エルフの国のわたし#17
こうして、ミアの毎日は2日聖域へ通って1日お休みの繰り返しになった。
朝ごはんはティティさんとピュイトと一緒に食べている。
和食が食べられないのはちょっと残念だけど、お城のごはんも美味しいから問題ない。
ジーンとはおやつを一緒に食べるようになった。
最近のジーンのお気に入りはミアが創造したポテチとコーラ。
パリパリといつも美味しそうに食べてる。
のり塩味が一番好きみたい。
味付海苔も気に入ってたし、髪の毛が海の色だから海草が好きなのかな?
コーラは顔をきゅっとしかめながら、パチパチ弾ける喉ごしを楽しんでいる。
お城に来てからしばらくして、王様と王妃様、つまりリデルのパパとママと面談があった。
えっと、王様と会うことをピュイトは“えっけん”って言ってたっけ。
その日は朝からティティさんがたくさんのキレイなお洋服をお世話係の人に持たせてミアのお部屋にやってきた。
どれもしっかりしたいい生地の上品なワンピース。
「ほほほ、気に入るのがあるとよろしいのだけど」
カスタードクリームみたいな優しい黄色のワンピースはスカートが三段のフリルで分かれてる。
袖が膨らんでいるピンクのワンピースは腰の所に大きなリボン。
ワイン色のハイウエストのは大きな白い襟にレースが重ねてある。
赤も白も青も緑も、色々なデザインのワンピースがミアの体に次々と当てられていく。
ティティさんはお世話係のお姉さん達と
「これがいいかしら?」
「あら、こちらもお似合いですわ」
「それならこちらも」
「何でもお似合いになりますわ」
と、楽しそう。
これ、もしかしたら街中のお洋服屋さんからミアのサイズのワンピースをレンタルしてきちゃったのかもしれない。
「ほほほ、どれも素敵ですが時間も迫ってますし、そろそろ決めなくてはね」
「遅刻したら大変だもんね」
どれもかわいくて悩んじゃったけど、菫色のワンピースにした。
選ばなかった他のお洋服達はお世話係さんがせっせと隣の衣装部屋へ運んでいる。
それを目で追っていたら「あとの物は明日から順番に着ていけばよろしいわ」とティティさんがビックリすることを言った。
「えっ、あれ借りてきたんじゃないの?」
「ほほほ、街の仕立て屋にもあれほどの数はありませんのよ?あれらは城のお針子を総動員させましたの。ささ、支度を急いでしましょう」
ミアがお城に来てからまだそんなにたってないのに、お城のお針子さんはスゴい。
いいな。
ミアにもお裁縫、少し教えてくれないかな?
きちんとお仕事で通用する技術を持った人はみりあの憧れだった。
淡い菫色のワンピースはスカートが空気を含んだみたいにふんわりしてる。
それに地より濃い色で裾に菫のお花の刺繍。
ほんの僅かな花芯の黄色がアクセントになっている。
それに白のレース編みのボレロ。
髪の毛も耳の横から編み込んだハーフアップにしてもらって白いレースのリボンをつけてもらった。
「まぁ!本当によくお似合いですわ!」
お世話係のお姉さん達が手を取り合って、きゃっきゃっとしてる。
誉められすぎてちょっと恥ずかしい。
「ほほほ、上品で大変かわいらしい仕上がりですわ」
ティティさんも満足そうに頷いた。
「そろそろ行けるか?」
ミアのお部屋まで迎えに来てくれたリデルは声をかけてくれたあと、一瞬驚いたように目を見張った。
「えへへ、ティティさんがお洋服用意してくれたの、どうかな?」
「わ、悪くはないな」
せっかく、くるっと回ってポーズをとってみたのにリデルはろくにこっちを見てくれない。
“ご挨拶”の時のパパはミアのこと大絶賛してくれたのになぁ、と少しさみしくなった。
お世話係のお姉さん達はクスクスと笑っている。
「そ、そんなことより、ミアに言っておかなければならないことがある」
「なぁに?」
「私の母上のことだ。その……母上が笑顔を見せなくても気にしないで欲しい」
なんでもリデルのお母さんは3年ぐらい前から一切の表情が消えてしまったらしい。
怒っても悲しんでも、うれしいことがあっても、ずっと表情が変わらないんだって。
「病気なの?」
脳の血管が詰まっちゃった人とかが、手が不自由になったり、顔の半分だけ動かなくなったりするよね?
「いや、医師達には原因がわからなかった」
「そうなんだ」
「ただ、意思を伝えることはできるので、言葉と表情がちぐはぐな時がある。慣れていないと困惑するのだ」
「うん、わかった。先に話してくれてありがとね」
長ーーい廊下をティティさんとリデルとそのお付きの人や近衛隊の人とぞろぞろ歩く。
ミア、王様や王妃様にどんな風にお話ししていいかわからないよってティティさんに相談したら「ほほほ、そのままで大丈夫ですわ。本日は正式な謁見ではないのですし、リデルのパパとママとして会っていただければよいのですわ」と言ってもらってる。
だからピュイトから習ったエルフの正式な礼とかはしなくていいらしいよ。
「よかったぁ」と安心していたら、「ほほほ、礼を尽くさなくてはならないのはこちらですわ」と微笑んでいた。
ミアそんなエライ人と会うの初めて。
みりあも会った人の中で一番エライ人は市長さんだったしね。
リデルのおうちにお邪魔しているんだから、ちゃんと「お世話になってます」って言わなくちゃ。
挨拶とお礼は基本だもん。
リデルのパパとママがいるお部屋に着いたら扉の前にシェファフルトさんがいた。
こんにちは、って挨拶したかったけど、ミアを見てニッと笑ってからすぐ「陛下並びに王妃様がお待ちです」と、扉を開けてくれた。
大きなお部屋の窓を背にリデルのパパとママはいた。
ソファーに座っていたけど、ミア達がお部屋へ入ったらすっと立ち上がってくれた。
「父上、母上、ミアを連れてきました」
うわぁ、リデルのパパとママ、どっちもすっごいキレイ!
年齢はミアのパパとママとそんなに変わらないように見えるけど、エルフだからわからないよね。
リデルのパパはリデルそっくり。
白金の長い髪にアイスブルーの瞳。
にこにこと「よくぞ参られた」と歓迎してくれた。
「旅は辛くはありませんでしたか?」
リデルのママは杏色の波打つ髪にはちみつキャンディみたいな琥珀色の瞳。
すごい美人さん。
かけてくれた声は優しげだけど、リデルが言ってた通り表情は動かない。
完全な真顔だ。
確かに先にリデルに聞いてなかったら、怒ってるのかと誤解しちゃったかも。
正式な礼じゃなくていいって言ってたから、スカートを摘まんで膝を少し曲げてご挨拶。
「はじめまして。ウィゼンベルク村から来ました、ミアです。お世話になってます!」




