エルフの国のわたし#26
「今日はどーれにし・よ・う・か・な?」
色とりどりのお洋服がたっくさん吊るされている衣装部屋で今日着る服を選ぶ。
お城へ来てすぐティティさんがたくさんお洋服を用意してくれたのに、また新しいのが追加されている。
お城へ来た時は、夏真っ盛りだったけど今は秋になったみたい。
夏って言ってもエルフの国もミアの村より少し暑いぐらいで、日本のように熱中症で倒れるような殺人的な気温じゃなくて過ごしやすかった。
毎日2、3回着替えても秋が終わるまでに着られない数があって無駄遣いじゃないのかなぁ?って心配になっちゃったけど「女の子の着る物を選ぶのは何て楽しいのかしらっ」と、リデルのママが喜んで仕立屋さんに作らせたってリデルが言ってたからミアも遠慮なく着させてもらう。
ゲーテおばさんが縫ってくれたミント色のワンピースはクリーンをして大事に指輪にしまってある。
帰る時に着る物がないと困るもんね。
「よし、今日はコレ!」
リデルのママの髪みたいな杏色のワンピースに指を差す。
「まぁ、王妃様がお喜びになりますわ」
ミアが指差すとお世話係のお姉さんがさっとハンガーごとワンピースを取ってくれる。
「こちらですね」
「うん」
杏色のワンピースは襟と袖口、ベルトが紅茶色の別布で出来ている。
スカートは二重で上のスカートは少し短くて、その下から紅茶色のレースが見えるようになっている。
レースはひし形が複雑に繋がってるみたいな幾何学模様。
杏色は落ち着いていて暖色だけど派手じゃないし地味すぎもしない。
杏と紅茶の配色がとってもステキ。
お姉さん達に手伝ってもらってお着替えをする。
何でかワンピースは後ろでボタンを留めるのが多くて一人では着られなかったりする。
前のボタンならミア一人で着られるのに。
衣装部屋には王妃様からもらったって事にしてある大きな姿見を置いてある。
お城に置くからフレームは金色でちょっと豪華な感じにしてみたんだ。
その前に立って、前からとちょっと斜めになってみたりして最終チェック。
今日はハーフアップのおとなしめなツインテール。
結んだところが浮かないようにしてもらって、お姉さんチョイスの葡萄色のリボンをつけてもらった。
うんうん、なかなかのお嬢様っぷりだよ!
あ、でもこの前ヴィヴィアンヌに「田舎くさい」って言われちゃったんだっけ。
ミアのセンスって田舎くさいのかな?
……でもお洋服はティティさんとリデルのママが選んでくれたやつだからお洋服のせいじゃない。
なら、ミア自身が田舎くさいってこと?
ミアのお顔は美少女だと思ってたけど、違うのかな?
「ねぇ、ねぇ、ミアって田舎くさいの?」
お城に住んでるお姉さん達ならわかるかな?
「何故そのようなことを?」
お姉さんは目をぱちくりさせて驚いてる。
「んと、この前ヴィヴィアンヌって人がミアにそう言ったの。だからそうなのかなって……」
そしたらお姉さん達は眉毛を吊り上げて「んまあぁぁぁっ!!」って怒りだした。
「ミア様!ミア様は大変かわいらしく、お美しく、愛らしくあられますわっ!あんな派手なばかりな者の言うことなど信じてはなりませんわっ」
「そうですわっ、ミア様はエルフの国でも滅多にみないほどお顔は整っておりますし、お作法だってきちんと学んでいらっしゃいます」
「田舎くさいなどありえません。私達はミア様ほどかわいらしくしっかりとしたお嬢様のお世話をしたことがございません」
よかった、そういうのって自分じゃわからないもん。
でも代わりにお姉さん達が「あの方こそマナーを知らない田舎者のようですわっ」「全くだわ」とプリプリしちゃった。
後でこっそり創造したキャンディでもあげよっと。
「あら、そろそろお時間ですわ」
「ほんとだ。じゃあ出かけよう」
今日はリデルのママのお部屋でティティさんと三人で女子会だよ。
お仕置きの打ち合わせをするんだ。
リデルは剣のお稽古で来られないんだって、残念。
「それで準備はすみましたの?」
今日のお茶菓子はプディングっていう、パンを玉子に浸けて蒸した温かいお菓子だった。何が違うのかわからないけど須藤さんが作ってくれたフレンチトーストよりもっちりしていて食べごたえがあった。シナモン入りのお砂糖を好きなだけぱらぱらかけて食べる甘くて温かい美味しいお菓子。
それを大人と同じだけ食べたら、ミアのお腹はいっぱいになっちゃった。
お茶を飲んで一休みしていたら、ティティさんがリデルのママにお仕置きの準備の確認をしてる。
「えぇ、ミアちゃんに頼まれたこちらの準備は終わりましたわ」
「ちゃんと三人並んで映る大きさなんだよね?」
「ええ、もちろん。移動させる侍従が震えてましたわ。割ってしまったらどうやって責任をとってよいかわからないと言って」
リデルのママはふふっとイタズラっぽく笑った。
「ミアの方もバッチリだよ! ジーンにちゃんと作れてるかどうか確認したから大丈夫!!」
最初、何でそんな物を創造るのか眉を潜めたジーンだけど、顎を蹴られたお仕置きだって話したらノリノリで作るのを見ててくれた。
「それでは手緩くはないか? もっときつい仕置きでもよかろうに」って言ってたけどね。
ミアだって色々考えたけど、“目には目を歯には歯を”が一番だと思うんだ。
「ほほほ、王妃様が褒賞の鏡を贈られるようになってから3ヶ月ほどかしら?」
「えぇ、そしてそれがあの方の耳に入ってから2ヶ月ほど」
「そろそろだよね?」
「えぇ、屋敷でも使用人や御用商人に何とかならないかと毎日詰め寄っているらしいですわ」
「ほほほ、これ以上焦らすと、他家の物を強引に奪いとりかねませんわ」
「じゃあ、決まり。決行は次のミアのお休みの日!」
「呼び出しをかけますわ」
「ほほほ、飛んでくるでしょうね」
「楽しみだねっ」
ミアのブローチと顎の痛さの分と、リデルのママにひどいお呪いした罰、ちゃーんとお仕置きしてあげるんだからっ!!!




