エルフの国のわたし#13
「おはよう」
ジーンに呼び出されるようになってからは朝食は聖域で和食になった。
たまご入り納豆ごはんを食べようとした時は、一口食べる前にジーンに消されたから、もう一回今度は丼で創造した。
ジーンは信じられないって顔でミアが食べるのを見てた。
食べてみたら美味しいってジーンにもわかるのに。
林檎の樹さんに魔力を込めるのは、毎回とても苦しい。
少しずつ慣れてくるかな?って思ったけどそんなことなくて毎回気を失うように眠ってしまう。
もう今日で10日目。
こんなに魔力をあげてるのに、ちっとも大きくならない。
山のおうちにあった時と同じ大きさ。
「いつ大きくなるの?」って聞いても「さぁ?」って感じに枝を揺らすだけ。
昨日、シェファフルトさんのところにウェルツティン先生から伝言鳥が届いた。
貧血治療と一緒に、体を魔力に慣らす訓練を始めたんだって。
ママの体は魔力とあまり相性がよくないみたいで、ほんの少しウェルツティン先生の魔力を流しただけでも、頭痛や吐き気がしているみたい。
ウェルツティン先生の伝言は「辛いのに泣き言を言わずに続けてくださっています」と締め括られていた。
ママも頑張ってるんだもん。
ミアも頑張る!
早くおうちに帰る!
帰るったら帰る!!
よしっ今日も頑張るぞーーっ!
手のひらを幹に当てると、いつも通り魔力がどんどんと
林檎の樹さんに吸い込まれていく。
くらくらしてきたら魔力を込めるのを少しずつになるようにできたらいいんだけどな。
ん、そろそろ頭がくらくらしてきたかな……
それで、何だか力が入らなくなってきて冷や汗が出てきて……
あれ、なんだろ、今日は冷たい汗じゃなくて、何だか体が熱くなってきて……息が苦しい……
目の前が真っ暗になって真っ白になって歯を食い縛っても立っていられない。
ハッ、ハッ、と吐く息がとても熱い。
なぜだか山のおうちやパパやママが頭に浮かんだ。
……帰りたいな
手が離れた瞬間後ろへと倒れた……と思う。
「いつもと様子が違う故、我が連れてきた。末達よ、ミアはどうしたのだ」
「何てこと!」
「ミアに何をしたのです!?」
「すぐに王宮医師団を呼べっ!!」
騒がしさに途切れ途切れに目を覚ますけど、それはすぐにまた苦しさと熱さの沼へと沈んでしまう。
「ま、ま、……ぱ、ぱ……」
「最重要事項であるっ!伝令は直ちに王宮医師団の神殿への要請を!」
「神殿の薬草類もありったけ持ってこさせましょう」
「すぐにお部屋の準備を……!」
「この国の未来がかかっています。もしもの事が万が一でもあってはなりません。皆わかっていますね?」
「はっ!!!!!」
うつらうつらとしていたミアにはみんなが話していることはぼんやりとしか聞こえていなかったから、こんな大事になっていたなんて後から知った。
「大丈夫です、大丈夫ですよ。ここにいます、約束通り側にいますよ」
「ぱぁ……ぱ、まぁ……ま」
誰かがミアの手を優しく包んでくれている。
パパ?それともママかな?
体の熱さと息苦しさと、そばに誰かいることがうれしいのといっしょくたになって目尻から涙が一粒溢れた。
「あぁ、かわいそうに」
「まだずいぶんと苦しそうだ、何とかならぬのか!?」
「医師団の見立てでは限界まで魔力の消費と回復を繰り返した為、本来はゆっくりなはずの魔臓の成長が急激に促進されているゆえの発熱だと……」
「だから何の手立てもないと言うのか!?」
「……はい」
「くそっ!」
はぁはぁと荒い息の途中で差し込まれる甘くて冷たい水や、おでこに当てられる布にかすかに目を開けると明るいペリドットグリーンがいつもそこにあった。
「うぇーーーっ まっずーーーいッ」
茶色にも緑にも見えるどろどろを「体力回復にはこれが一番です」と渡されて、恐る恐る口をつけてみたけれど、やっぱり見た目を裏切らない味がする!
えぐいような苦いような味に、匂いだけは何だか甘ったるくて吐きだしたいのを懸命にこらえた。
意識が朦朧とするほどの高熱を出したミアが気がついたのは聖域で倒れてから5日もたっていた。
ふ、と目を覚ますとピュイトが椅子に座ったまま、うたたねをしていた。
「ピュイト……」
かさかさの小さな声しか出なかったけれど、ピュイトは弾かれたように飛び起きた。
「ミア!気がつきましたか!?」
それからはバタバタとティティさんやリデルやお城から呼んでくれたっていうお医者さん達がミアの様子を見に来て一気ににぎやかになった。
お医者さんが言うにはまだ熱があるから2、3日はまだ寝たままでいるようにって。
最初は少し体を起こしているのも辛かった。
まだ普通のごはんは食べちゃダメって言うから、果汁やハチミツを入れたミルクをもらって飲んでいたら、ティティさんがお医者さんと神官さんと一緒に「神殿特製の栄養たっぷりな薬湯をお持ちしました」と現れた。
「ほほほ、体力回復にはこれが一番ですのよ?」と、不気味な液体の入った器をぐいぐいとミアの口元へ近付けられて一口飲んだ。
そのあまりの味に、思わず正直にまずいって言っちゃった。
「ほほほ、味はよろしくはないですが、効果は保証しますわ。さ、もう一口」
と、全部飲むまでティティさんは許してくれなかった。
側についててくれたピュイトも「頑張って全部飲まなければ」って残すのは許してくれなかった。
でもそのおかげか次の日にはずいぶん体が楽になっていた。
だからティティさんにミアの看病ですごく疲れちゃってるピュイトにもこのお薬をあげてってお願いした。
「ほほほ、よろしくてよ、後で部屋に届けさせましょう」
よかった。
ピュイトの顔、隈がくっきり出てた。
ピュイトまで倒れちゃったら大変!
ミア、ウェルツティン先生に怒られちゃう。
全部飲んだら効果抜群なのはミアが保証するからね!
まずさも保証するよ!!




