エルフの国のわたし#24
「それに私より早く息子を産んだこともあの方が増長する要因となったのでしょう」
「母上!」
急な声にびっくりして振り替えるとリデルのママがいた。
杏色の髪をふわりと揺らして困ったように微笑んでいる。
シンプルな形のセージグリーンの艶のあるドレスに、石のついていない金色の葉っぱの形のイヤリングをしている。ペンダントにはイヤリングと同じ葉っぱを咥えたかわいい小鳥さん。
日本のと比べると鎖がずっしりと重たいように感じるけど、イヤリングとペンダントがお揃いで素敵!
「デセンテーティス様をお訪ねしたく先触れを出したところ、こちらにおられると伺いまして」
リデルのママとティティさんはお互いに目礼をしている。
「私も呼ばれてこちらへ来たのです」
椅子がもうひとつ追加されて、リデルのママはそこへ座った。
「話は大体聞いていました。私達のいざこざに巻き込んでしまってごめんなさいね」
そおっとほっぺと蹴られた顎とを優しい手つきで撫でてくれる。
「私やリデルヴィオンに嫌がらせをするだけでなく、こんな小さな子供に乱暴をするなんて……」
「……もしかして、リデルのママのお口にもやもやのお呪いをしたのって……あの人達?」
「正確にはあやつらの母だな」
「よい医師がいるからと紹介されて……油断していましたわ」
眉毛を下げて困り顔のリデルのママ。
「あなたはもう少し強気でいてもよいと思いますよ?」
ティティさんはそんなリデルのママを見て少し怒ったような困ったような顔をした。
「母上は悪くありませんっ、伯母上が勝手に母上をライバル視しているだけではありませんか!自分より目立つ母上が気に入らぬからと……」
リデルは意地悪なその人を思い出して怒っている。
「ほほほ、あの人にも困ったこと。そんなに目立ちたければ見世物小屋にでもいけばよろしいでしょうに。あのけばけばしさに皆が注目してくれるでしょう」
ティーカップを持ちながら笑顔で毒を吐くティティさん。
あらら、今までどんなことをしてきたかは知らないけど、そうとう嫌われてるね。
あの子供達の態度を見たらミアも好きにはなれなさそうだけど。
「今までやめて欲しいって言ったりお仕置きはしなかったの?」
「あちらも表向きは母上と仲が良さそうに振る舞っているからな。それに嫌がらせ程度のことばかりをしてくる。今回は少しいきすぎているが、母上の呪いの事も医師が勝手にやったことだとしらを切るであろうな」
えー、そんなのすごくイライラしちゃう。
虐めや嫌がらせする人って何でだかそういうことをうまくやるんだよね……。
「ところで私に何か用でした?」
ティティさんが迫力のある笑顔を消して、リデルのママを見た。
「えぇ、鏡のことなんですの。私表情が戻ってからサロンを再開しましたでしょう?ミアちゃんにもらった鏡があまりにも美しかったのでサロンの飾り棚に置かせましたのよ」
「あら、まぁ、それは大変なこと」
え、ミアの鏡を飾ったら大変なことになるの?
「えぇ、もうサロンに招いたお客様のほとんどが『どこで手に入れた』と『伝手を紹介してくれ』と連日手紙をよこすのです」
「ほほほ、そうなるでしょうね」
「デセンテーティス様もお揃いの鏡をお持ちなのでしょう?滅多に手には入る物ではないからと全てお断りしているので、人前で見せないようにして欲しいとお願いしたかったのですわ」
「ええ、もとより人前では使わぬようにするつもりでしたから大丈夫ですよ」
「それならばよかったですわ」
リデルのママはにこりと微笑んだ。
ミアのママだって村一番の美人だったけど、リデルのママはさすが王妃様。
なんていうか笑顔が華やか。
なのにあんなお呪いをするなんて本当にヒドイよ!
これからはミアがあげた鏡にいっぱい笑顔を映してくれるといいな。
指輪からミアのピンクのバラの鏡を出して見る。
蹴られたところはまだ赤い。
あの場にじぃじがいたら絶対ミアの代わりに怒ってくれたよね、耳を引っ張った小さかったカイ兄ちゃんだってあんなに睨まれたんだもん。
「……ねぇ、こういう鏡は他にはないの?」
さっきの話はミアの鏡を見た人はみんな欲しがったってことだよね?
ミアが聞いたら3人とも首を傾げた。
「どこにもないと思うぞ?」
リデルがアトラスさんを見やる。
「えぇ、私もこのようによく映る鏡は初めて見ました」
「そっかぁ」
……じゃあさ、じゃあさ、これって使えるんじゃない?
「ミアね、良いこと思いついた!」
「まあ、何かしら?」
「嫌がらせには嫌がらせ作戦だよ!」
やられたまんまじゃダメ絶対。
こいつは苛めていいんだって思われたらお終い。
なめられたって何もいいことはないんだよ!
だよねっ!ゆかりお姉さん!!
「何をするつもりだ?」
リデルが疑わしげにミアを見る。
大丈夫、ミアそんなにひどいことはしないよ?
ちょっとだけ、ちょーっとだけ、イライラしてもらって、リデルのママの気持ち悪い虫と、ミアを蹴った分をお返しするだけだよ。
「あのね、人がたくさん出入りしても目立たなくて、使ってない広いお部屋ってある?」
ティティさんとリデルのママは顔を見合わせて二人で思い出そうとしている。
「えぇ、探せばあると思いますわ」
「ほほほ、離宮の舞踏会に使う広間ならば王宮から離れていて目立ちませんし、しばらく使う予定などないのでは?」
「ああ!そうですわ、あそこなら改装中ですし、人が出入りしても目立ちませんわ」
「そこってすぐ行ける?」
「行けないことはないが、行ってどうするつもりだ?」
うふふ、リデルは心配そうにしてるけど、これは失敗しても損はしないから大丈夫!
「プレゼント大作戦をしまーす!」
「「「プレゼント大作戦?」」」
今年も残すところ本日のみとなりました。
予定通り投稿できてほっとしております。
今年もいいね、ブクマ、評価、感想をありがとうございました!
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のんびり更新ではございますが、来年もどうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m




