほほ、街へ行くのなら買い物をしていらっしゃい。そのためのお小遣いですわ」

「でも……こんなに」

「ご両親へのお土産などを買ってらっしゃいな」


パパとママへのお土産!

つい、うれしいのが顔に出ちゃったみたい。

「ほほほ、子供が遠慮などせずともよいのです。残っても返さずともよいですからね? 気に入る物を買っていらっしゃい」

そう言ってティティさんは帰っていった。


「いいのかな?」

ぼそりと呟いたら、お姉さん達は「いただいておけばよろしいと思いますわ」「きっと孫にお小遣いを渡すのと同じですわ」と微笑んで、またお洋服選びに戻っていった。

何でか今日のお姉さん達は青っぽいお洋服ばかりをミアに勧めてくる。

村で“ご挨拶”した時も水色のワンピースだったし、みんな似合うって言ってくれたからいいけどね。


お洋服も選び終わってお茶の時間におやつを食べていたら、今度はリデルのママがやって来た。


「ご一緒させてもらえるかしら?」

「はい、どうぞっ! えっとね今日のおやつはカスタードクリームとドライアップル入りのケーキだよ」

ミアのお口でも一口で食べられるちっさくてかわいいミニケーキ。

甘さもちょうど良くって紅茶とすごく合うんだよ。

ミアはまだ1つしか食べてないから、リデルのママが食べる分ぐらいは残ってるよ。

お世話係のお姉さんがリデルのママの分もお茶を淹れてくれて2人でティータイムになった。


「リデルヴィオンから明日街へ行くと聞いたので、これを届けにきましたの」

リデルのママはハンカチを差し出した。

「わぁ、ハンカチ!」

受け取ったら何かが包んである。

そっとテーブルに乗せて広げると、中には何と金貨が1枚入っていた。

楕円形で真ん中に魔素山を表した三角の凹み。

そこまではキラキラの大銀貨と同じだけど、こっちは金色でピカピカしてる。


「き、金貨! ミア見るの初めて……」


そんなミアを見て、リデルのママはふふふと笑った。


「明日はこれで楽しんできてね」

「で、でも、お小遣いはさっきティティさんからもらったよ?」


さすがにこれはもらいすぎだよね!?


「あら、そうなのね? でもいいじゃない、あって困るものでもないし受け取ってちょうだい? もしそれで足りなければアトラスに言いつければ足りない分はすぐに用意させるように言っておきますからね」


さすがに金貨で買えないような物を買うつもりはないよ?


「えと、ありがとうございます。大事に使います」


「うふふ、どういたしまして」




わくわくして眠るのが遅くなっちゃった気がしたけど、お姉さん達がお部屋に入ってくる音で目が覚めた。

朝ごはんはふかふかの白いパンにはちみつとラズベリーのジャム。それにベーコンと玉ねぎのスープにチーズ入りのオムレツ。

いつもはゆっくり食べるけど、今日は少し早めに終わらせる。

「まだ時間はありますから、焦らなくても大丈夫ですよ」ってお姉さんは言ってくれるけど、せっかく遊びに行くのなら準備万端にしたいもん。


お姉さん達が選んでくれたのは、胸元に大きなリボンがついている袖がふんわりした白の長袖ブラウスに薄水色のエプロンドレス。スカートの裾には白のコットンレースがついている。ウエストの後ろで大きなリボンをきゅっと結ぶ。

靴は白いショートブーツ。

ちょっとカントリー風?

リボンが前にも後ろにもあって甘過ぎかな? と思ったけれど、ミアのお顔なら全然大丈夫だった。


「髪はどういたしましょう?」

「編み込みかしら」

「ゆるい巻き髪もかわいいですよっ。コテで巻きます?」


「ミアこのままでもいいよ?」


せっかく女神様にさらさらストレートにしてもらったんだもん。

「それでは手抜きに見えてしまいますわ」とお姉さん達が言うから、カチューシャをつけてもらう。

カチューシャも薄水色だ。


「いいですわ、ミア様の髪色に映えますわ」

「いつにも増してお可愛らしくできましたよ」

「えへへ、ありがとう」


持ち物は指輪に全部入っちゃうから手ぶらでOKだし、よしっ準備完了!



「あら、ちょうどお迎えがいらっしゃいましたわ」


お世話係のお姉さん達はお部屋に入ってきたリデルにお辞儀をする。


リデルも街のお出かけ用なのかな?

いつもの王子様っぽくない格好。


「リデルかっこいいねっ!」


コットンのまっ白なシャツに薄い水色の細身のパンツ。

腰には薄茶の皮のベルトに短剣が差してある。

白金の髪はサイドで三つ編みされて青緑の細いリボンがついている。


「リデルとミア、色がいっしょ! お揃いだねっ」


ミアのスカートも摘まんで広げて見せてあげる。

お揃いになったのは偶然だけど、これなら仲良し兄妹と間違えられちゃうかも。



「ンッ、こ、ここの者はよい仕事をする」


リデルはミアじゃなくてお世話係のお姉さん達を誉めた。

お姉さん達は「初めてのデート(街歩き)がよい思い出となるよう精一杯努めました」とにこにこだ。


そりゃお姉さん達はプロですごいけど、せっかくおしゃれした女の子を前にそれはないよね!


「……リデル、ミアはほめてくれないの?」


怒っちゃうぞ?って意味を込めて、下からじーーっとリデルを見つめればやっと視線を合わせてくれて「……似合っている」と言ってくれた。


「ほらっ、置いて行くぞっ」


「あっ、待って!」


もう、そんなにつんつんしなくたっていいのに!

お兄ちゃんは妹には勝てないんだって、村の女の子も言ってたし!

ほら、お世話係のお姉さん達もきっとそう思ってる。

クスクスと笑い合う声が追いかけるミアにも聞こえるもん。


あ、でも怒らせすぎちゃったかな?

後ろから見えるリデルのお耳が真っ赤。



街で何か美味しい物を見つけて許してもらおっと。





巾着には大銀貨が10枚入っていました。

大銀貨10枚=金貨1枚です。


大銀貨1枚=1万円の設定です。



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